この関係はいつまで維持できるのか

電子書籍といえば、紙の書籍とは対極にある存在であり、決して相容れないもののような気がしていたが、今回のセミナーで奇妙な共生関係ともいえる関連性があることがわかった。LINEマンガとトーハンが店頭で行なっている新しいマーケティング手法なども参考になる。こうした手法は書籍の特性に関わるものだけに、他業種が参考にするのは難しいかもしれないが、過去の資産を現実の出来事とリンクさせて活用するという方向性自体は悪くないアイディアだ。

現時点では右肩上がりの成長を遂げ、順風満帆に見えるLINEマンガだが、筆者は必ずしも明るい未来だけが待っているとは思っていない。というのも現在、Amazonの台頭などで紙の書籍についてはこれまであった取次と出版社、書店の関係が崩れつつある。電子書籍でも現時点では電子書籍プラットフォームが取次+書店のような役割をしているものの、利益や読者データなどの取得/利用を考えれば、究極的には自社アプリを通じた販売がベストな選択肢だ。そして実際、今回登壇した各社はいずれも雑誌単位でのアプリ配信を行なっており、直売サイトも運営している。出版社にとってLINEマンガは数多ある販売網の一つでしかないため、価値が下がればいつでも切れるわけだ。

LINEとしても、LINEマンガは決してLINEの主力事業というわけではなく、LINEプラットフォームにユーザーをつなぎとめる手段の一つでしかないが、常に新しいコンテンツの発掘や旧コンテンツの紹介といった工夫を繰り返し、出版社にとって有意義な存在であり続けなければ、現在の関係を維持するのも難しくなるだろう。

どちらの立場からも、あまり大きく踏み込みすぎるのは望ましくないが、メリットを考えれば、決して蔑ろにするわけにもいかないという間柄になる。電子書籍の登場がもたらした出版業界の再編は、こうしたジレンマを潜り抜けた先に完成するのだろう。筆者自身ひとりのマンガ好きとして、未来のマンガ産業が電子化の影響でどのような着地点を描き出すのか、注目したい。