ソフトバンクグループは22日、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が大規模な初回クロージングを完了し、930億米ドル超の出資コミットメントを得たと発表した。日本円換算で10.4兆円の資金を集めたことになる。初回クロージングに伴い、投資対象、投資期間などの概要が明らかになった。ソフトバンクグループの連結対象にもなる。

「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は昨年10月にソフトバンクグループが設立を目指したファンド。世界規模での情報革命の推進を目指す「ソフトバンク2.0」の実現のための手段となるもので、ソフトバンクグループが抱えてきた課題を解消するものとなる。

それは財務面だ。ソフトバンクグループだけでは、抱える負債の大きさを気にせざるを得ず、機動的な投資を阻害する面があった。そこで生まれたのがこのファンドだ。世界規模で大量の資金を集めることで、資金量の多寡に左右されない"情報革命"の進展を目指そうというわけである。

また、インターネットの発達によるゴールドラッシュはこれから来るというのがソフトバンクグループの孫正義代表の見立て。情報革命により、これからあらゆる産業が再定義される時代がやってくるとし、その構えになるものとしている。

産業が再定義され、ファンドはその構えになるとしている

こうした理念に共感した出資者にはビッグネームが名を連ねる。ソフトバンクグループほか、アップル、フォックスコン、クアルコム、シャープのほか、サウジアラビア王国のパブリック・インベストメント・ファンド、アラブ首長国連邦アブダビ首長国のムバダラ開発公社が参画する。

投資対象は、次世代イノベーションを実現しようとする企業やプラットフォーム事業。投資分野は、IoT、人工知能、ロボティクス、モバイルアプリ、コンピューティング、通信インフラならびに通信事業、計算生物学、データ活用ビジネス、トランスポーテーションテクノロジー、クラウドテクノロジー、ソフトウェア、消費者向けインターネットビジネス、金融テクノロジーなどとなる。

上場、非上場や保有株式割合の多寡を問わず、新興企業から大企業まで幅広く投資していくが、投資額は1億米ドル(約111億円)以上となり、1億米ドルに満たないものについては、ファンド外、つまり、ソフトバンクグループでも行っていく。出資額の線引きについてはこれまで提示されておらず、今回の発表で明らかになったことになる。

ファンドの運営は、「SB Investment Advisers」で、ラジーブ・ミスラ氏がCEOとなり、主要な役割を担っていく。ファンドの投資期間は最終クロージングから5年間(一部例外あり)、ファンドの存続期間は最終クロージングから最低12年間(一部例外あり)となる。

最終クロージングは、初回クロージングから6カ月以内に完了する予定。その段階で、計1000億米ドルの出資コミットメントを得ることとなる。ソフトバンクは同ファンドに対して、最終的に280億米ドル(約3.1兆円)の出資をコミットメントしており、このうち約82億米ドル分のARM株式を現物出資するとしている。会計上はソフトバンクグループの連結対象になる見込みで、ファンドの運営が同社の業績にも影響を与えることになりそうだ。