パイオニアといえば、音響機器やカーナビのメーカーというイメージが一般的だろう。だが、自転車好きには別のイメージがある。それは「"ペダモニ"のパイオニア」である。ペダモニとは、ペダリングモニターシステムの略称である。ペダリングというからには自転車をこぐ部品であり、パイオニアは、自転車部品メーカーでもあるのだ。

自転車業界に深く根付いた同社のサイクル事業だが、本業とのつながりは見えにくい。事業化のきっかけから、製品の発売までを探ると、そこには思いもよらないストーリーがあった。サイクルスポーツ事業推進部の碓井純一課長と同事業部に所属し製品を開発した藤田隆二郎氏に伺った話を全4回に分けてお届けする。初回はなぜパイオニアが自転車事業を始めたのか、だ。

写真左:サイクルスポーツ事業推進部 藤田隆二郎氏、右:サイクルスポーツ事業推進部 碓井純一課長

きっかけは趣味

パイオニアの自転車部品開発のアイデアが生まれたのは2008年12月のこと。当時、研究開発部に所属していた藤田氏のもとに、新たな研究テーマを提案する番が回ってきたのが始まりだ。研究開発部は新規事業のための研究・開発も担当している部署であり、研究テーマの立案自体は特別なことではない。しかし、いつもと少し違ったのは、新しいことをやろうという空気感だった。

そこで、藤田氏は自身の趣味であった自転車のパーツを作れないかと考えた。使用していたサイクルコンピュータの使い勝手が悪かったからだ。本稿の主役となるパワーメーターを見ても、海外製ばかりで価格は高かった。かつ壊れやすいという評判で、どうにかできないかと感じていた。だからこそ、藤田氏は「お金を出してでも、本当に欲しいと思ってもらえる物を作ろうと考えた」という。