Oracleが5月初めに米国本社で開催した「Oracle Media Day」では、IT系ニュースサイト「Re/Code」の名物記者・Kara Swisher氏がOracleのCEOであるMark Hurd氏にインタビューした。Swisher氏はクラウド、AIを中心に鋭い質問を投げかけ、Hurd氏に迫った。本稿では、2人の興味深いやりとりの模様をお届けしよう。

左から、Re/Codeの記者Kara Swisher氏、OracleのCEO Mark Hurd氏

Re/Codeは米国の新鋭メディアで、Wall Street Journalの名コラムニストWalt Mossberg氏とSwisher氏が立ち上げた。同誌が毎年開催するイベント「Code Conference」にはBill GatesとMelinda Gates夫妻、AmazonのJeff Bezos氏、TwitterとSquareを率いるJack Dorcey氏など、そうそうたるゲストが登場することでも知られる。

強力な競合であるAWS、Microsoft、Googleをどう見ている?

OracleはMedia Dayに合わせて、AT&TとOracleのデータベースをクラウドに移行することなどを含む広範な提携を発表した。「AT&Tの7万人の技術サポートがOracleのフィールドサービス・アプリケーションで作業を自動化する」と胸を張るHurd氏に対し、Swisher氏は「クラウドに出遅れたのでは?」と質問した。Hurd氏の答えは「市場のパイは大きい」というものだ。

「この業界は1兆ドル市場だが、クラウドはまだ(その半分の)5000億ドルにも達していない。つまり、エンタープライズにおける支出でクラウドが占める比率はまだ少ないということだ。一方でクラウドの売上は前年比50%で増加しており、オンプレミスは減少している。Oracleはクラウドが成長しており、順調に推移している」(Hurd氏)

SaaSは、Hurd氏が入社する前から開発が始まっており、その後プラットフォーム(PaaS)、そして現在インフラ(IaaS)に拡大してきたと流れを説明する。こうしたクラウドビジネスの結果は出ており、「過去数四半期は最高の業績になった」と好調ぶりを強調した。

Swisher氏が「Amazonがこの事業を開始し、成功することは誰も予期できなかった。その後Microsoftが参入、Googleも参入した」というと、「AWS、Microsoft、Google、3社はみな異なる。コンピュートとストレージのインフラではAWSが、アプリケーションではSalesforce.comが、PaaSではMicrosoftとOracleが独占的。Googleのクラウド事業はインフラ中心だが、エンタープライズではそれほど使われていない。完全なスタックとしてそろえているのはOracleとMicrosoftだけ」と、Hurd氏はクラウド市場における同社の位置づけを説明した。

なお、「Amazonがクラウド市場に参入したことは驚きだったか?」というSwicher氏の質問に対し、Hurd氏は「Amazonがやったことは、ITチームを作り、そこにある余剰のキャパシティをレンタルしたこと。摩擦のないシンプルな購入メカニズムを導入し、開発者が簡単に自分の仕事をできるようにした――ここがAWSのイノベーションだ」と評価した。

一方で、Hurd氏は対談中、何度かGoogleのクラウド事業を低く評価した。その評価の根底にあるのは"畑違い"と言う見方だ。「一般的にコンシューマー企業がエンタープライズ企業になるのは簡単ではない」とHurd氏。コンシューマー事業との対比として、AppleのSteve Jobs氏との会話を引き合いに出した。

Jobs氏:飛行機に乗って顧客に会いに行くの?
Hurd氏:そう。
Jobs氏:顧客をもてなしたりする?
Hurd氏:しょっちゅうだよ。
Jobs氏:顧客に合わせて異なる技術を提供する?
Hurd氏:いつもやっている。

上記の会話の後、Jobs氏は「あまり面白くなさそうだね」と言ったとして、Hurd氏はエンタープライズ企業とコンシューマー企業の違いを明らかにした。