ANAグループは4月1日、ANA羽田空港 機体メンテナンスセンター格納庫にて2017年新入社員のグループ合同入社式を実施した。今年は過去最高となるグループ36社2,799人(男性717人、女性2,082人)が入社。ANAホールディングス代表取締役社長の片野坂真哉氏は、社長就任3年目となる2017年度においても、第一に「安全が全て」であることを社長挨拶で述べ、ANAグループに集った"新しい力"を激励した。

ANAグループにとって過去最大となる2,799人の新入社員を迎える

経験から学ぶ、ができない絶対ルール

入社式は、ANAグループの有志による「チーム羽田オーケストラ」の演奏で開会。その後ろには、東京2020に向け、JALと共同で「東京2020大会」エンブレムのデザインをあしらった特別塗装機ボーイング777-200(J745A)が控えていた。

ANAグループの有志による「チーム羽田オーケストラ」

「東京2020大会」エンブレムのデザインをあしらった特別塗装機ボーイング777-200(J745A)

朝から冷たい雨が降り続け、格納庫の中はまた冬を思わせるような寒さに。片野坂氏の代表講話はこの雨になぞらえ、雨が降ろうとも飛び続けなければいけない航空業界の厳しさとともに、「安全が全て」という言葉を3度も繰り返し、その言葉がもつ重みを新入社員一人ひとりの胸に刻んだ。片野坂氏が「安全が全て」であることを、声を大にして伝えるには理由がある。

ANAホールディングス代表取締役社長の片野坂真哉氏

「今年は、過去に全日空機と自衛隊機が衝突墜落した雫石事故から46年目、松山沖事故、羽田沖墜落事故から51年目の年です。いずれもお客さまと乗員全員の尊い命が犠牲になりました。雫石事故以来、幸いにもこうした大きな事故を起こさずに今日に至っています。

お客さまの命が無事であればいい、というもとでは決してありません。高知空港でのボンバルディア機の胴体着陸から10年になります。冷静に着陸を果たし、お客さまにけが人がひとりも出なかったことは、不幸中の幸いでした。私たちは、当該便に乗り合わせたお客さまに、大変な恐怖、ご心配、ご迷惑をおかけしました。ご家族はもとより、いつも航空機をご利用いただいてきた地元のみなさまのみならず、全国のお客さまにご心配とご迷惑をおかけしました」。

こうした過去の事故を社長挨拶で話す理由は、片野坂氏を含め、現役の役員・社員の中で、乗客が犠牲となる大きな経験をしたものがいなくなっている現状を踏まえてのことだ。

「人間の鍛錬において、経験を重ねることが大切だとよく言われていますが、航空機の事故に関しては、それは当てはまりません。われわれの先輩たちは、過去の事故を常に忘れることなく、犠牲者のご冥福を祈る気持ちを全グループ社員で共有し、事故の原因の改善に学び、そして絶対に事故を起こさないというという信念のもと、全員で努力してきました」。

「私たちの仕事は究極のチームワーク」

また、講話の中では一般から寄せられた声も紹介された。その声は、初めて東京でひとり暮らしを始めることになった女性の母親からあったものだという。空港で泣きながら見送る娘に別れを告げ、涙をこらえて搭乗した後、CAからとある袋が母親にプレゼントされた。その中にはポストカードと飴が入っており、娘からの20年間の感謝の言葉が記されていたという。

これは空港で2人の姿を見かけたANAスタッフが、娘に「プレゼントをしませんか」と声をかけたことがきっかけだったらしく、やや乱れた字からも、急いでいたことが分かるものだったという。これはマニュアル化されているものではなく、一人ひとりの気づきで始まり、いろんな人の手を介して、機内の母親に手渡されたものだ。「私たちの仕事は究極のチームワークであり、一人ひとりにある"個性"や"多様性"を互いに尊重していくこと、それぞれが自己ベストを発揮できることを期待している」と話した。

片野坂氏の講話を受け、新入社員2,799人を代表し、ANAグローバルスタッフ職の床亜矢可さん(22歳)が登壇。彼女はJOCが行っているトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」を通じて採用され、女子アイスホッケーの日本代表に選ばれている。女子アイスホッケーは2018年の冬季オリンピック(平昌)にも出場が決まっている。

ANAグローバルスタッフ職の床亜矢可さん(22歳)

「これまで支えていただいた多くの方々への感謝の気持ちを、目の前に広がる未来への期待を胸に、社会人としての第一歩を踏み出します。特に3年後に開催される東京オリンピック・パラリンピックでは、世界各国から多数のお客さまがいらっしゃいます。そのような夢の舞台でどのような挑戦ができるのか、私たちANAグループの一人ひとりが考え、今日から準備を始めます。多様性のあふれる世界のリーディングエアラインとしての飛躍を目指し、私たちがANAグループに新しい風を吹き込みます」と決意表明を行った。

「人材こそ究極の差別化、競争力の源泉」

また同日、ANAが英国・スカイトラックス社が運営するワールド・エアライン・レーティングにおいて、2013年から5年連続で世界最高評価となる「5スター」を獲得。スカイトラックス社は空港から機内サービスの800を超えるカテゴリーにおいて、利用者が"5つ星レベル"のサービスを体感できる航空会社のみを5スターに認定している。

特にANAが認定された点に関して、スカイトラックス社は「ANAはお客さまを常に最優先においていること、それは、お客さまを満足させることを意味しています。サービスの品質が一貫していいことや、ご利用されるお客さまが旅、あるいは移動する間に、常にお客さまの体験をいいものにしようという取り組みを、特に高く評価しています」とコメントした。

英国・スカイトラックス社より5年連続での5スターを受賞

現在、5スター認定を受けているのは、ANAが日本で唯一であり、世界でも9社(ANA、アシアナ航空、キャセイ・パシフィック航空、エティハド航空、エバー航空、ガルーダインドネシア航空、海南航空、カタール航空、シンガポール航空)のみとなっている。

5スター表彰式には、1日付でANAの代表取締役社長に就任した平子裕志氏が登壇。「今回の賞はANAだけではなく、ANAグループの成果に与えられたのではと思っています。5年連続で獲得できたことは、私たちにとって本当に大きな自信になります。特に空港、機内のクオリティーに対して高い評価をしていただけたことは私にとっても誇りです。

スタッフの質というものは人材そのものであります。人材こそ究極の差別化、競争力の源泉であります。今日ここに集う2,799人も、来年も再来年ももっと先も、ANAを5スターにしたいと思ったのではないでしょうか。私も今日から社長になったわけですが、このタイミングで5スターをいただいたことの意味を深くかみしめて、ここにいるみんな、そしてANAグループ全員で、絶え間なく前進していくANAグループをつくっていくことをここに誓います」と述べた。

ANAの代表取締役社長に就任した平子裕志氏

ANAの入社式では、その年で異なるメッセージがデザインされた入社式限定デザインのタオルを、新入社員一人ひとりにプレゼントしている。この日、全2,799人の2017年度新入社員は、片野坂氏や平子氏等とともに、「To be the world's leading airline group!! 」と記されたタオルを握りしめていた。

2017年度の想いは「To be the world's leading airline group!! 」