tvk(テレビ神奈川)で16年半もの間放送された、朝のバラエティ音楽情報番組『saku saku』が、3月31日の放送で最終回を迎えた。同番組は、毎週月曜日から金曜日まで30分放送され(夕方や深夜の再放送も)、今や神奈川県民なら誰もが知っている"朝の顔"として、長年にわたって愛されてきた。

3月19日に開催された番組最後のDVD&Blu-ray『saku saku ~真っ白い炎~』発売記念イベントの模様

音楽番組ではあるものの、1つの固定カメラで女の子とマペット(人形)がひたすらシュールなトークを展開し、話題はガンダムやアニメ、ゲーム、神奈川のマニアックなご当地ネタが中心。さらに番組スタッフが変装・仮装して登場する姿に、「朝から何をやっているんだ?」と呆れつつも、気が付けばかわいらしい女性MCと、マペットが繰り出す毒舌トークに魅了されているという唯一無二の番組であった。本稿では、『saku saku』とはどんな番組であったのか、そのかけがえのなさ、魅力と歴史を振り返る。

『saku saku』の歴史

『saku saku』はその歴史の中でも女性MC、マペット、マペット操縦士、ガヤ、そしてトークの場所を幾度となく替え、新たな風を吹き込み続けた。『saku saku』とひと言で言っても、実は見た時期によってそれぞれの『saku saku』がある。参考までに、その変遷を表でまとめてみた。

歴代女性MCの魅力

『saku saku』の初代MC・あかぎあいの時代は、とにかくフリーダム。トークが退屈になると爪をいじり始めたり、「香取慎吾と結婚したい」と妄想を爆発させたり、ジゴロウがふるネタをすべてやってのけたりと、歴代女性MC史上、最も自由にトークを繰り広げていた。また、あかぎの卒業ラストにおいてジゴロウがボケをかまし、「笑いがないと生けていけないの? アンタはっ!」と激しいツッコミを入れた姿は、今もサクサカーの記憶に深く刻まれている。

さらに受験生の合格祈願のため、おへそを披露するコーナーも評判で、当時の学生を悶えさせた。また、謎の小学生・ケンタロウ(中身はご意見番)との不毛なトークも注目度は高かった。現在は、横浜で三児の母となり、子育てに奮闘中。

2代目MCは、現在も抜群の認知度を誇る木村カエラ。MC就任当初は、初対面のジゴロウに対するタメ口や(ジゴロウ命名:タメ口姫)、番組出演者による「すたーうぉーずごっこ」で強烈な棒読みを見せ、視聴者をハラハラさせるも徐々に覚醒。『saku saku』人気をイッキに引き上げた人物だと言っても過言ではない。ジゴロウの足を肘でクニクニする姿や、お腹が空くと不機嫌になる素直さ、自作した"ナウシカの虫笛"を調子に乗って振り回し、頭に激突させる姿に爆笑したサクサカーも多かったことだろう。

3代目MCの中村優の時代は、優等生すぎる性格のおかげで、笑いの少ない"笑いの大飢饉"が起きた時代だと、白井ヴィンセントは語っていた。しかしその一方、トークの流れを止める「台無しちゃん」(いきものがかり吉岡聖恵がそろうと「台無しシスターズ」にレベルアップ)や、「身長約170cmチョップ」「ピュアピュア光線」などの独自の必殺技、覚えたてのギターでオリジナルソング「中村優のテーマ」を歌うひたむきな姿に心を撃ち抜かれ、今なおコアなファンは多いという。現在はフリーランスとなり、タレント活動やスマイルランナーを続けており、昔と変わらない笑顔をサクサカーに見せている。

4代目MCは、番組内のランキングガールから華麗な転身を遂げた三原勇希。持ち前のルックスとチャラいキャラ、関西弁バリバリの超個性派で、多くのサクサカーを呼び戻したとまことしやかにささやかれている。また、高音を発したり、「武者返し」「鉄仮面ガール」「ヨガのポーズ」などでヴィンセントを翻弄した。そのほかDVDの特典映像ロケをした際、ちまちまと巨大パフェを食べるギフト☆矢野に対して「手ぐらい汚れればいいでしょ!!」と放ったひと言は伝説となっている。現在は、音楽番組のMCや、ゴルフや釣り番組で活躍中。

5代目MCは、岐阜県の飛騨高山からやってきた天然娘・トミタ栞。タレント活動やテレビ出演は『saku saku』が初めてで、登場当初は緊張でしゃべれず、ヴィンセントからは「土器」呼ばわりされていた。しかし「屋根の上」と、レンタルショップ「カシカシ」という2つの時代を経て、トミタは急成長。ヴィンセントと共に歌う「杵築のうた」をはじめ、往年のアイドルを彷彿とさせる「八丁畷のうた」「伊奈のうた」でサクサカーの心をキャッチした。

また、番組内において、岐阜県・飛騨高山にある実家が有名ラーメン屋「豆天狗」であることが発覚。それ以降、トミタが生まれ育った土地や、幼い頃から食べてきたラーメンを求めて、今も多くのサクサカーが飛騨高山を訪れている。現在は、アーティスト活動を続ける一方、タレントとしても絶賛活躍中。

6代目MCは、沖縄からやってきたバンド『7!!』のボーカリスト・NANAE。キュートな笑顔と、沖縄ワールド全開のトークが魅力で、初代ポンモップ(カンカン)と、あゆみくりかまきが中堅スタッフとして出演した「カシカシ」一期に引き続き、二代目ポンモップ(鈴木啓太)と、さわやか五郎がフロア・スタッフを務めた「カシカシ」二期のMCを見事にやり遂げた。

コントを披露するコーナーでは、何かが憑依したような鬼気迫る演技でサクサカーをざわつかせ、アーティストならではの切り口でゲストに質問する姿が印象深い。また、イラストを披露するコーナーでは、まるでおばさんのような自画像を披露し、意外な一面も見せた。

そして、メインMCではないが、トミタとNANAEの「カシカシ」時代を共に支え続けたあゆみくりかまきも忘れてはならない。毎週3人でオリジナルコントを披露したほか、体を張った実験コーナー「あゆじろう先生の実験コーナー」で爆笑させてくれたあゆみ、「くぅ散歩」のロケで「またぎ」(あゆみくりかまきのファン)の聖地を増やしたくりか、視聴者の悩みを解決する「まっちゃんの人生相談してくまさ~い」や、結局米の収穫までにはいたらなかった「まき田んぼ」など、それぞれの個性で番組を盛り上げた。現在は「熊仙人様からのお達し」によりクマから人間の姿となり、全国各地でパワフルなライブ活動を続けている。

歴代マペットと操縦士

そして『saku saku』において重要なファクターが、マペットとその操縦士。あかぎあい時代~カエラ時代中期までを「増田ジゴロウ」(Ver.1.0/2.0/2.5/3.0)が、カエラ時代中期~「屋根の上」終了までを「白井ヴィンセント」(初代/YK-150型/3代目ヤマブキカラー)が、「カシカシ」では「ポンモップ」(初代/2代目)が登場し、時代と共にバージョンアップを重ねてきた。中には口が開きすぎるという理由で2週間で変更されたレアなジゴロウ「Ver.2.5」も存在した。

そして、マペットを操る操縦士としては、「屋根の上」時代を支えた黒幕、「カシカシ」では、ガヤ芸人としても活躍したカンカンと、そして番組ラスト1年を上々軍団・鈴木啓太が担当。13年間マペットを操縦し続けた黒幕の、毒舌キャラから次々と繰り出されるガンダムや戦国武将トーク、そしてアーティストのプライベートを巧みに引き出す話術に魅了され、「黒幕こそ『saku saku』だ」と、「カシカシ」シリーズ突入後、番組を見なくなったサクサカーも残念ながら多かったようだ。しかし、2代目操縦士・カンカンと3代目操縦士・鈴木啓太も、黒幕が去った後のプレッシャーを感じつつも、芸人ならではの軽快なトークと、独自のコーナーで新生『saku saku』を盛り立て、新たなサクサカーを獲得し続けた。