続いて登壇した米IBM シニアバイスプレジデント兼IBMリサーチディレクターのアーヴィン・クリシュナ氏は、いまや世界全体がデータで動いていること、コグニティブコンピューティング、人工知能、マシンラーニングといった新たな技術が注目されていることを指摘しながら、「IBMは、ビジネスのためのAIを提供し、すべての人が組織のなかで活用できるようにしたいと考えている。IBMが提供するプラットフォームの中心にWatsonがあり、それを、IBMクラウドを通じて利用できる環境を提供しており、その上に、特化した業界や領域に向けた知見と、アナリティクスやセキュリティなどを統合したソリューションを提供することができる。今後50~70年間に、データとクラウドを原動力にしたコグニティブが、GDPを大きく成長させることができ、これを早く活用した企業が勝利を収め、生き残ることができる。それは、鉄鋼や電気、石油や自動車、情報や通信によってGDPが大きく成長し、さらに、それをいち早く活用した企業が生き残り、既存の企業に置き換わっていった歴史と同じである」とした。

米IBM シニアバイスプレジデント兼IBMリサーチディレクターのアーヴィン・クリシュナ (Arvind Krishna)氏

また、「欧州の調査では、薬を投与されている高齢者の50%は薬を飲んでいないのが実体だが、飲んでいないのにも関わらず、飲んでいると医者に申告するため、医者は薬の量を増やしたり、別の薬を処方するといったことになり、適切な医療につながらないという課題がある。Watson Healthでは、数多くのヘルスデータを活用して適切な指示ができるようになる。また、視覚障害者に対して、適切な歩行ルートを、AIを使って示すといったこともできる。コールセンターや天気予報への活用、創造性を発揮する分野、医療分野などにおいて利用されることになる」と発言した。

Watson Health

また、同氏はIBMのブロックチェーンへの取り組みについても説明。

「ブロックチェーンは、セキュアに認証された検証可能なトランザクションであり、ロジスティクス、資産管理、資本市場において、ブロックチェーンを活用することで、最大3000億ドルのコスト削減が可能になると予測される。物流分野などでも活用されているほか、三井住友銀行では、貿易業務にブロックチェーンを活用し、いち早く改革に乗り出している」などと述べた。

ブロックチェーンで、最大3000億ドルのコスト削減が可能に

クリシュナ氏に紹介された三井住友銀行の谷崎勝教 取締役専務執行役員は、「変化と多様化が加速し続け、なにが起こるかわからない時代に入ってきた。これは金融機関が置かれた立場も同じであり、厳しい経営局面にある。ITは、経営にインパクトを与える武器であり、経営課題の解決にはITが必要不可欠。将来の経営を左右するものになる」と前置きし、「金融機関におけるこれまでの開発方法は、命の次に大事なお金を守る役割を保つために、安定性と信頼性を重視し、ウォータフォール型の開発をしてきた。だが、それではニーズの変化に追いつかない。スピードと効率性を重視したアジャイル型の開発が必要であり、この仕組みが将来の経営を左右することになる」と語った。

三井住友銀行 取締役専務執行役員の谷崎勝教氏

さらに、信用リスク計測システムにおいて、Bluemixを活用することで、構築期間を約2カ月短縮し、オンプレミスと比べて20%のTCO削減を実現したこと、コールセンターにおいてWatsonを活用することで、オペレータが必要な情報を画面上に表示。年間100万件の照会に対して、1件あたり60円のコスト削減が達成され、大きな効果が発揮されていることや、オペレータの新規採用者の離職率を48%も改善するといった効果がでていることなどを紹介。

信用リスク計測システムにおけるBluemixを活用

「行内の照会業務支援、セキュリティ対策などにもWatsonを活用している。これらの成果を、三井住友銀行だけでなく、三井住友フィナンシャルグループ全体に適用領域を広げたい。新たな技術を広げるブラットフォーマーとしての役割も果たしたい。2020年に向けて金融機関の改革に乗り出し、次世代金融ビジネスのフロントランナーを目指す」と話した。