赤ちゃんが歩き始める日、どのパパ・ママも心待ちにしているのではないでしょうか。しかし発達の速度には個人差があるため、周囲より遅い、早いと比べてしまい、心配になることもありますよね。今回は、いつまでに歩き始めないと、発達の遅れを疑った方がいいのか、なかなか歩き始めない時の対処法などについて、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。

赤ちゃんの歩き始め、"遅い場合"と"早い場合"に注意すべきポイントと対策(写真はイメージ)

Q.何歳までに歩き始めないと、発達の遅れを疑う必要がありますか?

小児科の診察で、発達の遅れを疑い始める必要があると言われるのは、1歳半頃です。しかし、それもあくまで目安。1歳半までに歩けなくても、その後問題なく成長している子もこれまでにたくさん診てきているので、心配しすぎる必要はありません。

Q.赤ちゃんが歩くのが、遅すぎたり早すぎたりすると、体にはどのような影響がありますか?

歩くのが遅い子どもは、ハイハイを長くすることになります。ハイハイは全身運動なので、体にとって悪いことは何もなく、反対に足腰が鍛えられる傾向にあると思います。一方、早く歩き始めると、転倒することが多く、頭を打ったり、ケガをしたりする子が、病院に相談に来ることもあります。転ばないようにそばで見守ってあげることが大切です。

Q.そもそも発達の速度に個人差があるのはなぜでしょうか?

もともと持っている身体能力の差もあるとは思いますが、性格や環境、嗜好が与える影響がかなり大きいです。例えば、赤ちゃんはつかまり立ちから始めますが、怖がりの子は、いきなり立つことを嫌がり、歩き始めるのが遅い傾向にあります。

また、兄弟のいる子や早く保育園に通い始めた子などは、身近に歩くお手本がいるので、早く歩き始めるケースが多いですね。さらに、家の中で遊ぶのが好きなのか、外で遊ぶのが好きなのかによっても、運動神経にはずいぶんと差が出ます。

Q.歩くためのトレーニング方法について教えてください

例えば、その子が興味のある物を遠くに置いてみたり、歩いているお手本を見せてみたりすると、「歩きたい」という気持ちを引き出すことができるかもしれません。公園など外に出て、自然と触れ合う機会を作るのも、いいでしょう。衛生面で不安を感じるパパ・ママもいると思いますが、外の世界では、多くの刺激を受けることができます。芝生の上など、ハイハイで行けるところへ積極的に出掛けてみてもらいたいです。

Q.歩かない子どもに対して、してはいけないことはありますか?

無理やり歩かせることはしないでください。そして子どもに対して、「どうして歩かないの?」「どうして●●はできるのに、あなたはできないの?」などと言った言葉は使わないようにしましょう。子どもは自信をなくしてしまいますし、親自身もますます不安な気持ちになるだけだと思います。心配しすぎず、おおらかな気持ちで見守ってあげてほしいです。

Q.発達に問題があるか、どのように判断するのですか? 心配な場合はどこに相談に行ったらいいですか?

小児科医は、同じ月齢の子が興味を持つものに手を伸ばすかどうか、足や腰の骨格に問題はないか、その子の生活環境や性格など、さまざまな情報から総合的に、発達の遅れを判断しています。

これらの判断は、未就学児に対して定期的に行われている健康診断で実施されていますし、その都度、小児科医や保健師が相談にも応じてくれますが、心配なことがあれば小児科で実際に診てもらうことも可能です。発達に遅れがある場合、療育施設に通うなど、対策が早ければ早いほど、歩けるようになる可能性は高くなりますので、パパ・ママだけで不安を抱えることなく、ぜひ相談にいらしてくださいね。

※未就学児童の症状を対象にしています

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。