Appleは2017年第2四半期決算のなかで、手元の資金が2,560億ドル(日本円で約29兆円)あることが報告された。このうちの93%は米国外にあるとしている。決算の中で強調されたのは、資本還元プログラムだった。これは、自社株買いなどを行い、株主への還元を行うプログラムで、2012年8月から2017年3月までの間に、Appleはすでに2,100億ドル以上を還元したとしている。ここには1,510億ドルの自社株買いが含まれる。Appleは資本還元プログラムを拡大し、さらに4四半期の間、500億ドルを増額すると発表した。これを交換してAppleの株価は上昇した。

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Appleの手元キャッシュについて、面白い試算がある。Statistaが作成したグラフでは、Appleの資金でどんなテクノロジー企業を購入できるのかを示している。なお企業の購入金額は時価総額での換算だ。それによると、2,560億ドルの資金で購入できるのは、メディア企業Time Warner、未上場で最大規模のユニコーン企業となったUber、日本のエレクトロニクス企業ソニー、民泊を世界中で展開するAirBnB、最近上場した若者に強いSNS「Snapchat」を開発するSnap Inc.、そしてTwitterだ。Time Warnerにソニー、そして時価総額が多く見積もられているUberですら、束ねて購入できるほどの資金がある点には驚かされる。

Appleの売上高に占める投資規模は3~4%となっており、Googleの15%と比較すると非常に小さな割合に留まっている。その理由は、例えばiPhoneを作る際の技術的な進歩を、サプライヤーによる研究開発に委ねている点が指摘できる。

直近ではiPhoneの核となるプロセッサについては、自社デザインに切り替え、グラフィックスについても独自の設計へと移行しようとする動きが見られる。また、指紋センサーや次世代ディスプレイ技術などは、技術を持つ企業を買収して競合優位性を作り出してきた。しかし、それら以外のパーツであるディスプレイやカメラ、メモリなどについては、サプライヤーの技術で作られたパーツを利用し、ソフトウェアを自社開発し、最良のパフォーマンスを発揮する形で搭載しているのだ。

確かに年間2億台以上を販売するiPhoneに使われるパーツについては、ビジネス的なスケールメリットを作り出しやすい一方で、ゼロからそれだけの量のパーツを確実に生産する体制を整える方が難しく大きなリスクになる。iPhoneは夢のスマートフォンのような演出をする一方で、製造業の中での現実的な選択の中で作られている。魅力的にまとめ上げるデザインと、確実に連係して動作させるソフトウェアがより重要であることを物語っているのだ。