東京の再開発が活発化している。これは、2020年の五輪開催を見据えた動きともいえる。こうした状況を踏まえ、折あるごとに都内の再開発現場を取材してきた。その取材先である三井不動産や三菱地所、森ビルなどのデベロッパーは同じことを口にする。

それは「デベロッパーはオフィスビルやレジデンスなどハード面だけを整備するだけではなく、そうした建物に入居する企業や人、いわばソフト面を育むことが大切」というもの。各社で言葉や表現は異なっていても、おおよそ似たような内容を各デベロッパーの担当者は話す。

三井不動産によるベンチャー支援の取り組み「31VENTURES」もそうした施策のひとつだ。ベンチャーの育成や海外企業の日本進出を支援している。

さて、そのベンチャーだが、「シーズ」→「アーリー」→「ミドル」→「レイター」といったように成長段階によって分類される。シンクタンクやベンチャー・キャピタルにより呼び方が異なったり、分類数が増えたりする場合はあるが、上記の4段階がポピュラーなところだろう。そしてIPO(新規株式公開)を果たしたり、大企業に買収されたりすることで「EXIT」となる。

フロア規模が拡大した「Clipニホンバシ」

Clipニホンバシが居をかまえるビル

当然、成長段階によって従業員数が異なり、必要なオフィススペースも違ってくる。31VENTURESは、そうしたベンチャーの規模に合わせたオフィス支援を行っているのが特徴。そしてベンチャーの最小単位ともいえる「シーズ」向けのコワーキングスペースとして「31VENTURES Clipニホンバシ」(以下、Clipニホンバシ)が用意されている。

さて、このClipニホンバシだが、2014年4月に開設され、起業を目指す-多くのユーザーに利用されてきた。そして2017年4月、移転し新装オープンした。

この移転により、セミナースペースの収容人数がそれまでの最大50名から、100名へと拡大。ワークスペースも60席から90席に増やされた。千葉県・柏市にある「31VENTURES KOIL」と入館用ICカードが共通化され、ClipニホンバシとKOIL双方のユーザーがどちらの施設も利用できるようになった。

そして何よりも、建物の雰囲気が明るくなった。コレドのあいだを貫く日本橋のシンボルともいえる仲通りと広々とした江戸通りに面し、さらにガラス面積をふんだんにとったことで、フロア内はとても明るい。

移転前のClipニホンバシを拝見させていただいことがあるが、ビルの入り口がわかりづらく、“雑居ビル”然とした建物だった。エレベーターなどは、まさに雑居ビルのそれ。とはいえ、イノベーションを生み出すのは建物ではなく“人”。施設が入居する建物を批評するなと、反論されてしまいそうだ。