さて、ゴリラガラスはサムスンやLGエレクトロニクス、HP、Lenovoなど、グローバルで展開しているベンダーに広く採用され高い存在感を示しているが、その歴史は意外に短い。

コーニングインターナショナル 石原修氏(左)と、コーニングジャパン 井上康之氏

コーニングインターナショナル 材料事業部 Corning® Gorilla® Glass 日本地区セールスマネージャー 石原修氏は「Corning Gorilla Glassは2006年に開発され、2007年から市場に投入されました。つまり、今年でちょうど10年になります」と話す。166年という長い歴史を誇るコーニングからしてみれば、もっとも新しい製品のひとつといえるだろう。だが、前述のとおり、スマホやタブレット市場の急成長に乗り事業拡大し、さらにはこの領域でトップシェアとなった。

また石原氏は「この10年のあいだに改良を重ね、現在は『第5世代』となっています」という。石原氏によると、第1世代・第2世代では薄型でも強度が高いことを追求。第3世代では「NDR」(Native Damage Resistance)を採用し、キズによる耐久劣化を抑制した。第4世代ではマーケットのニーズを探った結果、“割れにくさ”をさらに強化。そして、より過酷な「デバイス・ドロップ・テスト」に耐える第5世代へと進化した。

通常のガラスを鉄の棒で押し込むと、あっけなく割れた(左)。一方、ゴリラガラスでは結構な体重をかけても割れなかった

新たな分野への進出を図る

“より強く”“より薄く”といった部材そのものの性能向上のほかに、ゴリラガラスの活用領域の開拓にも乗り出している。そのなかでも期待が持てそうなのがクルマへの活用だ。 コーニングジャパン コーニングガラステクノロジー コマーシャルテクノロジー プロジェクトマネージャー 井上康之氏は「Corning Gorilla Glassは通常のガラスよりも耐久性に優れているため、薄くできます。結果、従来よりも30~40%、ガラス部分が軽くできます」と話す。つまり、ガラス部分を軽量化することにより車体重量が抑えられ、燃費向上やカーボン排出抑制につながるという。

問題はコストだ。通常ガラスよりも高価なため、普及車に採用されるのはまだ先になるだろう。事実、エンジンと室内の遮音板にゴリラガラスを採用した「BMW i8」も、フロントガラスやリアウィンドウにゴリラガラスを採用した「フォードGT」も、“プレミアムカー”だ。ただ井上氏は「まずはこうしたプレミアムな領域で勝負していきたいです」と意気込む。

と、ここまで書くとゴリラガラスを擁するこの部門が同社の“稼ぎ頭”なのかと思うが、実はそうではない。