大阪・高槻にある関西大学初等部は、1年生から思考力を養う「ミューズ教育」で注目されている。

実際に教室を訪ねてみると、1年生の教室にも、生徒が自由に使って良い「ベン図」「PMI分析」「Xチャート」など6種類のプリントが常備されており、これらを使って考える訓練を各教科で行うという。小学校4年生からは、自分でこれらの思考ツールを選んで、問題を読み解いたり、自分なりの答えを導き出すというから驚かされる。

廊下にはMacBook Airが常備してあり、生徒は自由に使うことができる

関西大学初等部の中でも、ICT教育は、特色ある教育の柱に置かれている。教室で自由に使って良いMacBook Airが廊下のロッカーに配備されており、小学校5年生以上からはiPadを個人所有するという。持ち運びやすさからiPad miniを選ぶ生徒が多いそうだが、iPad Air 2やiPad Proを選らんでも良い。

そのiPad購入に際して、「iPadのメリット」を保護者に説明する資料も、生徒たちが前述の思考ツールを使って作成するのだ。論理的に考えて主張を作って、自分の親に説明する。「よしわかった」と素直に説得される家庭が多いのも想像に難くない。

小・中・高12年の一貫教育の出発点となる関西大学初等部は開設7年目を迎えている。学校は、思考スキル、考え方を考えること、問題解決能力などを重視する教育方針を説明する。これらは、10年ぶりに改訂される学習指導要領で目指す教育のあり方そのものだ。

そうした指導方針のなかで、iPadはどのように活かされているのだろうか。校長を務める田中達也氏からは、関西大学初等部における明確な2つの目標が示され、その実践の様子を聞くことができた。

田中 iPadは、まず生徒の創造力を伸ばすツールとして、大きな存在です。ICTを教育に導入する目的は、学習の効率化やメディア活用などももちろんですが、そこで終わってしまっては学習そのものの変化につながりません。図にまとめる、ビデオにまとめる、新聞を作る、といった情報を作るツールとしての価値を活かしていく必要があります。加えて、生徒の思考を促すツールとしての活用も進めており、具体的にはプログラミングの授業の導入です。しかし、いきなりキャラクターを動かしたり、コードを打ち込むのではなく、まず自分の頭の中で考えることから始めます。例えば、『むすんでひらいて』を知らない人に伝えるにはどうすれば良いか、という課題は、自分の頭で整理して考えなければなりません。

また関西大学初等部の教員で12年間の一貫教育全体のICT教育戦略を作る役割も担う堀力斗氏は、次のような点に注意しているという。

教員によって得意・不得意もありますが、各教科で実践したことを共有しています。ICT部会で出た授業プランを実践し、良いものを繰り返し採用していく。生徒たちにどんなことを学んで欲しいか、という思いとツールをマッチングさせながら、活用を進めています。生徒たちがクリエイティブさを発揮するとき、教員がそれをいかに阻害しないようにするかが難しい点です。そのため、グループで、クラスで、なんらかの課題を共同で解決する、といったような、課題の与え方には工夫が必要になります。