サイボウズは年に数回、同社が提供しているプラットフォーム「kintone」について、ユーザー同士でアイデア交換を行う「kintone hive」を開催している。kintoneを用いた業務改善プロジェクトの事例や、活用のコツを独自の視点で発表するというものだ。2017年5月19日に、東京では第5回目になる「kintone hive tokyo」が開催された。

本稿では同イベントで発表された事例の中から、今回初公開された資生堂の事例にフォーカスして、その様子をお届けしよう。

kintoneは、サイボウズが提供するクラウドプラットフォーム。プログラミングなどの専門的なスキルを使わずに、さまざまな業務システムをアプリとしてスピーディに作成できるサービスだ。

文字列や数値、チェックボックスなどさまざまなパーツを自由に組み合わせてアプリを作成するので、幅広い業種や業務内容で効率化ツールを作成することができる。6,500社以上が有償で利用しており、日々880以上ものアプリが誕生している。これまでに生まれたアプリは34万件を超えるという(2017年5月19日時点)。

サンプルのアプリも用意されているが、業務内容に応じてゼロから自分で作成することも多く、アプリの形は利用者ごとに千差万別。他社の活用方法を知ることで、自社への応用方法に気づくことも少なくない。

サイボウズのプロダクトマネージャー伊佐政隆氏は、「kintone hiveで1つでも気づきが生またら、それを会社へ持ち帰って、社内で共有してほしい。そして、業務効率化に少しでも役立ててほしい」と、希望を述べた。

イベントで司会進行を行うサイボウズのプロダクトマネージャー伊佐政隆氏

新入社員の人数が4倍になり、業務効率化が喫緊の課題に

事例を紹介してくれたのは資生堂 技術企画部の佐藤麻子氏。技術系社員の研修と採用を担当しており、kintoneを活用して新入社員研修における業務効率化を達成した。

資生堂 技術企画部の佐藤麻子氏

同社の新入社員研修では、これまで紙の状態で日報や交通費申請書、アンケートといった提出物を管理していた。

しかし近年、20名程度だった技術系社員の採用人数が約80名へと大幅に拡大。にもかかわらず、新入社員研修の担当者は、これまでと同様に佐藤氏1人のままだったという。

「新入社員が20名の時でも、紙資料の日報を1枚1枚確認したうえで、手書きのコメントを返し、見直しやすいようにエクセルへ転記するといった作業を長期間続けることは、決して楽ではなかった」と、佐藤氏は振り返る。

そのような状況のなかで新入社員の数が4倍に増えたため、紙の資料だけで情報の整理を行うことが困難に。さらに、全員同時に行っていた研修を班ごとに異なるスケジュールで行うようになったことで、社員の統制が難しくなり、コミュニケーションも不足するようになってしまったという。

利用者の環境を第一に考えて利便性を追求

課題を解決するために、佐藤氏はkintoneを活用して新入社員の研修用アプリの作成を決意する。kintoneを選んだ理由としては、「セキュリティ」「操作性」「コスト」を総合的に判断した結果だったという。

まず、画面上に「掲示板」と「スレッド」、「アプリ」という目的別のコンテンツを表示した。掲示板には研修スケジュールや宿泊スケジュールなどの常に表示させておきたい情報を掲載し、スレッドにはホテル利用時の注意点や忘れ物連絡といった情報を掲載。スケジュールなどの重要事項をすぐ確認できるようになったことで各自が研修日程を把握でき、個別の連絡を取れるようにすることで大人数の新入社員をマネジメントできるようになった。

また、アプリには日報やアンケートの提出フォームを設置した。データ上で管理できるようになることで、配属予定先の事業所と情報共有が容易になり、新入社員の理解度も把握できるようになったという。

新入社員研修アプリの画面イメージ

実際アプリ作成に取りかかると「思いのほか簡単で、慣れれば5分くらいで作れるようになった」という佐藤氏。作成時、特に注意したことはユーザーの利用環境を第一に考えることだという。

「私が新入社員研修を受けていた時は、事業所を出てから宿泊先に帰るまでに同期と食事にいくことが多かった。そのような社員同士のコミュニケーションを妨げることなく、移動時間などのちょっとしたスキマ時間で利用できるシステムにすることを心掛けた」と佐藤氏は自身の工夫ポイントを語った。

スマートフォンで簡単に操作できるようなフォーマットと、必要最低限の設問数にすることで、新入社員の作業負担を大きく軽減することに成功したのだという。

少ない人的リソースで大人数の社員研修を担当している人や、紙の研修資料をまとめられずに悩んでいるという人は、参考にしてみてはいかがだろうか。