5月10日~12日にかけて、東京ビッグサイトで計12のIT専門展から成る「2017 Japan IT Week 春」が開催された。本稿では、Twitter本社の副社長であり、Twitter Japan日本オフィス代表取締役でもある笹本裕氏が登壇した特別講演「Twitter利用者4000万人がマーケティングにもたらす即効性と拡散性」の模様をお届けする。

Twitter副社長 Twitter Japan日本オフィス代表取締役 笹本裕氏

Twitterで世の中の"今"

「つぶやき(ツイート)」と呼ばれる140文字以内の短文投稿サービスとして知られる「Twitter」。日本国内のアクティブユーザー数は2016年に4000万人を突破し、画像・動画やライブ配信など「今起きていること」を表現豊かに発信できる多彩なサービスを展開している。

「Twitterには多くの特徴があるが、簡単にまとめると、マスメディアのリーチ規模、伝達スピードの速さ、ムーブメントを起こす強い影響力、終日利用されるメディア」と語る笹本氏。単純に比較はできないとしながらも、4000万という数字は、東名阪のテレビ視聴世帯数2917万世帯や主要5社の新聞発行部数2383万部に匹敵する利用状況であると解説する。また、メディアの発信した情報の伝達速度を計った調査では、日本の人口20%に到達するまでにTwitterは9時間、テレビ局は11.7時間と、伝達スピードの速さも特性として備えていると強調した。

「ツイートには単に速く届くだけでなく、その1つに世の中を動かすほどの威力や強い影響力が盛り込まれている」と笹本氏。保育園問題について多くの意見が寄せられた「#保育園落ちたの私だ」や、オリンピックの際にフィギュアスケート女子・浅田真央選手への応援など、ハッシュタグの活用が大きなムーブメントを巻き起こした事例を紹介した。

そして、テレビの視聴は日中に下がり夜に増加する一方、Twitterは起床から通勤、ランチタイム、就寝前まで大きな変動なく終日利用されている。その理由の1つが検索の利用で、ある年齢層ではGoogleやYahoo!検索よりもTwitterを検索エンジンとして活用しているという。

笹本氏は「例えば、コンサート会場でグッズが売り切れたという情報は、ほとんどどこにもない。しかし、コンサート会場に行った利用者が売り切れ情報をツイートして、それを検索で知る」といった具体例も交え、交通機関の遅延・混雑状況や震災時など、今どこでどのような出来事が起こっているのかという、リアルタイムの情報を得られる場所として、Twitterが認知・活用されていると説明する。

マーケターの悩みを解消する多彩なサービスを展開

では、こうしたTwitterの特徴をどのようにマーケティングへ活用すればよいのだろうか。笹本氏はマーケターが購買ファネルの中で抱える悩みのうち「どこよりも早くターゲットにリーチする」「興味・関心のあるユーザーに目を向けてもらう」「購買への一押し」という3つを選び、Twitterのサービスがどのように役立つかについて紹介した。

「新商品をどこよりも早くターゲットに届ける」――つまり、スピードを重視するのであれば、タイムラインのトップに表示される1日1社限定の動画広告「ファーストビュー」が有効だ。ユーザーがログイン直後に最も早くアクセスするだけでなく、マスメディア並みのリーチを低コストで可能とするため費用対効果も高いと言える。

さらに「Twitterで世の中を動かすムーブメントを起こせるのは一般個人だけではなく、企業のメッセージもこうした会話を喚起できる」と語る笹本氏。まず、その具体策として挙げられたのは、リアルタイムに動画を発信していく「プロモライブビデオ」だ。コメントや「いいね」ボタンのようなハートマークを寄せることも可能で、ユーザーの興味・関心を引きながら双方向に製品を訴求することができる。配信時はインフルエンサーを起用するケースが多いものの、人気や商品だけに頼らず企業のブランドメッセージを直接ユーザーに発信する手段としても大いに活用できる。

もう1つの策が、Twitter上で話題を喚起する「カンバセーショナルカード」だ。これは、利用者が「コールトゥアクションボタン」を押すと、選択したハッシュタグと設定されたメッセージを自動発信するという機能を備えている。話題が増えるほど検索も増え、画像や動画と組み合わせればより高い効果を得られるという。

ユーザーの興味・関心を把握した適切なメッセージを配信

さらに、笹本氏はTwitterの特性として「世の中の興味・関心の集合体であることを挙げ、目的に沿ってセグメントしたユーザーへ適切なタイミングでメッセージを発信すれば購買につながっていくと訴えた。

アメリカでは、来店を促進させる施策として位置情報をとらえ、よりユーザーの興味・関心にあった形でターゲティングを行う取り組みが進められているという。チラシなど他の来店施策と比べて来店実績が25%増、来店後の購買のコスト効率も60%以上高まったそうだ。日本でも水面下で実験しており、いずれ広く利用できるようにするという。

また、Twitterではパートナー企業である「Sprinklr」の機能を活用し、自社製品について会話をしている利用者を抽出して自動的にメッセージを送る仕組みを提供している。笹本氏はファンの声を聞き、積極的にコミュニケーションを図っているサントリーの事例を紹介しながら、「興味・関心があるユーザーの声を聞き、適切なメッセージを伝えていくことにTwitterやパートナー企業を利用してほしい」と語った。

このほかにもライブ配信とプリロールで広告を入れられる「Amplify」では、選抜高校野球やフルマラソンで2時間以内の完走を目標としたナイキのプロジェクト「BREAKING2」のライブ配信を行った。画面内には試合に関するツイートがリアルタイムに流れるようになっており、テレビのように動画を見ながら活発にツイートが行えるようになっている。

こうしてマーケティングへ効果的に活用できる各種機能を解説した笹本氏は、最後にマスメディアと同様のリーチ、製品に対する会話を促進する施策、購買に向けて背中を押すというTwitterの特徴を改めて紹介。「個人としてもTwitterを使っていただきたいですし、今回ご紹介した以外のさまざまな機能をマーケティングに役立てほしい」と講演を締めくくった。