TSUTAYAが主催するプロ・アマ向けの映画コンテスト「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM」(以下TCP)。受賞作には最低でも5,000万円の製作費が用意されるという破格の"映画愛"は業界内で話題となり、毎年数多くの作品が寄せられている。3回目を迎える今年も、いよいよ応募期限が迫り(WEBエントリー締め切り:6月13日/企画書など郵便物送付締め切り:6月16日必着)、5月17日にはTCPのトークイベント・応募説明会「オリジナル企画誕生から映画化までに迫る!」も開催される。

マイナビニュースでは、昨年受賞した4人に接触。受賞作の制作前に受賞の喜びや過程、そして"映画愛"を掘り下げた。第1弾は5月17日開催のトークイベントに登壇するヤング ポール氏を紹介(32)。

ヤング ポール氏

『ゴーストマスターズ! ~呪いのビデオができるまで~(仮)』で準グランプリを受賞した同氏。アメリカ人の父、日本人の母を持ち、フリーランスの監督として数々の映像作品を手掛けてきた。

同作の舞台は、低予算ホラーの撮影現場。現場で次々と奇妙な現象が起こる中、スタッフはタイトなスケジュールと低予算という状況に追い込まれ、異変に気づかず。やがて、悪霊たちが彼らに襲いかかる。

なぜ、ホラーコメディなのか? その答えにこそ、同氏の"擦り切れない"信念が宿っていた。

――準グランプリおめでとうございます。受賞の実感は?

「どうすれば面白くなるのか」を追求していたのですが、受賞してより具体的に考えるようになりました。自分の中の気持ちとしては、映画化に向けてギアが少し入ってきたかなという感じです。

――受賞する手応え、自信はあったんですか?

うーん……ある程度時間をかけて、「うおー!」と唸りながら床を転がっていた日々をすごしていたので(笑)、そういう意味ではやり切ったのかなと。でもその結果を「面白い」と判断してくれるかどうか、受賞するかどうかは「僕のマターじゃない」というか。自信があったといえばありましたが、結局はタイミングと人との縁なのかなとも。散々ジタバタした上で、「ジタバタしてもしょうがない」となりました(笑)。

――どのくらい床を転がっていたんですか?

3カ月ぐらいでしょうか(笑)。審査のプロセスが3段階ありまして、1次審査で企画書を提出するんですけど、まずはどういう物語なのかを自分の中で練り上げないといけない。そこでまず床がめちゃくちゃになりました(笑)。

無事に提出して返事をもらえるまでの1カ月、その間は床がきれいな状態(笑)。2次審査の課題であるシナリオ・ポスタービジュアルの制作になった時に、もっと床がひどいことになりました。自分が今まで読んできた本や漫画をあらためて目を通したりして、本棚もめちゃくちゃになりました(笑)。

――産みの苦しみが分かるエピソードです。

今回、初めて「缶詰」というものを実行してみました。都内の国会議事堂の近くのホテルだったんですが、すごく眺めがよくて。朝方、「全然書けねえ……」とぼやきながら景色を眺めていました。

あれは二度とやりたくない(笑)。こうなることは薄々気づいていたんですが、藁にもすがる思いというか。環境を変えると何か出てくるかなと思ったんですが、甘かったです。

――「ホラーコメディ」というジャンルは、最初から決めていたんですか。

いわゆる変顔やギャグで笑わせるような内容にはそこまで興味なくて、「どんな人間ドラマが面白いのかな」と考えていって、結果的にコメディになったというか。人が必死に行動した時の滑稽さとか哀しさみたいなものに興味があって、それが最も当てはまるのが「ホラーコメディ」でした。

――最終審査会では「この業界には変人が多い」とおっしゃっていましたが、発想の原点はそこなんですね。

この業界にいる方々は、みんな映画に対して本気で向き合っているので、変なことを言ったりやったりするんですよね(笑)。過酷な環境下だと理性がぶっ飛ぶ人もいますし、言っていること無茶苦茶でも、それを言わないと今乗り切れないんだなと思ったり。根っからの変人も多い。そういう人との「出会い」が面白いんです。今まで書いてきた脚本も、なんとなく今まで出会ってきた人がモデルになっています。勝手にイメージを膨らませていますが、本人に言うと失礼になるので伝えていません。