初期コスト、導入と管理の作業が削減されるなど、クラウドサービスにはメリットが多いが、単体では効率化が逆に損なわれることがある。クラウドサービスは内部システムと融合してこそ真価を発揮する――クラウドサービスが定着する前からニーズを見抜いていたのが、ユニファイド・サービスだ。2004年に同社を創業した宇陀栄次氏らに話を聞いた。

ポータルでクラウドと内部システムの連携を実現

ユニファイド・サービスは2004年に宇陀氏、成瀬修氏が共同創業した日本のベンダーだ。宇陀氏はIBMで営業部長や社長補佐などで手腕を発揮した後、ソフトバンクに移りソフトバンク・コマースのトップとしてブロードバンドやサービスに事業の軸足を変換させることをやってのけた。ユニファイド・サービス立ち上げは、その後のことだ。

「当時はクラウドという言葉はありませんでした。しかし、いずれはクラウドのような外部サービスと企業が持つ内部システムを融合して使う時代が来ると思っており、複数のシステムを統合的に使えるインフラが必要になると考えていました」と宇陀氏は振り返る。ユニファイドという名称には、さまざまなサービスが統合されるという意味が込められている。

ユニファイド・サービス 代表取締役会長の宇陀栄次氏。2016年6月より、2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の組織委員会のテクノロジーとイノベーションの最高責任者も務める

その後宇陀氏は、Marc Benioff氏の積極的なアプローチにより、Salesforce.comの日本法人のトップを務めることになるが、その前に宇陀氏らは「企業ポータル」としてプラットフォーム作りに着手した。そして2004年にセールスフォース・ドットコム代表取締役社長(および米Salesforce.com上級副社長)に就任し、10年間セールスフォースを率いる。

その間は成瀬氏がユニファイド・サービスのトップを務め、宇陀氏は外から同社のビジネスに関わった。なお、宇陀氏はセールスフォースでも、民営化にあたって日本郵政のシステムを手がけるなどの業績を成し遂げている。

2014年にセールスフォースの代表取締役社長を退いた後、宇陀氏は思い入れのあるユニファイド・サービスに本腰を入れる。2016年には、会長兼CEOに就任した。

クラウドとオンプレミスを統合したポータルを提供

主力のクラウド連携ポータルでは、オープンソースのポータル「Liferay」をベースとした「Unisrv」を提供する。パブリッククラウドはもちろん、プライベートクラウド、オンプレミスを統合してポータルとして提供することで、ユーザーは単一のサインオンでログオンできる。管理者向けにはアクセス制御、ユーザーごとに画面を設定するパーソナライズなどの機能を提供し、システム操作の負担を軽減しつつ、利便性を高めることができる。

成瀬氏は、土台となるLiferayがGartnerのマジッククアドラントで、IBMやOracleのポータル製品と同じ「リーダー」に位置付けられているなど、LiferayがIBMやOracleといったベンダーのソリューションと比べても引けをとらないことをアピールする。

ユニファイド・サービス 代表取締役社長 成瀬修氏

「Liferayは世界中にコミュニティをもつオープンソースプロジェクトで、新機能の導入やバグなど不具合の修正も早いです。われわれは、国内でいち早くLiferayを見出したベンダーとなります」

Unisrvの提供形態はオンプレミスとクラウドの2種類があり、導入はすでに2万5000社を数える。大企業の導入事例も増えており、1社で2万5000人を超えるユーザーを抱える事例もあるという。

インダストリー向けのSaaS - まずは電力から

現在の最優先事項は、「事業の規模拡大」と、宇陀氏は話す。2016年の売り上げは前年約2倍の3億円近くであり、今年度はさらに倍増の6億円を見込むという。

そこで取り組むのが新規事業、インダストリーに特化したソリューションだ。まず、2016年4月の電力自由化を受け、ユニファイドは電力小売事業者向けの顧客情報管理(CIS)クラウドサービス「Unisrv 電力CIS」を立ち上げた。

ここでユニファイドは関西電力のIT子会社(関電システムソリューションズ)から鈴木久充氏を起用し、鈴木氏が前職で取り組んだSalesforceのForce.comプラットフォームを採用したシステムを構築した。ハードウェアは不要、低コストでスタートして規模に合わせて拡張できる拡張性などのメリットが受け入れられ、大手を含め9社以上を顧客に抱える。