東芝が、2017年4月11日に発表した2016年度第3四半期(2016年4~12月)連結業績は、同社の独立監査人であるPwCあらた有限責任監査法人の「意見不表明」という異例の状態のなかで発表されることになった。

綱川社長「自信のある数字」

本来、第3四半期報告書の提出や決算発表は、監査法人のいわば「お墨付き」をもらった状態で行われる。報告書の内容が正しいことを独立監査人が担保することで、社会的にも信用を得た数字として発表し、これをもとに投資家や金融機関などは、その企業の姿を判断するのが基本的な仕組みだ。

会見に臨む東芝の綱川智社長。社長からの謝罪の言葉も聞きなれてきた

だから、東芝の綱川智社長が、「自信がある数字」と会見でいくら発言したとしても、社会的な信用がない状態の数字であることに変わりはない。

同社では、2月14日に2016年度第3四半期の業績発表を予定していたが、これを3月14日にまで延期し、さらに、3月14日の発表も再度延期。今回の4月11日が2度目の延長申請の期限日となっていた。

「これまでの延期は、内部調査が完了していなかったが、今回は一連の内部調査が完了したと判断したことで、延期をせずに発表した。これ以上の調査は必要ないと考えている」と、東芝取締役監査委員会の佐藤良二委員長は、これまで延期していた決算発表とは異なり、不表明でも公表した背景を示す。

東芝取締役監査委員会の佐藤良二委員長。これ以上の調査は必要ない、との言葉を信じた人間は、会場にどれほどいただろうか

東芝の綱川社長も、「監査人からは修正を行うべき重要な指摘を受けていない以上、四半期報告書の提出の延長申請を改めて行っても、今後、独立監査人から適正意見の表明をもらう目処が立たない。これ以上、ステークホルダーに心配、迷惑をかけられないと判断し、極めて異例だが、独立監査人から不表明という状態で第3四半期決算を公表した」と語る。

内部調査の内容に自信を持っているからこその業績発表というのが東芝の見解だが、PwCあらた監査法人の姿勢は追加調査が必要だという姿勢だ。

「独立監査人は、監査委員会が実施した調査結果を評価できていない。当社は、一連の調査は完了したものと判断しているが、監査法人はまだ必要だと言っている」(東芝・佐藤委員長)

内部調査の結果に関して、東芝とPwCあらた監査法人との見解にずれが生じ、それが今回の異例の発表に至った。

PwCあらた監査法人が不表明とした要因はここにある。では、東芝がいう内部調査とはなにか。