最近は、5月に運動会を行う園や学校が増えてきた。競技の勝ち負けに関わらず、親にとっては子どもの成長が感じられる楽しみなイベントの一つ。一方で、出来ることなら、競技に全力で取り組み、活躍する子どもたちの姿を見たい……という気持ちも分かる。そこで今回は、運動会で注目が集まりやすい競技「徒競走」での走りを速くする方法について、子どもたちの運動神経を育てる運動教室「リトルアスリートクラブ」のトレーナー、山田義基さんにお聞きした。

子どもたちの運動神経を育てる運動教室「リトルアスリートクラブ」のトレーナー、山田義基さんにお聞きした

何よりも"スタート"が肝心

もちろん、走りを速くするには、日頃の運動の積み重ねが必要だ。しかし運動会の直前でも、意識を変えたり、ポイントを押さえたりするだけで、走りは改善するという。山田さんは、「素早くスタートできることが大切です」とアドバイスしてくれた。「スタートで遅れてしまうと『もう勝てない』と気持ちで負けてしまう子が多く見受けられます。しかし反対に、スタートで優位に立てれば、自信につながるのです」。

この日お邪魔した教室では、トレーナーが「よーいドン!」と手をたたいた瞬間に走り出すという、スタート練習が行われていた。「片足を後ろに引く」「音を聞いて反応する」「素早くスタートする」と一つひとつ手本を見せながら、言葉を尽くして手順を説明する。音を聞いて動作を開始するという訓練は、五感を鍛えることにもつながるそうだ。

スタートの合図を待つ子どもたち。とても楽しそう!

また、「座り」「うつぶせ」など、さまざまな姿勢からスタート練習を行うのも効果的。素早くスタートするための、意識付けにもなるだろう。

いろんな姿勢からスタート練習をしてみよう

教室で目立った声がけとして「ひじを曲げて走りましょう」という言葉があったが、山田さんによれば、子どもは腕を後ろに引いた時に、ひじを伸ばしてしまう傾向があるとのこと。体の末端にいけばいくほど、意識は向かいにくくなるそうなので、丁寧に声がけしてみてほしい。

小さい子には「速い」「遅い」を認識させよう

ここからは、年齢別に対策を紹介していく。まず、年少以下の子どもでは、以下のポイントを注意してみよう。

(1)新幹線、飛行機など、速いイメージを持って走ってもらう
(2)ゴールにトレーナーや親が立ち、子どもが着いたらタッチをすることで、ゴールすることの喜びを感じてもらう
(3)トレーナーや親が秒数をカウントする中で走らせることで、「速い」「遅い」を認識させる

現代において、この年代の子どもの中には、思い切り全速力で一定の距離を走りきる、という経験をしたことがない子もいるという。また、なぜゴールに向かって急いで走らなければならないのか、理解できない可能性もあるそうだ。そのため、まずは「全速力でゴールに向かって走ること」が重要になってくる。

トレーナーの声がけにより、全速力で走る子どもたち

また、「速い」「遅い」という感覚も深く理解できていないことがあるため、教室では、トレーナーが「5秒数える間に走ってね」と声がけをし、子どもたちを走らせていた。時間内に、自分がどれだけの距離を進めるのか。時間を区切ることで、速度の違いが理解しやすくなる。

年中・年長は「まっすぐ走る」、小学生は「速度が落ちやすいポイント」に注意

次に、年中・年長の子どもは、競争心のあまり、隣の子を手で押しのけたり、コースを出て曲がったりする傾向があるため、「まっすぐ自分のゴールに向かう」ことを目標にしよう。本当のゴールより5m先をゴールと見据えて、「横」より「前」に意識を向けられるよう、トレーニングしてみてほしい。

そして小学生は、スピードが落ちやすいポイントに注意すると、走りが改善されるとのこと。カーブでは、コースの内側を走り、体は内側に傾け、外側の手と足を大きく使うことで、スピードの低下が軽減できる。ゴールで止まってしまわないよう、最後こそ、一番スピードに乗って、ラストスパートに向かおう。

日頃から運動神経を育てる習慣を

山田さんは最後に、「意識が向かいにくく、力が入れにくい手足の指の力を鍛えることで、速く走ることにもつながります」と話した。教室では「くまさん歩き」と呼ばれていたが、四つんばいになって進む練習をすることで、これらの力が鍛えられるほか、走る時に、足と手を交互に前に出す感覚も身に付けられるそうだ。

四つんばいで歩く訓練をすることで、手足の指先の力を鍛えよう

教室ではほかにも、「ペンギン歩き」や「カエル歩き」など、さまざまな歩き方が実践されていた。加えて教室の内容は、縄の上をジャンプし、段差を乗り越えるなど、複数の異なる動きが実践できるよう、プログラムされている。

「坂や谷、でこぼこなど、自然の環境の中で、遊びまわることで、トラックのコーナーを曲がる時にも、自然な動きができるようになります」。鬼ごっこや手押し相撲など、子どもが「楽しい」と感じる遊びの中で、運動神経は育むことができるそうだ。

運動能力の向上は、子どもの自信にもつながる。運動会をきっかけに、日々の生活の中で、運動や遊びを取り入れてみてはいかがだろうか。

リトルアスリートクラブ

"子どもたちの運動神経を育てる"ことを主眼において、学研とプロトレーナーの遠山健太氏が開発した子ども運動教室。全ての子どもたちが、どんな運動もスポーツも、元気にめいっぱい楽しめるようになることを目指す。

60分間の授業の中では、多種多様な動き=基本動作を経験し、たくさんの刺激を与えることで、子どもたちが本来持っている運動能力を伸ばすトレーニングを行っている。対象は2~9歳(年少少~小学3年生)。「東京ドーム スポドリ!」(東京都文京区)ほか、港区、目黒区、世田谷区、神奈川県横浜市などに教室がある。詳細は「リトルアスリートクラブ」まで。