トレンドマイクロは3月29日、2017年の法人向け事業戦略発表会を開催。この中で、同社 取締役副社長 大三川彰彦氏は、2017年は「XGen」と運用・監視サービス「マネージドセキュリティサービス(MSS)」に注力すると語った。

トレンドマイクロ 取締役副社長 大三川彰彦氏

「XGen」は、不正プログラム対策、IPS/IDS、ファイアウォールといった既存のセキュリティ技術に加え、AIによる機会学習によって、これまでの技術では対応できなかった新たな脅威にも対応していくという、互いが補完しあう(それぞれの世代の技術を融合するクロスジェネレーション(XGen))アプローチだ。

同社 代表取締役社長 兼 CEO エバ・チェン氏は、「セキュリティはハッカーよりも早い変化が必要だ。インフラの変化にともなって、ユーザーの行動も変わっており、驚異も変わっている。現在は毎日50万以上の脅威が新たに発見され、ビジネメール詐欺の攻撃が増加し、米国での平均被害額は14万ドルにもなっている」と被害が拡大する現状を訴え、専門家(既存技術)の視点にAIによる機会学習の視点を加えることで、送信者偽装、送信経路、メールサービスプロバイダなど、挙動の部分でより広範囲な脅威に対応できると、XGenのメリットを訴えた。

トレンドマイクロ 代表取締役社長 兼 CEO エバ・チェン氏

そして、XGenでは今後、これまでのAIに加え、挙動検知、サンドボックスとの連携などの新技術も活用し、新たな脅威に対応していくという。

同氏はXGenについて、「専門家(既存技術)と機会学習にの両方によって、ハッカーの可能性が高いかどうかがわかる。新しい技術によって、新しい脅威に対応していく」と語った。

既存技術(水色)で対応できない脅威を、AI(赤)、挙動検知(黄色)、サンドボックス(オレンジ)で対応

チェン氏は、XGen(X)のアプローチは「X=I+U-T」で表現できるとした。IはInfrastructureを意味し、ITインフラの移行(最新のインフラ)にいち早く備えること、UはUser Behaviorを意味し、ユーザーの行動の変化を受け入れることで、これらによって、T(threats:脅威)を減らすことができるという。

XGenの方程式

チェン氏は「戦略は敵によって変える必要がある。サイバーセキュリティにおいては、『これだ』という戦法がない、成功のアプローチはクロスジェネレーションだ。脅威に応じて対応していく必要がある。これはわれわれの鉄の方程式だ。われわれはこれまで、ビジョン先行で成功してきた」と、変化にいち早く対応することが自社の優位点である点を強調した。

同社はクラウド、ネットワーク、エンドポイントの3つのレイヤで防御し、それぞれのレイヤの製品をXGen対応を進めていくとともに、他社製品との連携を深め、最適化を図っていく。また、それぞれのレイヤの製品連携も進めていくという。

大三川氏は「新しい技術をもった企業と提携し、POC(概念立証)を行っていく」と語った。

他社製品との連携による最適化

クラウドレイヤでは、AWS、vmware、Microsoftとアライアンスパートナーを組み、VMware NSXやコンテナ等の新技術の連携を行うほか、ネットワークレイヤでは、アルプス システム インテグレーション、デジタル・アーツ、日立ソリューションズなどのWebフィルタリング、ネットワーク検疫等のソリューションと連携。

クラウドレイヤでの他社連携
ネットワークレイヤでの他社連携

エンドポイントレイヤでは、同社の2017年のもう1つの注力ポイントであるマネージドセキュリティサービス(MSS)分野で、パートナーとの連携強化を行う。

具体的には、大塚商会、CEC、NJC、リコーなど、運用・監視パートナーと協業し、セキュリティサービスをSaaSで提供するという。

エンドポイントレイヤでの他社連携

XGEN対応は、すでに「Trend Micro Deep Security 10」「ウイルスバスター コーポレートエディション XG」などで開始されているが、今後は他の製品にも広げていく。

予定も含めたXGen対応製品

そのほか、関心が高まりつつあるIoT向けでは、ホームネットワーク、自動車、工場向けの3つの領域でソリューションを提供していくという。

ホーム向けには、家庭内の複数のスマート家電をまとめて守るホームネットワークセキュリティ製品「ウイルスバスター for Home Network」を既に提供しているが、今後は、通信事業者と協業しセキュリティを付加したインターネットサービスを提供。また、ルータなどを提供するネットワーク機器ベンダーに、ネットワークレイヤで保護するセキュリティ技術「Trend Micro Smart Home Network」をOEM提供するという。

自動車向けでは、ソフトウェア開発キット(SDK)を含むIoT機器向けセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security」を、自動車/車載機器メーカーに提供。

工場向けでは、工作機械や産業用ロボットを提供するメーカーに対して、ネットワーク型脅威対策製品「Deep Discovery Inspector」、ロックダウン型ウイルス対策ソフト「Trend Micro Safe Lock」、「Trend Micro IoT Security」を提供し、セキュリティを組み込んだ製品を提供するほか、PLC、EWS、FAユニットなどを用いて産業用システムを構築する制御系システムインテグレーターと協業し、ネットワークセキュリティ製品「TippingPoint」、総合サーバセキュリティ対策製品「Trend Micro Deep Security」などのセキュリティソリューションを提供するという。

IoT向けの取り組み