一時は衰退の兆候が顕著だった国産スポーツカーだが、車種は徐々に増えつつあり、本田技研工業の「NSX」やモデルチェンジしたマツダ「ロードスター」が話題を呼ぶなど、ここ最近は近年まれに見る充実ぶりだ。中でも、レクサスを含むトヨタ自動車の力の入れ具合は注目に値する。しばらくは“走り”で売るようなクルマから遠ざかっていた印象の同社だが、なぜ今、スポーツカーに力を入れるのか。

レクサス「LC500h」

話題が尽きないスポーツカー業界

ピークだったバブル末期から徐々に衰退し、2002年8月に日産自動車「スカイラインGT-R」やマツダ「RX-7」、トヨタ「スープラ」といった280ps勢や日産「シルビア」が一気に終焉を迎えるなどして、しばし停滞期に入った日本のスポーツカー業界。そんな中でも、かねてからしのぎを削っていた三菱自動車工業「ランサーエボリューション」とスバル「インプレッサWRX」や、マツダ「RX-8」のようなユニークなニューモデルの登場など、興味深い話題がなかったわけではない。

センセーショナルだったのは、やはり2007年に相次いで登場した「GT-R」とレクサス「IS F」だろう。さらに翌2008年には日産「フェアレディZ」がモデルチェンジし、2010年には価格3,750万円、限定500台のレクサス「LFA」が発売された。

2012年にはトヨタ/スバル「86/BRZ」が発売。手頃な価格とパワーでとっつきやすいFR車に多くのスポーツカーファンが色めきだった。その後、2014年にはレクサス「RC」、2015年にはホンダ「S660」の登場と「ロードスター」のモデルチェンジ、2016年には「GT-R」のビッグマイナーチェンジや「NSX」の復活とスポーツカーのニュースがつづき、2017年春にはレクサス「LC」の発売を迎えた。

マツダ「ロードスターRF」(左)とホンダ「NSX」

レクサスが充実、高まるトヨタの存在感

本稿執筆時点において、「NSX」、「LC」、「GT-R」、「RC」、「フェアレディZ」、「86」および「BRZ」、「ロードスター」、「S660」、ダイハツ工業「コペン」があり、ほかにスバル「WRX」やスズキ「スイフトスポーツ」など、実用車ベースのスポーティモデルも入れると、国産スポーツカーはここしばらくなかったほどの充実ぶりとなっている。そして、まだ車名は断定できないが、トヨタは「スープラ」を復活させると見られる。2017年秋の東京モーターショーあたりでなんらかの大きな発表がありそうだ。

ところで、今の国産スポーツカーのラインアップを見渡して印象的なのが、レクサスを含むトヨタの力の入れ具合だ。長らくスポーツカーらしいスポーツカーなど皆無だったトヨタが、なぜ一転して注力するようになったのだろうか。