1879年、米の発明家、トーマス・エジソンは電球を生み出した。以来、ランプに頼っていた生活は暗い闇夜から解き放たれ、現在にいたっている。このエジソンが発明した電球のフィラメントを覆う球体のガラスを「コーニング」という企業が製造した。

実はコーニングの創設は、エジソンの電球発明よりもさかのぼり、1851年である。つまり、創設以来166年の歴史を誇るアメリカ屈指の老舗企業だ。

100年以上の歴史を誇る企業は、日本に集中しており、世界最古といわれる「金剛組」(578年創業)も日本に籍を置く。国内に長寿企業が集中している理由はさまざまあるが、日本という国そのものが長く存続しているということが、その根拠に挙げられることが多い。

では、1776年の独立宣言により建国した若い国家、アメリカの長寿企業はどうか。実は意外と100年以上続いている企業は多い。日本に馴染みがあるところでは、デュポン(1802年)、プロクター・アンド・ギャンブル(1837年)、アメリカン・エキスプレス(1850年)といったところだろうか。コーニングは、そういった企業に準ずる長い歴史を誇る老舗企業だが、日本での知名度は前出の3社には遠くおよばない。

とはいえ、コーニングが手がけている各事業では、トップクラスのシェアを獲得している。

スマートデバイスでトップシェアのカバーガラス

もっとも我々の生活の近くに存在するのが「スペシャリティマテリアルズ部門」だ。いや、正確には同部門が手がけている「Corning® Gorilla® Glass」(以下、ゴリラガラス)である。コーニングという社名は知らなくても、ゴリラガラスという製品名にピンとくる方も多いのではないだろうか。

そう、もうすっかり手放せなくなったスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどのカバーガラスで使われている部材だ。世界で40以上のメーカー、1650種類以上ものブランドで使われ、ゴリラガラスを採用したデバイスは約50億台にものぼる。

つまり、洋服や腕時計、アクセサリーといった常に身につけているものを除けば、1日でもっとも触れている“部分”のひとつといえるのだ。いや、“指先で触れる”ということに限定すれば、スマホのガラスかキーボードのどちらかが1日でもっとも触れているもの、ということになるのではないだろうか。