ASUS JAPANは4月13日、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)の両方に対応したSIMフリースマートフォン「ZenFone AR」を発表した。ZenFoneシリーズ史上最高のスペックを搭載するとアピールする。メモリとストレージ容量の異なる2モデルが用意されており、RAM 8GB/ ROM 128GBモデルが99,800円(税別、以下同)、RAM 6GB/ ROM 64GBモデルが82,800円。発売時期は2017年夏になる見込み。

ARとVRの両方の技術に対応したSIMフリー端末「ZenFone AR (ZS571KL)」。5.7型2K解像度ディスプレイを採用。背面に3つのカメラを搭載する。また、ハイレゾにも対応している

ZenFone ARでは何ができるの?

ZenFone ARは、GoogleのAR技術「Tango」とVR技術「Daydream」の両方に対応したAndroidスマートフォン。海外では2017年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2017」で発表された製品となる。

現実の世界とバーチャルな空間を結びつけるTangoでは、背面に3つのカメラによる「ASUS TriCamシステム」を搭載した。高解像度の2,300万画素カメラ、モーショントラッキングカメラ、赤外線プロジェクター搭載の深度カメラにより、人間の目のように周りの環境を認識できるのが特徴だ。

背面に搭載された3つのカメラにより、人間の目のように周りの環境を認識できるASUS TriCamシステム。横から見ると、カメラ部分がわずかに膨らんでいるのが分かる

発表会およびデモ会場では、ZenFone ARで実現できるさまざまなサービスが紹介された。Tangoでは床、壁、物体までの距離を短い時間で計測できる。このためソファやテーブル、ポスター、ピアノなどを部屋に配置した場合に、どのように見えるかを気軽にかつ正確にシミュレーションできる。

従来のARで必要だった専用のマーカーは不要。また従来のARではバーチャルな物体の前に現実の物体を配置できなかったが、Tangoではオクルージョン機能もサポート。そうした不自然さも解消している。デモで紹介されたのはARアプリ「RoomCo AR」(リビングスタイル製)。何の物体をどのように配置したか、という情報はクラウドに保存できる仕様で、「壁にぶつかるので、これ以上家具を後ろに下げられない」といったことも把握できる。

ARアプリ「RoomCo AR」でのデモの様子。さまざまなブランドの家具やインテリア等を自由に部屋に配置できる。スタッフによれば、利用できるアイテムは現時点で30万点はあるという

オクルージョン機能により、バーチャルな家具の前に立つこともできる。現実世界の見た目に近い、より自然な表現が可能になっている

また、カメラをかざすだけで知りたい場所の長さも計測できる。床から天井までの高さなど、手が届かない、メジャーでは測りにくい場所も簡単に計測可能だ。このほか3Dモデリングにも対応している。発表会では、ZenFone ARで作成した乗用車の3Dモデルが紹介された。

カメラをかざすだけで知りたい場所の長さを計測できる。奥行きも計測できる点が特徴だ

3Dモデリングにも対応。乗用車ほどの大きさの物体であれば、ほんの数分で作成できるようだ

不動産業界、家具・インテリアショップなどでも活用が期待できる本端末。発表会に登壇したASUS JAPAN プロダクトマネージメント部の阿部直人氏は、近い将来の話として「博物館で利用すれば展示内容の解説や順路の表示が行える。スーパーなどの店舗では、商品の棚まで案内できる。このほか、恐竜の大きさをARで体感するといった使い方で、子どもの教育にも利用できるのではないか」と意欲的に語っていた。

ASUS JAPAN プロダクトマネージメント部 テクニカルプロダクトマネージャーの阿部直人氏

博物館やショップなど、活用シーンの広がりが期待できる

発表会では、Tangoの深度認識に着目した奥行・高さを活用できるARゲームもいくつか紹介された。そのひとつ、ドミノ倒しをモチーフにしたゲームは、高い位置から落下するドミノを作成できるものだった。今後はこのような、従来のARでは実現できなかったユニークなゲームも増えていくことも予想される。

Tangoの深度認識を活用した、ドミノ倒しのゲーム。机の上に架空のドミノを設置できるばかりでなく、段差を利用したギミックも作成できる点がユニークだった

なおVR技術Daydreamにも対応する本端末では、もちろんVRのゲームも楽しめる。実際、VR向けに開発されたゲームタイトルも、いくつかプリインストールされる見込みだ。

VR技術Daydreamにも対応する本端末。製品には「組み立て式VRメガネ」が同梱される。VRのゲームもプリインされるので、買ったその日からゲームが楽しめるだろう

ZenFone ARの基本スペック

それでは、ZenFone ARのその他の特徴とスペック詳細を紹介していきたい。5.7型ワイドSuper AMOLEDディスプレイ(2,560×1,440ドット、WQHD)を採用し、AR / VRのリアルな世界観を楽しめるという。また、Gorilla Glass 4採用により、日々の衝撃や傷に備える。

アプリ一覧画面

高負荷の処理が必要となるARやVRをストレスなく楽しめるよう、CPUにはTangoに最適化されたというQualcomm Snapdragon 821(クアッドコアCPU)プロセッサーを搭載した。RAM 8GB/ ROM 128GBモデル、RAM 6GB/ ROM 64GBモデルともに、カラーはブラックのみとなる。

ディスプレイ下部には、指紋センサーを兼ねた物理ボタンを配置。長押しで受話などの操作も行える

イヤホンジャック、スピーカーは下端にある

高い没入感でAR / VRをよりリアルに楽しめるように、サウンド面ではハイレゾに対応。ハイレゾ対応イヤホン「ZenEar」も標準で同梱される。2つの電話番号から同時に通話やSMSの待ち受けが可能なデュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)、および高速通信が可能なキャリアアグリゲーションもサポート。

型番 ZS571KL-BK128S8 ZS571KL-BK64S6
OS Android 7.0
プロセッサ Qualcomm Snapdragon 821 for Tango(4コア/2.35GHz)
ディスプレイ 5.7型ワイド Super AMOLED(2,560×1,440ドット)
RAM 8GB 6GB
ROM 128GB 64GB
カメラ 背面:2,300万画素/モーショントラッキング/深度カメラ>前面800万画素
無線LAN IEEE802.11a/b/g/n/ac
Bluetooth Bluetooth 4.2
FDD-LTE B1/B2/B3/B5/B7/B8/B18/B19/B20/B26/B28
TD-LTE B38/B40/B41
キャリアアグリゲーション 2CA/3CA
W-CDMA B1/B2/B5/B6/B8
GSM 850/900/1,800/1,900MHz
SIM nanoSIM×2(DSDS対応)
インタフェース USB 2.0 Type-C、microSDスロット、マイク/ヘッドホンコンボジャック
バッテリー容量 3,300mAh
本体サイズ/重量 W77.7×H158.98×D4.6~8.95mm/約170g

バッテリー容量は3,300mAhで、Quick Charge 3.0により約39分で約60%までバッテリーを急速充電できる。サイズは約158.98(H)×77.7(W)×4.6~8.95(D)mm、重さは約170g。USBポートはUSB Type-C、SIMカードスロットはnano SIMカードスロット×2となっている。

AR / VRに両対応したハイスペック端末ながら薄く、予想以上に軽い印象だった

発表会に登壇したASUS JAPAN マーケティング部のCynthia Teng氏は「ワンランク上の贅沢をお届けしたい。ZenFone ARではTango、Daydreamに対応するなど、ハードウェアの進化だけでは実現できない要素が盛り込まれている。デジタル新時代の未来を切り開く革命児として、可能性を作り出していける製品にしていきたい」と意気込みを語った。

ZenFone ARの販売戦略に期待を寄せるASUS JAPAN マーケティング部 部長 Cynthia Teng氏

アプリ開発者やサービス事業者などさまざまなパートナーとの連携も視野に入れており、セミナーの開催といった取り組みも積極的に進めていく考えだ。