ブシロード10周年ライブが2017年4月30日、横浜アリーナで開催された。同ライブは第1部を「ブシロード10周年ライブ」、第1.5部を「スクフェス4周年記念ステージ」、第2部を「ライブ ミルキィホームズ横濱行進曲」として行う壮大な構成。ここでは、第2部「ライブ ミルキィホームズ 横濱行進曲」を紹介しよう。

今回のライブは副題にもある通り、4月19日に発売されたミルキィホームズのフルアルバム『横濱行進曲』の楽曲を中心に、ブシロードと共に歩んできたミルキィの歴史と進化をつめこんだステージになった。TVアニメ『ミルキィホームズ』でおなじみのovertureが流れる中、ミルキィホームズの三森すずこ、徳井青空、佐々木未来、橘田いずみが登場。おなじみのイメージカラーを採用しつつ、洗練された衣裳姿で歌う一曲目は表題曲の「横濱行進曲」だ。ヨコハマという探偵の都でミルキィホームズが歌っていること自体に安心感と信頼感があって、ここがホームであることを実感させる。

2曲目の「正解はひとつ!じゃない!!」はTVアニメ『探偵オペラ ミルキィホームズ』の初代オープニングテーマ。ユニットとしての原点のひとつでもある楽曲だけに、前後のポジションチェンジを入れながらの一糸乱れぬパフォーマンスは、彼女たちのこれまでの成長そのものでもあるように感じられた。オープニングブロックはゲーム『探偵オペラ ミルキィホームズ2』OP「プロローグは明日色」、アニメ『探偵歌劇ミルキィホームズ TD』OP「ミルキィ A GO GO」と、歴史を追いかけるように楽曲を披露。ラストは肩を組んだ4人が、ステージにぱっと華が咲くようなキメを見せると、ハードなステージを立て続けに歌い踊りきった。

ここで会場の客席下手側から、トロッコに乗った妹分・フェザーズの愛美と伊藤彩沙が登場。愛美が淡いすみれ色、伊藤が淡いピンクの可憐な衣裳で、特に愛美の衣装の色使いはフェザーズとしては新鮮だ。6人が揃ったところで、タオル曲「ミルキィアタック」に突入。そいやっさの声も高らかにタオルをぶん回していく。メインステージのサイドのせり出しにはやや高さがあって、そこにメンバーがお立ち台感覚で順番に上がることでめまぐるしく主役が入れ替わっていった。会場いっぱいの観客がタオルを回し始めると場内の空気の流れがあきらかにかわって、風が巻きはじめることに万単位のミルキアンのパワーを感じた。

「Two of Us 無敵♪」は、アルバム『横濱行進曲』に収録されたフェザーズ待望の新曲で、背中合わせの2人のオルゴールの人形のような動きが印象的。ダンスはシンメトリーな動きとシンクロして揃えた動きが交互に入ってくる感じで結構テクニカルだ。自身も大のアイドル好きとして知られる伊藤だが、きびきびした動きや身のこなしの華やかさはまさにアイドルのようなキュートさだった。第1部ではガールズバンド・Poppin' Partyとしてもステージに立っていただけに、表現のギャップも面白い。歌い終えて、念願の新曲のライブ披露を喜び合う2人だった。

ここからはミルキィホームズのセルフプロデュースステージのコーナー。メンバーそれぞれが考えた演出で『横濱行進曲』収録のソロ曲を披露した。トップバッターの三森は、なんとムエタイの選手のようなコスチュームで「偉人先人 Oh, Hero!!」を披露。仮面のキックボクサー姿のダンサーと向かい合って闘うイメージの振付を見せた。振付には本格的なキックボクシング風の動きも取り入れられていたが、これがさまになるのは三森のしなやかに引き締まった肉体の説得力があればこそだろう。激しい動きと、シャロそのもののふわふわしたボーカルの安定が両立しているのは三森ならではだ。

徳井はライダースーツ的な衣装をまとって、小さな四輪車にまたがって登場。その姿は昭和のヒーローのたたずまいだ。ステージでは火薬や花火を用いたド派手な演出も。「ハートフル探偵☆ネロ」を歌いながら、スタンドとアリーナの間のトロッコ通路や、客席の只中までも練り歩く姿はまさにヒーローだった。途中からはスクリーン演出も白黒になり、フィルムのノイズ感を散らす芸の細かさ。最後は「また会おう!」の言葉とともに、ヒーローはステージを去っていった。

練りに練ったステージが続いたところで、佐々木は静かにステージに登場。真っ白なスモークの中、幻想的な、この世ならざる存在のような風情の佐々木が、物語の主人公のように舞いながら歌う。演出の主体はあくまでも佐々木自身と「Heart Mystery」の歌。歌声と、所作と、表情で見せられるという自信と没入感、ステージで歌い踊る自分自身で表現を完結させる覚悟を感じた。やがてスモークが流れ去ったステージで本当に身ひとつになった佐々木が、バレリーナのような動きと共に、物語を語るように歌い踊る。彼女を照らし出していたピンスポットがふっと消えると、余韻だけを残して佐々木のステージは終わった。

思えば佐々木の「静」の美しいステージのあとに橘田のステージを持ってきたのも狙い通りなのだろう。橘田はゴージャスな黒の衣裳に網タイツという姿で、絢爛豪華な椅子を据え付けた台座で運ばれて登場。橘田の背後では2人の仮面の少女が付き従い、白い羽の扇で橘田を飾り立てたり、扇いで風を送ったりしているが、よく見ると白扇の仮面の少女たちはフェザーズの2人。フェザーズだけに羽を振っている。「Gorgeous Sensitive」の曲名にふさわしくゴージャスでアダルトなステージは、まさに橘田いずみの世界だった。

ここでステージに登場したのは森嶋秀太。インナーまでラメでキラキラの衣裳で登場した森嶋は「The Operative」、さらにジャケットを脱いでもう一曲「ANSWER」を熱唱。誠実にまっすぐ歌い上げる森嶋の姿からは人柄が伝わってくる。縁の下の力持ち的役回りが多い小林オペラがステージの主役になった瞬間だった。落ちサビの歌い上げでは、真っ青な会場にかなりの数のウルトラオレンジが点灯してステージを盛り上げていた。

再びステージに登場したミルキィホームズの4人は「Blue Light」を披露。 橘田のやわらかくも広がりのある歌い上げや徳井のネロらしさを込めた歌声などそれぞれに特色を出しながらも、全体のトーンは優しい色合いで統一されている。4人がゆったりと両手をふると、会場も大きく手を降って応えるうねりが広がっていく。

客席に驚かされたのが「恋の調査報告書」だ。両サイドのトロッコに2人ずつ別れたミルキィチームが会場をぐるりと一周していくのだが、スタート時点の客席は4色のサイリウムがバランスの良い美しさ。だが各エリアにトロッコに乗った2人がやってくると、その周辺が歓迎するかのようにイメージカラーの2色に染まっていく。会場の後方でトロッコが入れ替わると、今度は先程とは逆の2色ずつに、ゆるやかに会場が染まり、やがて元の4色に戻っていく。長年キャストを応援してきた、一緒に歩んできた客席ならではの光景だ。

ステージと会場に楽しさがあふれる「みるみるUPっぷ↑↑」を終えた4人は、それまでの盛り上がりへの感謝と、クライマックスの時間の始まりを伝えた。アニメ『ミルキィホームズ TD』でもクライマックスで挿入歌として使われた「オーバードライブ!」の歌詞には"限界突破、次のステージへ"というフレーズがあるが、それは今まさにミルキィホームズが体現し続けている姿だと思う。三森のソロの歌い上げが本当にシャロそのもので、シャロとしての歌唱と確かな歌唱技術がひとつになっていた。

本編ラストは原点の楽曲「雨上がりのミライ」。今見るとシンプルな振付だが、あの頃とはまた違う、今のミルキィならではの魅力をそこかしこから感じる。キメポーズの時の徳井の本当に満面な笑顔が印象に残った。

だがこのライブがブシロードの10周年を祝うライブの一部である以上、ミルキィホームズが絶対に歌わないといけない楽曲がひとつある。レーザーと逆光が渦巻く中現れた4人の姿と共に流れる音源は、「熱風海陸ブシロード」のイントロアレンジだ。橘田と徳井の低音のパワー、三森のボーカルの華やかさ、そしてこの7年で今が一番キラキラしているように思える佐々木の歌声。「熱風海陸ブシロード」は元はカバーだが、今はまぎれもなく彼女たちの代表曲のひとつだろう。そして間奏では、久々にキッダーニ男爵がステージに登場。おなじみのフレーズを今日だけは「ブシロード10周年、本当にありがとうございました」と変えて誠実に語った男爵は、客席に向けて深々と頭を下げた。10年目にまたたどり着いた超満員の横浜アリーナは、夢幻ではない、現実にたどり着いた努力の結晶だった。

10年目の「熱風海陸ブシロード」の余韻にひたっていると、ステージ上には次々とバンドセットが運びこまれてくる。登場するのは、「ブシロードライブ2015」でもミルキィとコラボしたPoppin' Partyの5人だ。曲目もあの日と同じ「正解はひとつ!じゃない!!」だが、Poppin' Partyの演奏は当時よりはるかにパワーアップしていて、生バンドならではの新しい色合いと魅力を楽曲に与えている。ミルキィチームの4人が"グリグリ"としてアニメ『バンドリ!』に出演していることもあってか、コラボというよりふたつのユニットでひとつのチームであるように感じた。

そして、最後はミルキィホームズとPoppin' Party、全員が揃ってせーのでジャンプして、最高にハッピーなライブを締めくくったのだった。

来場者たちが幸せな気持ちで帰路につくその頃、『バンドリ!』のスマホゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティー』に、Poppin' Party×グリグリ名義での「正解はひとつ!じゃない!!」が楽曲追加されたのもまた、心憎い演出だった。

第2部「ライブ ミルキィホームズ 横濱行進曲」セットリスト

M-01 : 横濱行進曲
M-02 : 正解はひとつ!じゃない!!
M-03 : プロローグは明日色
M-04 : ミルキィ A GO GO
M-05 : ミルキィアタック / ミルキィホームズ & フェザーズ
M-06 : Two of Us 無敵♪ / フェザーズ
M-07 : 偉人先人 Oh, Hero!! / 三森すずこ
M-08 : ハートフル探偵☆ネロ / 徳井青空
M-09 : Heart Mystery / 佐々木未来
M-10 : Gorgeous Sensitive / 橘田いずみ
M-11 : The Operative /森嶋秀太
M-12 : ANSWER / 森嶋秀太
M-13 : Blue Light
M-14 : 恋の調査報告書
M-15 : みるみるUPっぷ↑↑
M-16 : オーバードライブ!
M-17 : 雨上がりのミライ
【ENCORE】
EN-1 : 熱風海陸ブシロード
EN-2 : 正解はひとつ!じゃない!! / ミルキィホームズ & Poppin' Party