米フォードが日本から撤退した同じ年に、ゼネラルモーターズ・ジャパン(以下、GMジャパン)の社長に就任した若松格(わかまつ・ただし)氏。2016年8月の就任から在任期間は1年に満たないが、インタビューの機会を得たので、この間の成果と手応え、そして将来の展望を尋ねた。ドイツ車が席巻する日本の輸入車市場で存在感を高めるのは容易ではないが、若松社長はこれからのGMジャパンについて何を思うのか。

GMインターナショナルで東南アジア12カ国のディストリビューター事業の統括責任者を務めた後、2016年8月にGMジャパンの社長に就任した若松格氏。「存在感を高めたい」と抱負を語った同氏は今、何を思うのか

日本市場をどう見ているのか

日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によれば、フォードは撤退の前年となった2015年に4477台を日本で販売している。一方、GMジャパンの同じ年の販売台数は、キャデラックとシボレーを合わせても1508台だ。

つまり、フォードはGMジャパンの3倍近くもクルマを販売していたことになる。にも関わらず、「日本における事業には今後、収益性に向けた合理的な道筋が立たず、また我々の投資に対して十分なリターンは見込めないと判断」し、日本から撤退した。では、GMジャパンはなぜ、日本に残る道を選べたのだろうか。ここからは、若松社長の言葉も織り込みつつ話を進めていきたい。

まず日本の自動車市場は、GMの目にどう映るのか。世界1位の中国は2016年に2800万台、2位の米国は1755万台で、EUは1464万台の大きな市場である。これに対し、日本市場は年間500万台規模でしかない。

「前職のGMインターナショナルで俯瞰して見た場合、日本は500万台市場と言われ、その中で何台売るかということに目を奪われがちでした。しかし、今の私は目指すべきところが明確に見えています」。若松社長は言葉を続ける。