鈴木氏は言う。「関係者内には電力は特殊という意識があるが、私はクラウドを使ってやるべきだと信じていた。電力の小売りといっても、要は顧客管理と請求などの課金がメイン。これはECサイトや流通が得意とする領域。商品が電力というだけだ」

ユニファイド・サービス 執行役員 エネルギービジネス事業部長 鈴木久充氏

そこで、「Unisrv 電力CIS」ではパブリッククラウドであるForce.comとHeroku(Amazon Web Services)の上にインダストリーに特化したサービスを乗せた。スクラッチで開発すると支障が出るリスクがあるが、確固とした基盤があるため、運用から約1年が経過しているがトラブルはないという。

「市場が予測できない電力自由化のような新規事業こそクラウドを使うべき」というのが、ユニファイドの主張だ。「自由化により電気が選べる。これは、規制緩和でベンチャーも参入できるということを意味するが、ベンチャーはITに数千万円単位の投資はできない」と鈴木氏、にもかかわらず、「オペレーションも含めシステムに費用がかかっているところがある」と言う。

「Unisrv 電力CIS」の概要

宇陀氏は「オンプレミスのシステムを作った場合、損益分岐点になるまで時間がかかる。成功したらその分だけ払う従量課金は新規事業に適している」と続ける。

よく聞かれるセキュリティの懸念については、セールスフォース時代からの経験も踏まえ、宇陀氏は自信を持って、「セキュリティはパブリッククラウドを採用しない理由にされがちだが、実際にはクラウドから情報が流出したことはほとんどない。プロがやっているので、そこは違う。100%リスクがないわけではないが、既存システムが100%完全かというと違うはず」と述べた。

武藤真祐氏とのタッグで、在宅医療分野にも参入

同社は2016年末、Salesforce.comの投資部門であるSalesforce Venturesの出資を受けた。これを利用して「Unisrv 電力CIS」の販売を拡大して、今後3年で現在の9社から100社に拡大を図るほか、新規事業の開発も加速する。例えば、在宅医療分野では、高齢化社会で不足がさらに進む病院や老人ホームに対して、在宅での介護や医療を進める。ここでは宮内庁侍従職侍医を務め、医療法人社団鉄祐会理事長である武藤真祐氏とタッグを組む。

構想としては、関係者が在宅介護や医療を受ける人に関する情報を共有し、看護師や医師が定期的に訪問しながらケアをするというものだ。中でも、潜在看護師が活躍できるような仕組み(看護師版Uberのようなもの)を考えているという。潜在看護師の数は推計70万人に上ると言われておりこれは政府が掲げる「一億総活躍社会」の実現にも寄与できると見る。

このように、同社は宇陀氏の下で、今後さまざまな仕掛けを展開する予定だ。中核にあるのは「社会問題の解決」(宇陀氏)だ。「現在の日本は人口減少などさまざまな問題を抱えている。環境、エネルギー、健康、教育など、社会問題でやるべきことは山ほどある」と語る宇陀氏。政府の施策を待つのではなく、「このように解決すればこんな風に変わる」と積極的に提案しているという。