名古屋メシとして名高い「味噌カツ」。ボリューム満点のカツの上に、どろっとした味噌ダレをかけて味わう一品は、多くの人に愛されている。しかしお隣三重県にも、「三重発祥」の一味違う味噌カツがあることを、ご存知だろうか。

津市の「カインドコックの家 カトレア」は、洋食への愛あふれるシェフが営むレストラン。味噌カツの誕生秘話からメニューへの思いまで、その繊細な味わいとともに紹介しよう。

さらっとしたソースが特徴の三重発祥「味噌カツ」

日本人に親しまれる洋食を

三重で生まれた味噌カツは、1965年に同店を開業した谷一明さんが考案したもの。戦後、まだまだ洋食店が珍しかった時代、「日本人に親しまれる味を提供したい」と考え、カツレツのソースに味噌を取り入れたのが、きっかけだったという。

三重の味噌カツを考案した谷一明さん

同店は、味噌カツの専門店ではない。オムライスやビーフカレーなどを味わうことができる老舗の洋食店であり、BGMにはジャズやボサノバが流れる。昼過ぎには喫茶を楽しむ客の姿も多く見られ、まさにくつろぎの空間が広がっているのだ。

おしゃれな雰囲気の店内

三重の味噌カツは洋食の中に溶け込んでいた

そんな店内でオススメとして提供されたのが、「みそカツスペシャル」(1,200円)。味噌カツとサラダ、それにライスかパンが付いたシンプルなセットメニューとなっている。

「みそカツスペシャル」(1,200円)

「ソースは裏方でないといけない」と語る谷さん。カツのうまみを引き立たせることを重視したブイヨンベースのソースは、予想以上にさらさらだ。

さらさらのソースをかけると、食欲をそそる香りが広がる

また名古屋メシのそれとは違い、カツレツの薄さも特徴的。約120gというカツレツは、衣も細かく、ソースがいい具合にしみこんで、しっとりとしている。

早速一口食べてみると、味噌が入っているとは思えないほどさっぱりとした味わいに驚く。しかし、カツをかみしめていくうちに、ほのかに感じる味噌とカツのうまみが合わさって、えもいわれぬ幸福感に満たされるのだ。

ソースがしみこみ、しっとりとした衣が味わい深い

ソースは、カツに添えられているスパゲティにつけても、また美味。たださりげなく出されているように見えるサラダも、口の中をさっぱりと整えてくれる控えめな脇役として、活躍してくれている。

味は濃すぎず薄すぎず、量も多すぎず少なすぎない。デミタスコーヒーでしめれば、口の中もお腹の中もちょうどよく落ち着き、とても油物を食べた後とは思えない、食後感だ。

デミタスコーヒーには、ドライアイスで冷やされたフレッシュもついてくる

「洋食の中に溶け込んでいる味噌カツだと思っています。おいしい料理は心の栄養です。ぜひ味わってみてください」。一般的なイメージとは、かなり異なる風貌と味わいの三重の味噌カツ。しかしそのメニューからは、谷さんの洋食に対する真摯な姿勢が垣間見える。

カインドコックの家 カトレア

●information
カインドコックの家 カトレア
住所: 三重県津市上弁財町17-108-1
アクセス: JR阿漕駅から徒歩15分
営業時間: 9時~20時20分
定休日: 金曜日

※記事中の情報・価格は2017年2月取材時のもの。価格は税込