2015~2016年に放送された特撮テレビドラマ『仮面ライダーゴースト』の、Blu-ray COLLECTION(全4巻/東映ビデオ)に収録された映像特典『アラン英雄伝』(全4話)の上映イベントが開催された。上映後に行われたトークイベントには、主演のアランを演じる磯村勇斗と、本作および現在発売中のVシネマ『ゴーストRE:BIRTH仮面ライダースペクター』の監督を務めた上堀内佳寿也氏、そしてチーフプロデューサーの高橋一浩氏が登壇した。

左から高橋一浩プロデューサー、磯村勇斗、上堀内佳寿也監督

『アラン英雄伝』とは、仮面ライダーゴースト/天空寺タケル、仮面ライダースペクター/深海マコトに続く第3の仮面ライダーである仮面ライダースペクター/アランを主役に置いたスピンオフドラマ。タケルを中心にした『ゴースト』テレビシリーズの裏側で、人間を脅かす「眼魔」世界の住人であるアランが、人間界の美しい自然やあたたかい人の心に触れるエピソードを重ね、やがて眼魔世界を人間界と同じような美しい世界に戻すという目標を見出していく。

「第一章」はVOL.1(第1~12話)、「第二章」はVOL.2(第13~24話)、「第三章」はVOL.3(第25~37話)と、Blu-ray COLLECTIONの収録エピソードに連動するストーリーとなっており、さらにVOL.4(第38~50話)に収録の「最終章」はテレビ最終回の"その後"が描かれている。イベントでは今だから話せる『アラン英雄伝』の秘話が和気あいあいと、時には熱く繰り広げられた。

磯村:『アラン英雄伝』は今までテレビ画面でしか観ることのできない作品だったので、大スクリーンでの上映が実現してうれしいです。

高橋:Vシネマ『仮面ライダースペクター』の上映イベントで名古屋や大阪のほうに舞台挨拶で行ったとき、『アラン英雄伝』も劇場で観たいという声がファンの方々から上がったので、これはチャンスだと思ってすぐ東映ビデオさんに声をかけたんです(笑)。

上堀内:実は、先ほどの上映中は僕たちも後ろでこっそり見ていたんです。スクリーンで上映されたことが何より嬉しいし、やっぱり迫力が違うなあと思いました。

磯村:幸せな気持ちになりましたね。

高橋:最初のころの話をしますと、アランを主役にしたスピンオフをやりたかったんですね。『ゴースト』の序盤はアランの出番が少ないもので、じゃあ彼の裏を描くストーリーをやろうと。

上堀内:スピンオフで難しかったところは、テレビ本編よりもずっと前に撮るのに、テレビのエピソードとある程度連動させないといけないってところです。たとえば『アラン英雄伝』で重要な登場人物となるフミ婆(ばあ)のくだり。まだ本編では一回しか出ていないタイミング(第15話で初登場)だったんです。正直、アランとフミ婆の関係性をどこまで出していいものか、なかなか悩みながら撮っていました。でも、フミ婆役の大方斐紗子さんと磯村くんが現場で対面したとき、すぐにいい雰囲気を作ってくれたんです。アランは人間とはなじまないんだけれど、なぜかフミ婆にだけ自然と入っていく。お婆ちゃんと孫という感じでもあり、第一章の冒頭にもあるように、ほのかな思いが入っていたり……。僕としては、アランがフミ婆のたこ焼き屋台のところへ行く、あのシーンが一番お気に入りです。

磯村:『アラン英雄伝』はフミ婆が軸になって動いているので、あのシーンは僕も思い出深いです。ケガをしたアランがハルミ(フミ婆の孫)に連れられて、初めてフミ婆のたこ焼きを食べるシーン。あれがアランにとって生まれて初めてたこ焼きを食べる瞬間だと意識して演技しました。「こんな美味いものがあるのか!?」という芝居をしたんです。後になって、本編(第18話)でカノンと公園を歩いていて、フミ婆のたこ焼きを食べるシーンが出てきたんですけれど、上堀内さんは『アラン英雄伝』での出来事を重要視して、撮影に臨んでほしいタイプ。しかしそのとき諸田(敏)監督が「スピンオフはスピンオフ、本編は本編だ!」という考え方で……。

上堀内:その回をはじめ『ゴースト』ではずっと助監督としてつかせていただいたんですが、「アランがたこ焼きを食べるのはこれが初めてじゃないんです!」と強く諸田さんに主張しました(笑)。

磯村:僕もそこを意識して、たこ焼きを食べるリアクションに気をつけてみました。そうしたら、上堀内さんがブースの中ですごく嬉しそうな顔をしていたのを覚えています(笑)。

上堀内:人生で一番の笑顔でしたね(笑)。ちなみに言っておきますが、僕も磯村くんも諸田監督とはすごく仲いいですよ!

高橋:実は『アラン英雄伝』はテレビ本編の第15話あたりの時点で、最終章まで撮り終えなければいけなかったんですね。なので、まだ進行中のテレビ本編の展開を結末まで、ある程度想定しておかないといけない。そこが、とても大変だったんです。最終章ではマコトだけ(画面上に)いないとか、あの理由もなんとなく理由を考えておきました。アランがたこ焼きを初めて食べるシチュエーションにしてもそうなんですが、テレビ本編を撮っているときに、ちょっと待てよ、ここでアランとフミ婆が会ってちゃいけないんじゃないか、とか。着ている服をこのシーンでは変えとかなきゃいけないとか、『アラン英雄伝』とのつじつま合わせに縛られた部分もけっこうありましたね。

上堀内:最終章で御成とハルミが初めて会いました、みたいなリアクションをとるでしょう。その後に本編を撮った際、御成と彼女は本編で会ってないからね!とか『アラン英雄伝』と本編とのつながりを考えての撮影に苦心しました。

高橋:たとえば、最終章のお話を成立させるためには、タケルやアカリたちとアランが"知り合い"だということをハルミが知らない状態でないといけない。しかし坂本(浩一)監督が撮られた第36話では、タケルたちとアランがハルミの屋台の前に座って居たりするんですよ。「おいおいわかっちゃうよ」って心配になりました(笑)。

上堀内:「この距離なら大丈夫ですよ、ハルミには見えません!」なんて言ってましたね(笑)。監督なんてわがままな生き物ですから……。