「スマホ育児」という言葉を聞くと、ドキっとする人は多いはず。日本小児科医会の「スマホの時間わたしは何を失うか」というポスターが話題になるなど、スマホ育児への保護者の関心は高まるばかりだ。

一方、電車の中やレストランなど、子どもに騒いでほしくない場所で、スマートフォンはとても役に立つ。夕飯を作るときなどに、スマホがなければどうしていいか分からないという保護者も多いはず。そこで今回は、安心してできるスマホ育児について考えてみたい。

スマホ育児の悪影響が心配……不安を解消するために最低限しておきたいこと(写真はイメージ)

最も多い不安は「視力発達への悪影響」

まず、親が抱える不安の正体について見ていこう。子どもたちのインターネット利用について考える研究会の「未就学児の生活習慣とインターネット利用に関する保護者意識調査」(2016年10月)によると、子どもにスマホを利用させることについて、何らかの不安を感じている保護者は9割を超え、「気にしていることは特にない」は6.1%に過ぎなかった。

最も多い不安は、「目が悪くなることや、視力発達への悪影響」(59.2%)。続いて「勝手に課金や購入をしてしまうこと」(32.9%)、「不適切な情報や画像に触れること」(30.0%)、「将来、長時間利用傾向や依存になってしまうこと」(29.0%)、「情緒面やコミュニケーション能力、脳の発達への悪影響」(19.7%)、「ウイルスや情報漏えいを起こしてしまうこと」(15.7%)、「運動能力発達への悪影響」(15.7%)、「詐欺の被害に遭うこと」(14.1%)、「睡眠不足になること」(13.5%)などとなっている。この結果に共感したという人は多いだろう。

最も多い不安は、「目が悪くなることや、視力発達への悪影響」※「未就学児の生活習慣とインターネット利用に関する保護者意識調査」(2016年10月)より引用

不安は意外と簡単に解消できる

漠然とした不安のままでは対処が難しいが、実は不安の正体がはっきりすれば、対策を講じることができる。

例えば、「勝手に課金や購入をしてしまうこと」「不適切な情報や画像に触れること」「ウイルスや情報漏えいを起こしてしまうこと」「詐欺の被害に遭うこと」などは、特に幼児のうちは対処は難しくない。

リビングなど保護者の目の届く場所で使わせたり、保護者が一緒に使うようにしたりすれば、これらの心配は解消できるだろう。同時に、ペアレンタルコントロール設定で課金できないようにしたり、フィルタリングサービスなどを利用したりすれば、こういった被害は確実に防げるはずだ

一緒に使えばスマホ依存は防げる

乳幼児の健やかな成長にとって、「自分が働きかけると変化や反応がある」という環境があることはとても大切だ。その意味で、情報が一方通行になりがちなスマホの利用について、「情緒面やコミュニケーション能力、脳の発達への悪影響」「運動能力発達への悪影響」を心配するのは自然なことかもしれない。しかし、どちらもあくまでバランスの問題ではないだろうか。

特に前者は、動画やゲームなど、受け身で終わる利用を減らし、受け身でない使い方をすれば良い。例えば、子どもが利用している様子に目を配り、その反応や問いかけには適宜応答するのもいい。それも難しい場合には、内容を親子の共通の話題に取り入れてみるのもいいだろう。「利用時間が長すぎる」と感じたら、外で体を動かす経験などを、バランスよく取り入れていけばいい。

スマホを使って子どもとコミュニケーションしたり、一緒に何かを経験したりすること自体は、良い影響をもたらすこともある。一緒に使うことで、利用をやめさせたり、正しい使い方を指導したりといったことも容易になる。結果として、「将来、長時間利用傾向や依存になってしまうこと」も防げるはずだ。

利用は1回15分、遠くを見る習慣も

子どもたちのインターネット利用について考える研究会によれば、乳幼児のスマホ利用について、「外出中などは、1回あたり15分以内にとどめる」「ベッドや布団に入る1時間前までには利用を終える」といった点が推奨されている。視力悪化を防ぐために、大人と同じように、スマホを使った後は一休みして、遠くを見るようにするのもいいだろう。このあたりも、保護者による声掛けが有効といえそうだ。

スマホ育児の不安は、フィルタリングなどのサービスで防げるものと、利用を見守ったり声掛けしたりする保護者の関わりで防げるものとに分けられる。子どもだけで利用させる場合は、ルールを決めておくことでかなりの問題が未然に防止できるだろう。ルールの徹底は、初めのうちは子どもだけでは難しいので、やはり保護者が共に利用して学ばせていくことを意識してほしい。

著者プロフィール: 高橋暁子

ITジャーナリスト。
書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。
『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)など著作多数。テレビ・新聞・雑誌・ラジオ等メディア出演多数。Twitterは@akiakatsuki。
自身のブログ「高橋暁子のソーシャルメディア教室」で情報発信も行っている。