TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』のステージイベント「ユーリ!!! on STAGE」が4月29日、千葉・舞浜アンフィシアターにて行われた。出演は、声優の豊永利行、諏訪部順一、内山昂輝、野島健児、日野聡、羽多野渉、安元洋貴、本城雄太郎、小野賢章、村瀬歩、土岐隼一、福山潤、そして原案の久保ミツロウ氏。MCはお笑いコンビのアメリカザリガニが務めた。本稿では全国94劇場でのライブビューイングも行われた夜の部をレポートする。

「ユーリ!!! on STAGE」

各国のフィギュアスケート代表選手を演じたキャストが集合した本イベント。タイ代表のピチット・チュラノンを演じた小野は「サワディークラップ」とタイ語で、アメリカ代表のレオ・デ・ラ・イグレシアを演じた土岐は「Nice to meet you!」とそれぞれの国の言葉で挨拶する。そんな中、韓国代表のイ・スンギルを演じた野島は「夜の部も、楽しみスンギル」とダジャレで挨拶をした。

最初のコーナーはギオルギー・ポポーヴィッチ役を演じた羽多野渉がMCを務める「自分を好きになって……ポポーヴィッチのカラボスの部屋」。ここではキャスト達がグループに分かれ、テーマごとにアニメのシーンを挙げ振り返った。

豊永利行

諏訪部順一

内山昂輝

「ただただかわいいチーム」では南健次郎役の村瀬、ジ・グァンホン役の本城、そして土岐と、意外にもクリストフ・ジャコメッティ役の安元が登場。クリストフは「お尻がかわいい」という理由でこのチームに振り分けられたようで、安元は登場するなり客席にお尻を向け、”かわいさ”をアピールしていた。

本城はジ・グァンホンのかわいいシーンとして「もうSNS全部やめて練習する」と悔しそうに宣言するシーンをチョイス。土岐が「やめるやめる詐欺でしょ?」と突っ込むと久保もそれに頷き、「グァンホンはカッとなってSNSの投稿を全消しするタイプ。それをレオくんに笑われる」という設定が明かされた。

野島健児

安元は、クリストフのかわいいシーンとして、自身の尻を撫で上げる演技中のシーンを選択。「久保先生やスタッフさんがやたら尻にこだわっていたんじゃないのかなと思って」と安元が言うと、久保は「そうですね、顔より先にまず尻から描いてました」と明かした。また、安元は「クリスの台本のト書きに”水とセックス”とかトリッキーなことが書いてあって、すごく悩みながらやっていた。そういう産みの苦しみという意味でもかわいい存在だった」と、クリストフのかわいさを語った。

日野聡

羽多野渉

安元洋貴

続いては「唯我独尊! マイペースチーム」のヴィクトル・ニキフォロフ役の諏訪部、エミル・ネコラ役の日野、そして小野が登場。日野がお気に入りのシーンとして挙げたのは、エミルの演技中のモノローグ。「失敗しても『はー、疲れた』と言ってしまうところにエミルらしさがすごく現れていると思います」とコメントした。小野は、ピチットがヴィクトルと勇利のペアリングに気づいて「結婚おめでとう!!」と言うシーンをチョイス。「台本を読んだ時に、このセリフは絶対話題になる……と思ったので気合いが入りました」と明かした。諏訪部がセレクトしたのは、ヴィクトルがマッカチンを抱きしめ「おまんじゅう盗み食いしちゃだめだよ」と言うシーンだが、”実は選んだわけではない”とのこと。諏訪部は「『ユーリ!!! on ICE』は全てが名場面なので、一つ選ぶことはできないから、強いて挙げるならマッカチンが出てるシーンかな?」と、マッカチンへの愛全開の笑みを浮かべた。

最後は「ギャップにドキッ!?」チームで勝生勇利役の豊永利行、ユーリ・プリセツキー役の内山昂輝、西郡豪役の福山潤、そして野島が登場。豊永が勇利のギャップを感じるシーンとして選んだのは、ショートプログラムの演技に入る勇利の『私の踊りは誰のため? 知ってる』というモノローグのシーン。このシーンについて久保は「女性の言葉のモノローグだけど、豊永さんが演じると男性でも女性でもどちらでもない”勝生勇利が演じる女性”という魅力があって、その絶妙なところをうまーく演じていらっしゃる」とコメント。豊永も「いつも針の穴に糸を通すような集中力で演技をしていた」と振り返り、収録を見ていた羽多野も、「何テイクも何テイクも重ねると普通は人間だからしんどくなっていく、でもとっしーは回数を重ねるごとに集中力や精度が上がっていくんです」と、豊永を讃えた。

本城雄太郎

内山は、ユーリのギャップを感じるシーンとして、じいちゃんが勇利のために作ったカツ丼ピロシキを与える場面を挙げる。ユーリの笑顔がスクリーンに映し出されると会場がどよめき、内山も「我ながら、かわいいなと思う」と満足気な顔を見せた。勇利とユーリが二人きりで何かを食べるシーンとして原点となったのは2話のセリフだと久保は話し、「2話で勇利とユリオ(ユーリ)が、ヴィクトルを追いかけて、俺たちもラーメン食いにいくぞ! って言ったシーン。あれは本当にヴィクトルを追いかけたわけじゃないと私は思っていて、二人で別のラーメンを食べに行ったんじゃないかな」と表だって描かれなかった二人の関係性について言及した。

小野賢章

村瀬歩

土岐隼一

次のコーナーは「超超超超がんばらんば!!!! カツ丼ピロシキ争奪! ワールドクエスチョン!」。ロシア語で朗読される『ユーリ!!! on ICE』のあるシーンが、どこかを当てる問題だ。ヒントVTRで、ジャン・ジャック・ルロワ役の宮野真守が登場した。宮野はハイテンションに「JJスターイル!!」と話題となったJJポーズをキメた後、「Theme of King JJ」の合唱を会場に促し、あっという間にJJワールドに染め上げていった。「みんな今日はJJのために集まってくれてありがとう! この後もJJオンステージを楽しんで!」と宮野が残しVTRが終わると、ステージ上はしばし呆然。安元が「やりたい放題じゃねえか」と突っ込んでいた。

福山潤

久保ミツロウ

宮野が出した「おじいさん」というヒントから、内山は「もうこれで、答えはユリオ(ユーリ)が勇利にピロシキをあげるシーンだってみんなわかったじゃないですか」と言ってしまうと、クイズではなく大喜利大会へ突入。「ウォッカ」、「ペレストロイカ」、「お味噌汁」という思いついた単語を言っただけの答えから、「おじいさん」という単語を使ったオリジナルストーリーを展開する者も。更に、メガネをしていた豊永と本城は、互いのジャケットを交換して並び「どっちがどっちでしょーか?」と、回答ではなく逆にクイズを出題し、MCの柳原からどつかれるというカオスな状況に。収拾がつかない中、一番勢いのある回答をしていた小野がいるCチームが優勝し、カツ丼ピロシキが振る舞われる。そばで見ていた諏訪部は、無言でカツ丼ピロシキを横からつまみ食い。諏訪部の「フクースナ!」という叫び声とともに波乱のクイズコーナーが終了した。

続いては、アニメの名場面がステージで生アフレコされるコーナーへ。それぞれのキャラクターの名場面がアフレコされていく。ここで、オタベック・アルティン役の細谷佳正とミケーレ・クリスピーノ役の前野智昭もコメント映像で登場。細谷は「敬愛してやまない表現者、内山昂輝さんの話をしたいと思います。現場でご一緒させていただく機会も増えて、こっそり観察しているんですけど、内山さんはそばが好きということで、あの雰囲気でそばが好きっていう個性を羨望のまなざしで見ています。イベントではみんな弾けてしまうと思いますが、内山さんは僕の予想では弾けないと思うので、その個性に注目してイベントをお楽しみください」と、内山への愛を切々と語った。前野は「僕にもし妹がいたらあれだけ溺愛してしまうだろうなと思うほど妹が欲しかったので、共感するところがあります。ミケーレの広島弁は、なんとか茨城弁にならないですか? と掛け合ったこともありましたが(笑)、頑張らせていただきました」と茨城県出身ならではの裏話を披露した。

内山演じるユーリの生アフレコの際にはステージ中央に小さなスケートリンクが登場し、ユーリのスケート演技を実演してきた河西歩果がパフォーマンスを行い、会場中がそのステージに魅了されていた。

最後は、新作スピンオフ朗読劇『長谷津エキシビション 温泉 on ICE ヴィクトル with フレンズ』を出演者全員で生披露。各国代表が集まり長谷津で行われるエキシビションの前日譚だ。飲み会で、酔った勇利が「僕と……してよ」とヴィクトルに迫るシーンでは会場から悲鳴が上がる。勇利が迫ったのは、野球拳。勇利はヴィクトルとの野球拳で惨敗し全裸になったが、ヴィクトルも脱がせ、ヴィクトルのパンツを「戴冠式だ」と言って頭からかぶっていたことを翌朝クリストフから知らされ、「消えたい……」とつぶやいていた。

また、ユーリはチラシの裏に自分がアイスショーをする時のタイトルを書いていたことを南から暴露される。そのタイトルは、「ユーリオンギャラクシー」、「ユーリオンダークネス」、「俺 on お前ら」、「俺VS時代。」、「メガユーリVS巨大組織」、「ユーリ帝国~序章~」など思春期全開のものばかりで、「半分はオタベックが考えたもの」だそう。長谷津城の上でヴィクトルと勇利がしゃちほこの真似をするというオチで締められた、映像化不可能の朗読劇は会場中の爆笑をさらって終了した。

続いて羽多野が登場し、EDテーマである「You Only Live Once」を二人のダンサーを従えて披露し、イベントはエンディングを迎える。諏訪部は「この作品は本当にたくさんの”L”をいただいてきました。今日は少しでもそれをお返しできたかな。こうした”L”の応酬を続けて、こういう場がまた持てたらいいなと思います」とコメント。豊永は「また勝生くんに会いてえな……と思います。みなさんの心の中にぜひ『ユーリ!!! on ICE』という作品をとどめていただいて、どうか忘れないでいてほしいと思います。……ありがとうございました」と感極まった表情で挨拶をした。

「You Only Live Once」が流れ会場が暗転すると、出演者たちがEDのアニメさながらに暗闇の中でライトを振る。彼らが退場すると、イベント当日の写真が、これまたEDアニメのinstagramと同じように次から次へ上に流れていく。そこへ突然「特報」の文字が現れ、「完全新作劇場版制作決定!」という新情報が映し出された。会場は歓喜の声と拍手に包まれ、「ありがとう!」「よっしゃー!」という声があちらこちらから聞こえてくる。そして、最後に出演者が暗闇の中で振っていたライトの光が「Thank you!!!」という文字になってスクリーンに映し出された。ファンへの感謝に溢れた、サービス満載のイベントにふさわしい終幕であった。

(C)はせつ町民会/ユーリ!!! on ICE 製作委員会