さて、ここで、Tim Cook氏の「次のiPhoneの噂が売上を抑えている」という話に戻る。iPhone 6ユーザーは、一部のガジェット好きを除いて、iPhone 6s、iPhone 7に買い換える理由を見いだせずにいる。そうした人々を魅了するデバイスが登場しなければ、iPhone 6の時のような爆発的な販売拡大を見込むことは難しい。

ただ、Appleが、iPhone 7にそうした新しい要素を持ち込まなかった点は、後からふりかえれば、戦略として正解だった、と言えるかもしれない。Appleが行ってきた、期待感をあおるマーケティング戦略は、少なくとも現段階において、最大のパフォーマンスを発揮している、と思えるからだ。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura