通勤時間帯の着席サービス向上を目的に、関東・関西の大手私鉄で座席指定の有料列車が次々導入される。関東では3月25日、西武鉄道の新型通勤車両40000系を使用する有料座席指定列車「S-TRAIN」がデビュー。4月21日には東武鉄道の新型特急車両500系「リバティ」がデビューし、同車両を使用する新たな特急「スカイツリーライナー」「アーバンパークライナー」が通勤時間帯に設定された。

西武鉄道の新型通勤車両40000系。有料座席指定列車「S-TRAIN」に使用される

東武鉄道の新型特急車両「リバティ」。通勤時間帯の特急列車にも使用される

東武鉄道は東上線で座席定員制列車「TJライナー」も運行中。京急電鉄の着席保証列車「ウィング号」「モーニング・ウィング号」は、5月1日から座席指定制列車に変更される。JR東日本や小田急電鉄など、全車座席指定の特急列車を通勤時間帯に運行する会社もあり、小田急ロマンスカーによる東京メトロ千代田線への直通運転も実施中。関西では近鉄や南海電鉄が全車座席指定の特急列車を運行しており、今年は泉北線・南海高野線直通の特急「泉北ライナー」に新型車両が導入されたことも話題となった。

今後も関東・関西で新たな有料列車の導入が続く。いずれも通勤時間帯の着席ニーズの高まりが背景にあるといわれているが、実際のところ、通勤列車の利用者も「確実に座れるなら有料列車に乗ってもいい」と考えているのだろうか。そこで今回、関東・関西の通勤列車の実情を探るべく、マイナビニュース会員を対象にアンケートを実施した。

関東・関西ともに約半数が通勤列車に「ほとんど座れない」

「通勤列車のアンケート」に回答した会員数は関東412名・関西400名の計812名。このうち、通勤で列車を利用すると答えた会員は関東307名(74.5%)・関西242名(60.5%)だった。関東における通勤先は東京都が半数以上(65.5%)となり、次いで神奈川県(15.6%)、千葉県(7.5%)、埼玉県(6.5%)の順。関西における通勤先は大阪府が半数以上(66.1%)を占め、以下、兵庫県(20.2%)、京都府(7.0%)と続いた。

自宅から勤務先までの通勤時間についても尋ねた。結果は関東・関西ともに「30分~1時間未満」が半数以上(関東51.5%、関西58.3%)を占め、次いで「1時間半未満」(関東28.7%、関西22.7%)、「30分以内」(関東10.4%、関西12.4%)、「2時間未満」(関東7.5%、関西5.0%)、「2時間以上」(関東2.0%、関西1.7%)の順となった。

家から会社までの通勤時間(関東)

家からの会社までの通勤時間(関西)

朝の列車での通勤時間帯(関東)

朝の列車での通勤時間帯(関西)

夕方以降の列車での帰宅時間帯(関東)

夕方以降の列車での帰宅時間帯(関西)

朝夕の通勤で列車を利用する時間帯も、関東・関西で順位の差は見られなかった。しいて言うなら朝の時間帯、ともに「7~8時頃」がトップだったが、関西が半数以上(55.0%)に対し、関東が半数以下(44.0%)だったことくらいか。朝の時間帯の2位以下は「8~9時頃」(関東28.7%、関西22.7%)、「始発~7時頃」(関東16.9%、関西17.8%)、「9~10時頃」(関東7.2%、関西3.3%)の順。夕方以降は「17~19時頃」が関東45.6%、関西44.2%で最も多く、以下「19~21時頃」(関東37.1%、関西38.8%)、「21~23時頃」(関東11.4%、関西11.2%)、「23時頃~」(関東3.3%、関西5.0%)と続いた。

通勤列車で座れる割合を尋ねると、「ほとんど座れない」が関東51.1%、関西42.2%でともにトップ。「ほとんど座れる」と答えた人は関東26.1%、関西27.3%でほぼ同率、「ときどき座れる程度」は関東22.5%、関西30.6%だった。約半数が「ほとんど座れない」と感じるほど、関東・関西ともに通勤列車が混雑している実情がうかがえる。

では、通勤時に「確実に座れるなら有料列車(特急列車・座席指定制列車など)に乗ってもいい」と考える人はどのくらいいただろうか。

通勤列車で座れる割合(関東)

通勤列車で座れる割合(関西)

通勤時、確実に座れるなら有料列車に乗りたい?(関東)

通勤時、確実に座れるなら有料列車に乗りたい?(関西)

この質問で最も多かった答えは「考えたことはない」で、関東60.9%、関西66.9%と6割以上を占める結果に。普段の通勤列車が混雑していても、運賃以外の料金を払ってまで着席通勤することは考えておらず、とくに関西でその傾向が強いようだ。

一方で「よく考える」と答えた人は関東10.7%、関西9.1%、「ときどき考える」と答えた人は関東28.3%、関西24.0%となり、混雑する通勤列車を避け、確実に座れる有料列車への乗車を考える人もも3~4割程度いることを示す結果となった。今後、関東・関西で通勤時間帯の有料列車導入が続くことで、「確実に座れるなら有料列車に乗ってもいい」と考える人が増えるかどうか。引き続き注目していきたい。

京阪電気鉄道や京王電鉄が座席指定の有料列車を導入、新型車両も

最後に、これから導入予定の着席サービス提供を目的とした新たな車両・列車も簡単に紹介。京阪電気鉄道は8月20日から、座席指定の特急車両「プレミアムカー」を組み入れた8000系を運行開始。平日・土休日のほぼ終日にわたって運行される。8月21日からは、平日朝ラッシュ時間帯に全車両座席指定の「ライナー」列車も運行開始となる。8000系を使用し、枚方市発淀屋橋行・樟葉発淀屋橋行の2本を運行する。

2018年3月には、小田急電鉄が複々線化完成に合わせて特急ロマンスカーによる輸送サービスを充実させる予定。通勤時間帯の列車も増発し、朝方の特急ロマンスカーの総称として新たな愛称も採用するという。特急ロマンスカーの新型車両70000系も来年3月の営業運転開始をめざす。京王電鉄も2018年春から同社初となる有料の座席指定列車を運行開始する予定で、新型車両5000系を導入する。2018年度には、西武鉄道が10000系「ニューレッドアロー」以来25年ぶりという新型特急車両をデビューさせる予定だ。


調査時期: 2017年2月24日~2017年2月27日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 男女412名
調査方法: インターネットログイン式アンケート