映像配信サービス「DAZN」を手がけるPerform Investment Japanは、報道関係向けにDAZNオフィスツアーを実施。日本オフィスや、制作現場とシステムなどを公開した。また、サービス開始直後からトラブルでつまずいてしまった、Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)のサッカー放送に関しても説明を行った。

DAZN放映のための設備を公開。サッカー本場のクオリティを日本に

第一印象としては、動画収録を行うスタジオがないこともあり、かなりコンパクトな作り。日本でDAZNのコンテンツ制作を統括する水野氏によると、コンテンツは一旦ロンドンの本部に送られてエンコード処理などを行うということなので、そのためのスペースがないためなのかもしれない。

Perform Investment Japan コンテンツ制作 本部長の水野重理氏

日本で集められた画像は、この「プロダクションコントロールルーム」でクオリティを確認してロンドンの本部に送信。ロンドンで必要な処理を行ったのち、世界に配信される

ディレクターやアナウンサーが入り、付加価値を高めたコンテンツを作成する副調整室

実況解説のためのオーディオブース。10ブース用意されており、実況解説だけならばここで対応

オーディオブース利用中。当時はこの1ブースだけ使用中だったが、週末はいっぱいになるそうだ

ダイジェスト編集などを行うスペース

Jリーグ用のハイライト作成スペース。平日だったので空いていた

Jリーグ用も10ブースほど用意されている

先週から始まったJ1/J2/J3のザッピング番組「Jリーグ・ゾーン」のためのスペース。メイン中継の2画面に加えて、全試合とTwitter(ハッシュタグ#JZN)を見ながら切り替える

Jリーグコンテンツに関するハイライトは、映像コンテンツの作成に責任を負うのがスカパーではなくJリーグになった点や、配信を担当するDAZNが国際クオリティの映像と均一性を求めた点だ。ロンドンに本拠地を置くPerformグループゆえ、日本市場におけるスポーツ中継の突破口をサッカーにフォーカスしたのだろう。

結果として、従来以上に多くのカメラを設け、すべてのカメラがリプレイに対応。昨年までのスカパー中継ではなかった、バックスタンドにもカメラが用意された。さらに、均質な映像クオリティを提供するために、カメラ機材も一新している。

前シーズンまではスカパーが番組制作から放送までを行っていたが、今年からJリーグが映像制作を担当

DAZNとしては、投資に見合う映像が必要ということから、Jリーグの映像に対して、ヨーロッパのサッカー放映と同レベルのクオリティを要求するという

今まで放映のなかったJ3を含めた1,043試合、すべての公式映像を製作。スタジアムに行かなければ見られなかったJ3の試合も、映像で視聴可能に

昨年までのJ1リーグ映像では6台のカメラを使用していたが、位置を見直したうえで、9台に増強。全カメラがリプレイに対応でき、新設したバックスタンドコーナーカメラはスローモーションにも対応する

さらに、サンデーJプライムでは16台のカメラを使う。バックスタンドコーナーのスローモーションカメラも2台に増え、ゴールネットを揺らすボール専用ともいえるカメラも追加

J2は、J1用からオフサイドカメラなどを除いた5台カメラ体制だ。J3は4カメラ体制で、スカウティングカメラが放映カメラも兼ねる

また、DAZN側でも平日にJリーグを取材し、試合の中継前後やレビュー番組で利用するという。ザッピング番組「Jリーグ・ゾーン」も提供され、ハイライトシーンをリアルタイムで見られるのも、ファンにとっては嬉しいことだ。

公式試合の映像に加えて、試合中継では多くの映像を用意する

週末の試合中継だけでなく、金曜日にはプレビュー番組、月曜にはレビュー番組を配信。そのための取材やコメント収録は平日に行う

土日の中継は全試合。ザッピング放映するJリーグ・ゾーンも

Jリーグ・ゾーンの例。もともと、レッドゾーンという、NFL(アメフト)全試合のタッチダウンシーンを見られる番組があったそうだ

スポーツコンテンツ全体という面で見ると、Jリーグ一点突破のような状況がやや気になるところではある。質疑応答では、放映予定に入っていた自転車競技の中継がないことが指摘されたが、「自転車もこれから力を入れる予定」という回答であった。Jリーグ中継を成功させ、さらに他のスポーツ中継へと拡大していけるのか、そしてJリーグ配信のトラブルによる不信を払拭できるかが、日本市場におけるDAZNの立ち位置を左右する。