【レポート】

Appleの「資金」の規模とそれを淡々と狙うトランプ政権 - 松村太郎のApple深読み・先読み

5 先端製造業の雇用創出ファンド

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しかし、Appleとしても、トランプ大統領の政策に全く反応しないのは問題がある。時価総額で8,000億ドルを超えたAppleの変化は、トランプ大統領にとっての経済面での最大の成果の1つと見られているからだ。

そこで、Tim Cook氏が前回紹介した経済ニュース番組出演時に発表したのが、先端製造業の雇用創出ファンドの創設だ。Appleは10億ドルを投じ、米国内の先端技術を支援する。すでに投資先第1号は決まっており、5月下旬に発表するとしている。

筆者は、このファンドで狙っていく技術は、おそらく、スマートフォンだけでなくその先の製品のためのものになる、と考えている。その背後に、Appleが取り組んでいるとされている自動運転自動車の計画も見え隠れする。

Appleに対してトランプ大統領は、iPhoneを米国で製造せよ、と主張した。しかしこれを実現するには、工場所在地での税制や電力、交通等の多岐に渡る優遇措置、安定した雇用の確保などの環境面の整備に加え、東アジア地域に偏るサプライヤーの問題なども立ちはだかる。米国製造のiPhoneは、あらゆる面で効率が悪いのだ。

そして、これは小声で言うべきかもしれないが、いまから米国に工場が設置されたとしても、オートメーション化の促進により、思ったほど雇用は増えないだろう。iPhoneについては、これまで通り、東アジアでパーツを集めて、中国で組み立てる方が、はるかに現実的であり、その体制は今後も崩さないと考えるのが妥当だ。

しかし自動車となると、スマートフォンのように簡単に大量の製品を移動させるのが難しくなってくる。もちろん既存の自動車メーカーは完成者の輸送を行っているが、数がまとまれば日本メーカーも欧州メーカーも、米国に工場を建てている。

Appleが今から自動車の生産に取り組むとしたら、中国生産のモデルを取らないのではないだろうか。もちろん中国を含むアジア向けには、中国生産を行うかもしれないが、米国向けには米国での生産でまかなう方が合理的だ。特に、シリコンバレーの自動車メーカーであるTeslaが、本社があるパロアルトの対岸にある都市フリーモントの工場で自動車を製造している様子を横目で見ると、なおさら地元で製造した方が良さそうに見えてくるのである。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura

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インデックス

目次
(1) 少ない研究開発費率
(2) 競争力につながる投資を加速中
(3) 投資にも積極的に動く
(4) トランプ減税でもAppleの姿勢に変化はナシか?
(5) 先端製造業の雇用創出ファンド

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