ソフトバンクは5月22日、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SoftBank Vision Fund)の初回クロージングを完了したことを発表した。直近では英ARMの買収のほか、謎のAI半導体メーカーとして話題になった米NVIDIAの40億ドル分の株式を保有して密かに第4位の大株主に上昇したことが報じられるなど、投資方面で何かと話題の同社だが、本稿ではこの投資ファンドの情報を整理しつつ、ソフトバンクが目指すものについて考えてみる。

ソフトバンクが先日初回クロージングを発表したビジョンファンド

ソフトバンク・ビジョン・ファンドと投資ファンド

ソフトバンクによるSoftBank Vision Fund設立が発表されたのが2016年10月14日で、当初は向こう5年で250億ドル規模の投資がうたわれ、さらに設立パートナーとしてサウジアラビアのPublic Investment Fund (PIF)が参加することで最大450億ドル規模の投資が見込まれるとしていた。さらに一部の大規模投資家が参加を打診しており、最終的に1000億ドル規模の資金を運用する投資ファンドとなることが表明されている。

投資ファンドとは、投資家や関連機関から出資を集め、それを特定の事業や有望な企業に対して投資することでリターンを得る資金運用団体のことだ。単純に高利回りの運用益を目的としたものから、特定の業界を盛り上げるために意思を持って投資活動を行う集団までさまざまだが、「情報革命を加速させる」という意図の下で運用されるVision Fundにおいては後者の意味合いが強い。この場合、募集した資金の運用は投資ファンドの目利きや信頼性に依存する部分が大きく、少なくともパートナーに名を連ねた企業群はソフトバンクの投資ビジョンや信頼性に賛同したといえる。

最終的に今年2017年5月22日に初回クロージングが発表され、既報のPIFのほか、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国のムバダラ開発公社、米Apple、台湾Foxconn Technology Group、米Qualcomm、シャープ本体または関係会社がリミテッドパートナー(LP)として参加し、ソフトバンクの100%海外子会社がジェネラルパートナー(GP)として資金運用を行うことになる。なお、LPとして参加するソフトバンクグループ自身が保有するARM Holdings株式の一部を、同社の出資額としてコミットしている280億ドルのうちの約82億ドル分として割り当てることも発表されている。いずれにせよ、930億ドルという1000億ドル規模、日本円にして10兆円を超える巨大なIT投資ファンドが誕生したわけで、今後の動向に業界内外から大きな注目が集まっているというわけだ。

金の卵を産むガチョウが飛び立つ日がやがてやってくると孫正義氏は言うが……