――ところで、『デート』は中国でリメイクされましたよね。オリジナル版のスタッフから見て、作品の印象はいかがでしたか?

先日上海に行って、公開記念のイベントに行ってきました。監修として、セットの考え方や撮影方法、キャラクターの説明などを行っていますが、向こうのスタッフがこの作品をすごくリスペクトしてくれて、完成品を見たら、ファッションからセリフから演出も音楽も、ほぼほぼ日本版と同じでした(笑)

―――恋愛をしない日本の若者が増えているという社会的な背景もある作品ですが、それは中国でも事情は一緒なのですか?

当てはまるらしいです。しかも、日本よりも中国の方が経済の格差は大きくて、それが地域によって表れているんです。中国版は、男が高等遊民なのは同じで、女の子がIT企業に勤めるエリートOLなんですが、お互いが上海の中心地を隔てる川をはさんだ地域に住んでいて、その格差の対比がとても分かりやすく描かれていたのが印象的でした。

――中国でリメイクされたと聞くと、まだ依子と巧は結婚に至っていないわけですし、ファンとしては続編に期待したいのですが…。

僕も大好きな作品で、結構ファンの目線で見ているので、ぜひやりたいです(笑)。スタッフもキャストも、みんなやりたがっているので、そういう機運が盛り上がってくるといいですね。実は『デート』は一生できる作品だと思っていて、子供が生まれて、教育費を払う払わないだ、私立に入れるだ公立に入れるだとか、何の習い事をさせるんだとか、結婚してもその後の子育てで、2人が価値観の違いでモメることってあるじゃないですか。

――『渡る世間は鬼ばかり』ばりにシリーズ化できますよね!

そうなんですよ! このドラマは、ライフワークにできると思っています(笑)

――キャストの皆さんの中では、特にHey! Say! JUMPの中島裕翔さんが、『デート』以来、著しい成長を遂げていますが、最初に起用する時は「賭け」だったと聞きました。

恋敵役の長谷川博己くんが当時38歳で、対等に渡り合うライバルの中島くんが23歳っていうのは成立するのかという不安があったんですけど、彼の前に出た作品などを見て、ものすごくピュアな部分が、演じてくれた鷲尾のキャラクターにすごくハマるなと思って起用したんです。それでやってみたら、思っていた以上にまっすぐさが出て、この人にして良かったなと思いました。やる気も人一倍あって、古沢さんの脚本は、1シーンで20何ページにもわたることがあるんですけど、そんな時も完璧にセリフが入っているし、お芝居に臨む姿勢や、パフォーマンスも素晴らしい。僕のコメディの質にはものすごく合うなと思ったので、今後他の作品でも一緒に仕事したいですね。

中国版『デート~恋とはどんなものかしら~』

――『のだめカンタービレ』(※2)も楽しませていただきました。漫画作品の映像化は、原作ファンが納得するケースが難しいですが、この作品は成功例だったと思います。

ヒットした漫画は原作ファンの皆さんがすごくこだわりを持って見るので、それを絶対に裏切っちゃいけないなと思って撮りました。実は、この漫画の面白さを、音楽家の世界を全然知らなかったこともあって、最初は全然分からなかったんですよ(笑)。『電車男』のスペシャルをタヒチで撮影してたら、プロデューサーに「こういうのやりたいんですよ」って、プールサイドでコミックを渡されて読んでみたんですが、音大生のヒロインがイケメンに殴られ蹴られ…こんなの月9でやったら成立しないじゃないかって思ったんです。

(※2)…連続ドラマは2006年10~12月放送。上野樹里演じる音大生・のだめが、玉木宏演じる先輩・千秋に才能を見出され、恋模様を繰り広げる。

――そこからどうやって成立させたんですか?

自分には面白さが分からないから、現役や卒業した音大生に集まってもらって、品川の居酒屋で6人くらいと飲んだんです。そうしたら、『のだめ』の世界はリアルな音大生の生態に近いということが分かってきて、だんだん知りだすと面白さが分かってきて、気持ちが乗れるようになってきました。僕がその世界を知らないように、ほとんどの視聴者も知らないわけですから、やっぱりこの作品にはリアルさがあるということを分かってもらえるように注意しながら撮らないといけないんです。だから、やっぱり取材が大事ですね。

――原作モノほど、取材は大事になってくるのでしょうか。

そうですね。『神様、もう少しだけ』(※3)というドラマを撮ったときは、毎日池袋や渋谷に行って、女子高生に何考えてるんだとか、お小遣いはいくらなんだとか、カバンの中にはどんなものが入っているのかとか聞いていましたから(笑)。会社に怒られましたけど、「こんなに難しい題材をやるのに、リアルな女子高生たちを知らないままでは撮れない。ある意味ドキュメンタリーじゃないと成立しませんよ!」と上司に本気でキレました(笑)。

『電車男』(※4)のときも、秋葉原へ毎日のように通って、オタクの人たちの話をメイド喫茶で聞いてました。最初は向こうも構えていて壁があったんですけど、自分も中学生の時に『宇宙戦艦ヤマト』が好きでめちゃくちゃハマっていたという話をしたら、だんだん和んできて。そうしたら「この人たちは、実はとても純粋でピュアな心を持った人たちで、僕が『ヤマト』が好きだった中2で時が止まっちゃった、ある意味ピーターパンだな」と思えて、だんだん愛おしくなってきちゃって。そういう感じを伊藤淳史くんに表現させられたらいいなとイメージしていったんです。

やっぱり、ドラマを作る時に、オタクはオタクなり、音楽家は音楽家なりの矜持の美しさを描いていこうというのは心がけようと思っていて、全くその世界を知らない人たちが「実は偏見の目で見ていたけど、この人たちにはこんな矜持があって、すばらしい」と思うことが、あらゆるジャンルで出てくると、日本にとってもいいことかなって思ったりもしています。

(※3)…1998年7~9月放送。深田恭子演じるHIVに感染した女子高生と、金城武演じる音楽プロデューサーのラブストーリー。
(※4)…連続ドラマは2005年7~9月放送。伊藤淳史演じるオタクがネット住民の応援を受けながら、伊東美咲演じるエルメスへの恋に奮闘する。