LGエレクトロニクス・ジャパンはこのほど、第2世代の有機ELパネルを搭載した「LG OLED TV」2017年モデル「OLED 65W7P」(65型) の発売を、当初予定していた4月上旬から5月12日に延期すると発表した。理由は、「グローバルにおける急激な需要増加に伴い供給体制が追いつかないため」としている。つまり、全世界的に売れに売れまくっているというわけだ。

2015年に初めて日本市場で大画面有機ELテレビを発売して3年目となる今年、市場拡大の切り札として投入された「OLED 65W7P」とはどんなモデルなのか、日本のマーケティング責任者である金東建 (キム・ドンゴン) 部長と金敬花 (キム・キョンファ) 課長に新製品投入の意気込みを聞いた。

LGエレクトロニクス・ジャパン「OLED 65W7P」。5月12日から順次発売される見込みだ。推定市場価格は税別で100万円

有機ELテレビ先駆者としてのプライド

「全ての有機ELテレビは、LGから始まる。」――2017年新モデルのカタログの表紙には、この言葉が躍っている。今年は、既に発売している東芝をはじめ、パナソニック、ソニーも大画面有機ELテレビの市場投入を表明しており、真の意味で有機EL元年と言える。そのような中でつけられたキャッチコピーには、同社の強い意志が感じられる。

「全ての有機ELテレビは、LGから始まる。」――このキャッチコピーは、同社のWebサイトでも使用されている

「これまで当社1社しかいなかった有機ELテレビ市場に今年は数社が参入してくるが、この2年間、たった1社で挑戦を続けてきたことの優位性は確実にある。当社は有機ELテレビの先駆者であることを強く訴えたかった」と、金東建部長は語る。「過去2年間、全国の家電量販店を回り、経営層からバイヤー、店員さんに至るまで、多くの量販店関係者に有機ELの仕組み、ユーザーメリット、有機ELによってテレビライフがどう変わるかなどを伝えてきた。この地道な活動により、店頭では有機ELテレビの販売に慣れることができた」。販売チャネルも当初は大都市立地のカメラ量販がメインだったが、今やほぼ全量販に広がり、郊外店の多くでも取り扱うようになっている。日本において有機ELテレビ販売の基礎を作ったのはLGだとの自負があり、後発メーカーには決して負けられないという思いを込めたのが、冒頭のキャッチコピーなのである。

LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティングチーム 部長の金東建 (キム・ドンゴン) 氏

2015年、LGが日本向けに有機ELテレビを初めて発売した

リビングテレビへと進化、日本専用チューニングも

昨年まで同社は有機ELの特徴を前面に押し出したマーケティングを展開してきた。だが、3年目の今年は競合が登場することもあり、自社モデルの画質やデザイン面での特徴を強く打ち出す戦略に出る。

2017年モデルは新パネルを採用したことで、ターゲティングも大きく変更し、シェア拡大を目指す考えだ。「当初想定したターゲットユーザーは、過去にプラズマテレビを購入した映画ファンだった。部屋を暗くして、映画のために特別な時間を過ごす人だ。しかし、第2世代の有機ELパネルはピーク輝度を25%アップするなど、輝度表現を大きく改善したことで、"液晶より画面が暗い" という有機ELの弱点を克服した」(金東建部長)。もともと、液晶テレビより視野角が広い有機ELは、家族が思い思いの場所から観るリビングテレビとして適している。今回、輝度を上げることなどで、明るいリビングでの日常使いに適した画質へと改善できたのである。

ピーク輝度を高め、階調表現力を増した第2世代のOLEDパネル。Dolby VisionやHDR10にも対応している

「実は、グローバル向けと日本向けモデルは画質を変えている」と金敬花課長。「世界各国の市場で、ユーザーの比較対象となる競合メーカーがどこになるかによって画質の味付けを変えている。日本の場合、グローバルとは競合が大きく異なる。そのため、日本に合った画質にチューニングしている」。

ここでいうグローバルでの比較対象は、おそらくサムスンだと思われるが、現在の日本国内テレビ市場にサムスンはいない。よって、パナソニック、ソニー、シャープ、東芝と比較されたときに色褪せて見えないよう、日本人好みの画質に味付けしているというわけだ。「日本市場の場合、実際に目で見た色に近い、より自然な色合いを好む傾向ある」(金敬花課長)。日本市場を重視しているがゆえ、日本メーカーの画質を研究し、それに負けない性能を開発しているという。

LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティングチーム 課長の金敬花 (キム・キョンファ) 氏