コスプレイヤーにお相撲さん、迷彩服や着ぐるみ姿の人まで、前後左右がいろんな世界をもつ人たちに囲まれ、気が付けばそんな熱気に巻き込まれてしまう。そんな超巨大イベント「ニコニコ超会議 2017」が4月29日、幕張メッセにて開幕した。3回目の出展となるJALは今年、日本初のジェット旅客機DC-8-32(愛称: FUJI号)を会場に引き連れ、時代をけん引してきた"空の超一流ホテル"を公開している。

「超FUJI号ブース」にて。日本初のジェット旅客機DC-8-32(愛称: FUJI号)が初めて空港外で行われる民間イベントに登場した(※写真全24枚)

若い世代にも本物の歴史ある飛行機を

ニコニコ超会議とは、登録会員数6,000万人を超える「ニコニコ(通称: ニコ動)」を地上に再現するニコニコ最大のイベントで、2012年に初開催、2016年には2日間で15万人以上を動員する規模にまで拡大した。来場者の年齢は幅広く、2016年開催の来場者は平均28歳だったという。ニコニコ動画が設立された2006年と言えば、多くが高校生だった頃だろう。今では子連れで来場という人も少なくないようだ。

ニコニコ超会議は2017年で6年目を迎える

そんなイベントでJALがブースを出展する狙いとしては、選好性においてやや弱いとされている若年層に向け、強いJALファンの獲得だ。また、2017年では「超踊ってみた Supported by JAL」にも初めて参加し、ニコニコ動画を見ている世代との距離感を縮め、ユーザー目線に立った"JALの本気"をリアルの場で体感してもらうことを目指している。

特に2017年のブースは「超FUJI号ブース」として展開。日本初のジェット旅客機DC-8-32(愛称: FUJI号)の機首部分を披露している。約8mにもおよぶ機首部分が空港外で行われる民間イベントに展示されるのは、今回が初となる。

FUJI号は船旅も経てやってきた

いつもは羽田空港の格納庫に保管されており、JALが実施している工場見学で訪れた人のみが、その姿を見ることができるというものだった。機首部分は約8mにもおよぶため、羽田空港からそのまま陸路で運搬することができず、まずは大井ふ頭までは陸路で運び、そこから船旅を経て、また陸路で幕張メッセにたどり着いたという。

運搬されたままの様子で展示

「空の超一流ホテル」と呼ばれた理由

ダグラスDC-8-32はJALが国際線ジェット旅客機として初めて導入した航空機で、その1番機(JA8001)は昭和35(1960)年7月29日の命名式で正式に「富士(FUJI)」と名付けられた。また、初めて会社のブランドマーク「鶴丸」が機体(機首部分)に描かれた飛行機でもある。同機はそのスマートなシルエットから、"空の貴婦人"とも呼ばれていた。

ダグラスDC-8-32が歩んできた歴史

同機は昭和35年8月12日、98人の乗客を乗せ、羽田空港からホノルルを経て、サンフランシスコに到着する約14時間半の初飛行を飾った。その後、2番機(JA8002)「日光」、3番機(JA8003)「箱根」、4番機(JA8005)「宮島」が相次いで就航され、JALはジェット時代に移行することとなる。

昭和天皇もビートルズもFUJI号のお客さま

なお、昭和41(1966)年に来日したザ・ビートルズも、このFUJI号で行くヨーロッパ北回り便を利用した。この時の写真を見たことがある人もいるだろうが、メンバーが着用していたあのはっぴは、JAL広報部のアイデアだったという。また、昭和47(1972)年に中国からジャイアントパンダのカンカン、ランランを運んできたのもこのFUJI号だ。その後も一貫して長距離国際線に重用され、惜しまれながら昭和49(1974)年10月31日に退役となった。

日光・箱根・宮島は解体され、現在は富士のみが保存されている

引退後は整備訓練用機として使用。その他の日光・箱根・宮島は解体されたものの、歴史を彩ってきた同機の保存を望む声の中、富士(FUJI)だけは羽田空港の格納庫の中で保存されてきた。今回の出展でFUJI号を展示するにあたり、保存会のメンバーは「日本にはそもそも、航空機を保存するという文化がなかった。その中で、FUJI号は稀有な存在と言えるでしょう。こうして広く人々に見てもらえて本当にうれしい」と語った。

当時、客室乗務員は着物でサービス。FUJI号運航時は1枚布の着物だったが、その後、着やすいようにセパレート式に移行した

FUJI号の標準座席数は元々合計104席で、ファーストクラスが36席、ツーリストクラスが68席という構成。客室の最前部にはラウンジを設け、壁には芸術院会員で文化勲章者である前田青邨画伯の「紅白梅」(シルクスクリーン手法で複製)の作品が飾られている。窓には障子を、座席には西陣織を、床には黒い縁取りの畳を模し絨毯を用いることで、日本調の空間を演出した。さらに、FUJI号の就航を機に客室乗務員の制服も一新され、着物でサービスを提供。FUJI号はこれらのサービスゆえに、"空の超一流ホテル"としても知られていた。

ブースでは中には入れないが、タラップから中の様子を見ることができる

コックピットに4席ある理由

ブースではFUJI号が運搬されたままの姿でブースに登場。FUJI号の中には入れないものの、外からラウンジの様子をうかがうことができる。整備訓練用機だった時代に取り外されていた座席も復帰。今では実現不可能な障子も、当時のままの姿をとどめている。頭上の収納スペースに扉がなかったり、救命筏(いかだ)がドアではなく天井にあったりするのも興味深い。

FUJI号内のラウンジも、日本の伝統を息づく空間となっている

今回、特別にその奥に広がるコックピットに入らせてもらった。コックピットの中には席が4つある。操縦士と副操縦士のほか、当時は航空士と航空機関士が乗務していた。天井には小さな穴があるのだが、当時はこの穴から星をながめ、方角を割り出していたという。「本当に操縦かんが重かったんですよ」と、ダグラスDC-8-32の操縦経験もある元パイロットが教えてくれた。

コックピットの中。限られた空間いっぱいにさまざまレバーやメーターが並んでいる

ブースでは、FUJI号とFUJI号に関する情報がパネル展示されているほか、自分の身長とJALや航空機に関する大きさを比べられる「JALスケール」も設置されている。これによると、180.8cmはメインギア(767)の1.614倍に相当するようだ。また、パイロット気分が味わえる「フライトシミュレーター」もあるので、自分の腕を試してみるといいだろう。

ブース来場者には限定ステッカーをプレゼント

「JALスケール」で自分と航空のスケールを比べてみると、意外な親近感が湧いてくるかも

「フライトシミュレーター」で気分はパイロット(※写真の方は本当にJALのパイロット。「腕がいいんですよ、彼」とパイロット仲間も太鼓判)

パイロット姿のポンタも待っている

ブースには、「【JAL】客室乗務員と岡本さんが『バタフライ・グラフィティ』踊ってみた」から続く、JALが制作した動画3作でも話題となった「Web販売部 岡本さん」「JAL JETS」も駆けつけている。「ニコニコ超会議 2017」は4月29~30日の2日間のみの開催なので、ぜひFUJI号の雄姿をお見逃しなく。開催時間は、29日10時~18時(最終入場17時30分)、30日10時~17時(最終入場16時30分)。当日券は税込2,000円となる。

着物も含め、歴代の制服をまとったスタッフにもブースで会える