2日間で15万人以上を動員する超巨大イベントの季節がきた。4月29~30日に幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議 2017」に唯一航空会社として出展するJALはこのほど、JAL社員たちが踊る動画を公開。その中で一番の話題をさらったのは、「岡本さん」の再来だろう。

キレッキレのダンスを披露してくれた「岡本さん」こと岡本昂之さん。本業はWeb販売部であり、主任として活躍している

4月19日には、岡本さんソロバージョンの動画「JAL岡本さんがPV風に『バタフライ・グラフィティ』踊ってみた」も公開された(本文中に動画あり)。キレッキレのダンスに、「本当に社員なんだろうか」という疑いを抱かずにおれないのだが、改めて岡本さん、そして、JALがダンスに込めた想いをうかがった。

若年層に「本気のJAL」を

JALがニコニコ超会議に初めて出展したのは2015年のこと。選好性においてやや弱いとされている若年層に向け、強いJALファンの獲得とともに、ニコニコ動画を見ている世代との距離感を縮め、ユーザー目線に立った"JALの本気"をリアルの場で体感してもらうことを目指している。2017年3月25日にJALが東京ガールズコレクションへ初出展したのも、同じ狙いとのこと。以下は2017年版の動画「【JAL】客室乗務員と岡本さんが『バタフライ・グラフィティ』踊ってみた」である。

動画に出演している「岡本さん」は、もちろん本当にJALの社員であり、いつもはWeb販売部の岡本昂之主任として活躍している。そんな岡本さんにニコニコ超会議の企画で踊るモチベーションをたずねたところ、「とてもシンプルですよ」という回答だった。

「ぼくはWeb販売部なのでJALの宣伝や販売促進をやっているんですが、これを企画しているコーポレートブランド推進部では、非航空ユーザーも含め、もうちょっと広い範囲でのJALのブランド認知やブランド向上などをミッションとしており、その目指すものに共感し、最大限協力したいと思いました。仕事の中で、なかなかダンスという特技を生かせる場面はないじゃないですか。求めてくださっているのであれば、そこはちゃんとプロ意識をもって、JALのイメージアップの一助になれればと思いやっています」。

社内外からの反響に「素直にうれしいですよね」と笑顔

2016年、そして2017年版の動画でも大きな反響があり、一般からは「JALに乗ってみたい」以外にも、「岡本さんかっこいい」というダイレクトなコメントも寄せられた。「素直にうれしいですよね」と笑顔を見せてくれた岡本さんだが、実は社内からも反響があったという。

「『動画見たよ』と声かけてくださったりとか、東京以外の地域からも『こんなイベントやるから出てくれないか』というオファーもいただけました。本業が忙しいので、まだ実現できていないのですが。この前、海外出張でロンドン支店に顔出した時、『あの動画の方ですね? 』と声をかけてもらえ、海外の方も見てくれているようでうれしかったですね」。

"奇跡的な経緯"を経て今年は海外ロケも

岡本さんは、高校2年生の時に始めたブレイクダンスがダンスとの出会い。元々はロックダンスを希望していたようで、大学生から本格的にロックダンスを始めたと言う。大学3年生の時に出場した全国大会では、関東予選で2位だったものの、全国大会で逆転優勝を果たした実力者だ。

「大学4年間はとにかくダンスの毎日。今は休みの日に昔のダンス仲間で集まったり、母校に教えに行ったりという趣味程度ですが。JALの採用試験の時は、ダンスを通じて得た気づきやその時の経験などを前面にアピールしていたかと思います。それが本当に刺さったかは分からないんですけど(笑)」。

現在はダンスは趣味程度というが、大学4年間はダンスに打ち込んだとのこと

そんな岡本さんが超会議に出演するには、"奇跡的な経緯"があったという。2015年初出展の際には、JALのチアダンスチーム「JAL JETS」のメンバーが「踊ってみた」の企画を実施。「昨年よりもパワーアップしたい」という想いから、男性スタッフにも声をかけることになったという。

その際、岡本さんがダンスを踊れることを知っていた岡本さんと同じWeb販売部の人が、「おかもっちゃん、ちょっと出てくれない? 」と打診。「他の男性社員にもたくさん声かけるから」ということで、岡本さんも軽いノリで「いいですよ」と快諾したという。

しかし、岡本さんが撮影現場に入ったところ、男性社員は自分ひとりだということが判明した。「なかなか踊れる男性社員が見つからなかったようです。結局、客室乗務員3人とぼくとで躍らせていただいたんですが、うまくフィットしてホッとしましたね」と語ってくれた。2016年版では岡本さんのソロバージョンもあるのだが、これは、客室乗務員と撮影した動画の反響がよく、「作れるだけ作ってみようか」という流れでできた動画だと言う。

2017年版でもソロバージョンがあるが、急きょ制作した2016年版とは異なり、ソロバージョンのために海外ロケが行われた。まずは動画「JAL岡本さんがPV風に『バタフライ・グラフィティ』踊ってみた」を見ていただきたい。

羽田の格納庫やJAL工場見学 SKY MUSEUMを舞台にした、「【JAL】客室乗務員と岡本さんが『バタフライ・グラフィティ』踊ってみた」とはまた違った壮大な映像は、灼熱のデスバレーにも負けず劣らずな熱量のある作品に仕上がっている。とは言え、岡本さんはWeb販売部主任として多忙な日々。この撮影のためだけに海外に行くのは難しかったため、3月末のロサンゼルス出張と抱き合わせで撮影を決行したと言う。

「出張の初日に課題曲と振り付けが送られ、出張中の夜、プライベートの時間を使ってホテルの部屋の中で練習しました。去年やっていたこともあり、動画を見ながら練習をするのには慣れていたので、2~3時間、ガーッて集中してやりました。裏側は結構ハードでしたね(笑)。デスバレーとかにも行って、陸路までの移動が片道6時間かかったりとか。でも、動画自体は楽しい動画に仕上がっていると思います」。

海外出張も多く、今回のダンスもスケジュール調整が難しかったと言う

Web販売部主任として付加価値のあるサイトを

ここまで"ダンサー・岡本さん"を追ってきたが、何度も言うが、本業はWeb販売部主任だ。岡本さんは2009年に新卒採用としてJALに入社。新千歳空港で航務(運航のオペレーション業務)を3年、人事部(採用グループ)、JALエクスプレスの総務部に出向を経て、2年半前から現在のWeb販売部にて活躍している。業務では、JALのホームページやアプリの企画・運営・管理の全てを担っている。

「機能開発やユーザビリティーなどのブラッシュアップを経て、ホームページやアプリでいかに航空券を販売して収入貢献を上げられるか。また、ホームページはひとつのタッチポイントですし、お買いにならない方もたくさん訪れるわけですから、そうした方々にもしっかり適切な情報を提供できるようにすることがミッションです」。

普段は主任として多忙な日々を過ごしている

JALならではのサービスとしては、2015年2月にJAL国内線アプリを全面リニューアルした際に合わせて導入された、「富士山どっち? 」という機能がある。これは富士山の見える方向を案内するというもので、例えば、羽田空港から小松空港に向かう際には左側に富士山が見えることを伝え、その方向をチェックしながら航空券を予約できるようになっている。付加価値のあるフライトを提供する、オフィシャルサイト・アプリならではの魅力付けと言えるだろう。実際に、岡本さんもこのリニューアルに携わっていたという。

「今後ですが、AIを使ってもう少しサービスレベルを上げたいなと思っています。AIはバッグヤード側ですでにいろいろところで活用されていますが、ホームページでAIがお客さまとコミュニケーションができるくらいの活用はまだ進んでいないので、そこに今、うちのWeb販売部は注目しています。

去年の12月に『マカナちゃん』(赤ちゃん連れでハワイ旅行を検討中の人に向けたバーチャルアシスタントサービス)の提供を期間限定で展開していましたが、この第2弾もできればと検討しています。AIを活用して新しいサービスだったり、お客さまとの新しいコミュニケーションツールだったり、利便性もそうですが、新しい旅の喚起の仕方がうまれたらいいなと」。

プレッシャーを何倍にもパワーに変える

Web販売部としての岡本さんの活躍について、岡本さんの上司でもあるWeb販売部 Web・コールセンター企画グループ長の斎藤勝さんにうかがったところ、「見ての通り、非常にアグレッシブ。若いですけど、自分よりもずっとレベルの高い仕事を自分なりに目指してやっています。公私に関わらず後輩の面倒をよく見ていて、周りのメンバーを巻き込んで盛り上げ、部の一体感が出てきました。彼がいることですごく部が盛り上がっていると思います」とのこと。

「仕事以外のところでも、非常に面倒見がいい」と、岡本さんの上司でもあるWeb販売部 Web・コールセンター企画グループ長の斎藤勝さんは言う

後輩のWeb販売部 加藤哲平さんも、「普段、常に明るくて前向きで、仕事もバリバリこなしています。部内・部外問わず頼られていて、ぼくにとっても頼れる先輩です。去年の超会議で広く知られるようになってから、いろんな人に見られる・期待されるようになったと思うんですが、プレッシャーを何倍にもパワーに変え、期待を超えるところで結果を出す人です」と、頼れる先輩・岡本さんへの信頼の厚さがうかがえた。

そんな岡本さんは、「ニコニコ超会議 2017」の中の「ニコニコ踊ってみたフェス 踊オフPart」(4月30日)に出演を予定している。また、今年のJALブースは「超FUJI号 JALブース」として、日本初のジェット旅客機である「FUJI号」の機首部分(約8m)を、保管されている羽田空港から輸送して披露する。空港外で行われる民間イベントに展示されるのは今回が初となり、岡本さんも「インパクトが大きいのではと思っています。まずはJALブースに立ち寄ってほしい」とコメント。空港で見るJALとはまた違うJALに、きっと出会えることだろう。

力強い眼差しと人を惹きつける笑顔をもつ岡本さん。取材の合間にも岡本さんに声をかける社員は多く、いろいろな人々に慕われ・愛されていることが伝わった