2014年からドラマオファーが殺到中の女優・山口紗弥加(37)。今年は自身初の大河ドラマとなる『おんな城主 直虎』で夫・小野玄蕃(井上芳雄)亡き後、小野政次(高橋一生)を支える義妹・なつを演じる。その一方で、『女囚セブン』(テレビ朝日系・毎週金曜23:15~ ※一部地域を除く)では政治資金規正法違反及び詐欺罪で収監されたミステリアスな政治秘書・楠瀬司に。アクの強い悪女から淑女まで、彼女が演じる姿はカメレオンそのものだ。

一体彼女はどんな女性なのか? そして、そのみなぎる演技力の源泉とは? 先月17日、テレビ朝日にて行われた『女囚セブン』制作会見後の山口を直撃。今回のインタビューでは、全3回にわたってその魅力を伝える。第2回は『運命に、似た恋』『バイプレイヤーズ』『直虎』にまつわる撮影秘話。プライベートを犠牲にしてまで役に没頭してしまう山口が、本人役を演じたらどうなった!? (第1回"山口紗弥加あるある"に挑む! カメレオン女優の「最高」、嫌う「内輪ウケ」)

『女囚セブン』で演じる楠瀬司

2年ぐらい、友人と"純粋に"遊べない

――2014年頃からドラマのオファーが殺到していますが、役柄の切り替えはうまくできるものなんですか?

オファーをいただくのは本当に有り難いことですが、殺到だなんてとんでもないです。切り替えについては、これが本当に下手で……役衣装と役メイクをしていれば、休憩時でもだいたい役柄の口調、態度のまま、ですね。

――作品が重なった時は大変そうですね。

意外とそこは大丈夫かもしれません。メイクと衣装で共演者の方々と一緒にいたり、セットに入ると、すんなりその役でいられるというか。その日、眠る直前までは最後の役のままという感じですかね。意識的に引きずっているわけではなく、かと言って強引に切り替えようともしません。そのまま、ほったらかしです。パッと切り替えて飲みに行ったりはできないですね。すごくヘタだと思います。だから、ここ2年ぐらいは友だちと"純粋に遊ぶ"ということをしていないかも。

――えっ!?

いや、もちろん仕事の延長で食事をしたりはありますよ。自分でも本当に切り替えがヘタだなーとは思いますけど、友だちと会っても、つい役のことを考えちゃうんですよ。何か思いついたら最後、もうそのことで頭の中はぐるぐるぐるぐる…相手の方にも失礼なので、結局、単独行動が楽になって。本当に余裕がある時でも、音信不通の罪悪感からなかなか連絡ができないという。

お気に入りの照明を破壊して後悔

――ドラマのオファーが殺到すると、そういう生活になってしまうわけですね。

殺到……(笑)。去年、『運命に、似た恋』(NHK・16年)というドラマをやっていた時なんかは、何だかもう、ぐっちゃぐちゃになってしまって。斎藤工くんにひどいフラれ方をする日があったんですが、傷ついてるくせに涙を見せないかわいげのない女性の役で。

いつものように仕事を終えて、大好きな定食屋さんで食事をして、普通に帰宅したはずだったんですが…ひとりになった途端、涙がぶわーっと溢れてきて。役として好きな人の前で素直に泣けなかったことが悔しかったんでしょうね。暫く一人で号泣してました(笑)。

山口紗弥加と共演した斎藤工(左)と光石研

――すごい……それだけ没頭できるのは職人というか。

いやいや、ヘタなだけです、切り替えが。大切にしていた床置の照明まで蹴り割ってしまって。大惨事でした。

――そこまで!?

人生最大の後悔かもしれない(笑)。本当に気に入っていたので、ひとかけら、ひとかけら、拾うのがいちいち切なくて。

――でも、自分がやってしまったこと(笑)。

そうなんです。それでまた号泣(笑)。バカだなー私……って。

「何とも言えない、変な感じ」の本人役

――最近では、『バイプレイヤーズ』の第3話に本人役で出演されましたね。光石研さんとの不倫劇でしたが、こういう時はどうなるんですか?

そのままの私で楽しめばいいんだと思って、「光石さんに恋をしよう♪」と思って臨んだんですが、実際にお会いするとすごくチャーミングで。初日の朝一番でベッドシーンがあったんですが、私以上に耳を真っ赤にされていて、目線もなかなか合わせてくれず(笑)。あの名優がですよ? なんて愛おしいんだ! と思って、その瞬間に恋していました。

――素直な気持ちで演じたわけですね。

そうですね。だから、「カット」の声が掛かると妙に気恥ずかしくなる。こんなにたくさんの人に見られてたんだと思って、はたと我に返る。何とも言えない、変な感じでした。

――役者さんの中には、こういう取材や会見で素が出てしまうことが恥ずかしかったり、怖かったりするとおっしゃる方もいました。

私も同感です。役という服を脱いで、私自身が丸裸の状態なわけですよね。すっぽんぽんだと思ったら、もうパニック。どう振る舞えばいいのか分からなくて、バラエティ番組でも、急に話を振られるとあたふたしてしまって何も答えられなくなってしまいます。

『女囚セブン』の主要キャスト(左から木野花、トリンドル玲奈、山口紗弥加、剛力彩芽、安達祐実、橋本マナミ、平岩紙)

大河ドラマの現場は「実家のよう」

――先ほどの会見では共演者の方々から「女子力が高い」という声が上がっていました。美容や食事に関する会話がそのイメージの元となっているようですが、現場では密にコミュニケーションを取るタイプなんですか?

今回は特に、ものすごく濃密です。私はシャイな方なので、誰かが話しかけてくれるのを密かに待っていたりするんですが、今回は女子刑務所で女性ばかり。この年齢になるとここまで女性が集まるということもそうそうないので、女子高生に戻った気分で楽しく過ごしています。大先輩の木野花さんが皆の手相を見てくれたり、"木野先生"を中心に話がどんどん発展して、自由な空気です。みんなが司会となって話を回して、つないでいくみたいな。一人として傍観者がいないんです。

――物語と真逆ですね(笑)。取っ組み合いなど、激しいシーンは予定されていないんですか?

今のところ、誰かと誰かのバトルから飛び火するような流れです。それをただ見ている人もいれば、仲裁に入る人も。撮影中、疲れた時は無言のまま一緒にいることもあるのですが、それが全然苦じゃない。仲間という共通認識があるからなのか、変に気を遣うこともなく、それぞれが好き勝手に過ごしていて(笑)、気持ちが楽です。

――一方で、今年は『おんな城主 直虎』で大河ドラマ初出演。そことの違いもあるんじゃないですか?

作品ごとに違いはあると思いますが、時間だけでみると大河は一年の長丁場。「先は長いぞ、腰を据えて共に闘いましょう」というような、どっしりとした一体感があります。通常の連続ドラマであれば3カ月間の短期集中、殆どがリハーサルもなく何かと慌ただしくなりますが、大河は長期スパンならではの時間の流れの中に温もりのようなものを感じたり。時間をかけてじっくり役と向き合えるので、様々な変化を楽しめる余白があるというか。大河の現場は、まるで実家のような感じです。出演者、スタッフ皆さんが家族のようで、ちょっと時間が空いて戻っても「おかえり」、「ただいま」みたいな雰囲気なんです。


第3回は女優デビュー作となったドラマ『若者のすべて』(94年)の秘話。そしてこの作品以来、現在放送中の月9『貴族探偵』の演出も手掛ける中江功監督と、2015年の『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)で再会し――。近日中に掲載予定。

■プロフィール
山口紗弥加(やまぐち・さやか)
1980年2月14日生まれ。福岡県出身。1994年のフジテレビ系『若者のすべて』で女優デビュー。以降も毎年コンスタントに出演を重ね、2014年頃からドラマのオファーが殺到。近年の出演ドラマは、『サイレント・プア』(14年・NHK)、『家族狩り』(14年・TBS系)、『ビンタ!』(14年・日本テレビ系)、『ようこそ、わが家へ』(15年・フジテレビ系)、『ヤメゴク』(15年・TBS系)、『リスクの神様』(15年・フジテレビ系)、『コウノドリ』(TBS系・15年)、『サイレーン』(15年・フジテレビ系)、『ラヴソング』(16年・フジテレビ系)、『受験のシンデレラ』(16年・NHK BSプレミアム)、『運命に、似た恋』(16年・NHK)、『IQ246』(TBS系)、『おんな城主 直虎』(17年・NHK)、『バイプレイヤーズ』(17年)など。