自動車メーカーのロボットといえば本田技研工業の「ASIMO」が有名だが、実はトヨタ自動車もロボット事業に取り組んでいる。そのトヨタの「パートナーロボット部」が実用化し、近くレンタルを開始するのは、脳卒中などによる下肢麻痺のリハビリ支援を目的とするロボット「ウェルウォーク WW-1000」だ。トヨタがロボットで目指すのは社会貢献かビジネスか。その辺りが気になるところだ。

2017年4月12日のパートナーロボット説明会でデモが実施された「ウェルウォーク WW-1000」。2017年5月から受注を開始する。納入は9月に始める予定

“移動”がテーマのロボット開発

1980年代に自動車生産用の産業用ロボットを導入したトヨタは、その技術と自動車の開発で培った知見を応用し、「人と共生するパートナーロボット」の開発を始めた。パートナーロボットの開発で掲げるのは「すべての人に移動の自由を、そして自らできる喜びを」というビジョンだ。自動車メーカーのトヨタだけに、ロボットの開発でも“移動”をテーマにしている。

ロボット事業で取り組むのは少子高齢化の問題だ。高齢者が自立した生活を送り、介護する側の負担も軽減できるよう、「シニアライフの支援」「医療の支援」「自立した生活の支援」「介護の支援」を主要な領域として開発を進める。ロボット事業で初めて商用化にこぎつけた商品がウェルウォークだ。

パートナーロボットを導入できる分野は多岐にわたるとトヨタは見ているようだ

クルマ作りの技術を活用

ウェルウォークは脳卒中などで歩行が困難になった人が、再び歩けるようになるためにリハビリを行うためのロボットだ。患者の状態に合わせた難易度の調整や歩行状態のフィードバック機能など、運動学習理論に基づいたさまざまなリハビリ支援機能を備えるという。

トヨタの未来創生センターを統括する磯辺常務役員

自動車メーカーとして、トヨタがウェルウォークに活用した技術は何か。説明会に登壇したトヨタの磯部利行常務は、クルマ作りに用いる産業用ロボットの細かいセンシングや、小さなモーターを上手に制御しながら使う技術などを採用していると説明。「軽さは正義」とも言われるクルマ作りで培った軽量化技術もロボット開発に落としこんでいるという。

説明会に登壇した藤田保健衛生大学教授の才藤栄一氏によると、ウェルウォークを導入することでリハビリ施設では歩行訓練の効率化が図れるという。具体的な数字を挙げての説明を求められた同氏は、「簡単に言うと」と前置きした上で、リハビリに要する期間が1.6倍程度は短くなるとの見方を示した。

社会的には意義がありそうに思えるトヨタの新商品。気になるのは、ビジネスとして見た場合、同社のロボット事業はどのような立ち位置なのかということだ。