リコーは、2017年5月10日から12日にかけて、東京ビッグサイトにて開催されている「Japan IT Week 春 2017」内の「第6回 IoT/M2M展」において、THETAで得た360°カメラ技術をIoT機器や組込機器への活用に向けた紹介を行っている。

今回展示されているのは、「組み込み用360°カメラモジュール」を用いたハードウェア開発キットと、それを用いたソフトウェアを開発するための開発キット。ハードウェア開発キットは、360°カメラモジュール2台をRaspberry Pi3に接続して制御するもので、同社の提供するソフトウェアを組み合わせると、例えばドローンにTHETAを搭載して撮影した映像がYouTubeに数多く投稿されているが、360°撮影をしながら機体は撮影しない、といったことが可能となる。

組み込み用360°カメラモジュールを用いてリコーが撮影したデモ映像。自動車とドローンそれぞれに搭載した映像だが、画面上でマウスを左クリックした状態で上下左右にスクロールすると、視点をそちらに向けることができる。ドローンの映像を見てもらうとわかりやすいが、機影は見えるが、機体そのものは360°見回しても見えないようになっている

また、360°カメラモジュールとデジタル一眼レフであるGRシリーズのレンズ技術を組み合わせることで、「マルチイメージングクラウドサービス」として実現することも紹介されている。これは、ダイナミックレンジが弱いTHETAに対し、フォーカス性能が高いGRシリーズのレンズを組み合わせることで、例えばドライブレコーダーとして、正面はGRのレンズを通して、よりはっきりとした映像を撮影しつつ、360°の映像も撮影することを可能とする、というもの。すでにCESやCP+でも出展されたものながら、今回はIoT機器向けにモディファイが為されているという。

リコーによるマルチイメージングクラウドサービスのデモ。GRシリーズのレンズを装備した前方部分が高精細画像になっていることがお分かりいただけると思う

こうした取り組みについて、同社では、パートナーも含めて、リコーのイメージング技術を活用して、手を取り合って何かを生み出すことにつながることを期待したもの、と説明しており、同社が機器全体を作るのではなく、ユーザーが持つ(もしくはこれから開発される)機器の価値をコンポーネントとして向上させることを目指したものとなる。そのため、顔認識などの重い処理をクラウドで対応して、カメラ処理とシームレスにユーザーが意識せずに融合させるソリューションなども積極的に公開していく予定とのことで、今回の展示会を通して、さまざまな分野におけるニーズに吸出しなどを行っていきたいとしている。

ちなみに、360°カメラモジュールについては、まだ大量生産ができない状況のため、使ってみたい、という場合は、まずは同社に相談の連絡を入れてもらいたい、とのことであった。

なお、展示ブースでは360°カメラモジュールを用いたリアルタイムのストリーミング配信など、見に来た人だけしか体験できないデモなどが行われているので、興味がある人は会期中に同社ブースを訪れてみると良いだろう。

IoT/M2M 2017のリコーブースにて行われている360°カメラモジュールを使ったストリーミングデモの様子。デモにはモジュール1台で360°撮影をしているが、組み込み用途として、180°ずつ撮影したい(動画の自動車のような場合は、ルーフの上下にカメラモジュールを分割して360°撮影を実現している)というニーズに対応することを目的に、2台のカメラモジュールを接続しているモデルも存在している(右下)