後天的なてんかんも
社会的に広く病名を認知されていながらも、その症状の実態まではあまり知られてない疾病は数多くある。脳の病気の一種・てんかんもその一つではないだろうか。てんかんが原因とみられる交通事故が折に触れて報道されることもあり、この名前を一度は耳にしたことがある人も多いはずだ。
先天性のてんかんも多いが、脳のほかの病気がトリガーとなり、後天的にてんかんを発病するケースもある。そのため、今現在発病していない人にとっても、決してひと事ではない。
本稿では、高島平中央総合病院脳神経外科部長の福島崇夫医師の解説をもとに、てんかんとはどのような病気で、何が原因で発病するのかを紹介する。
てんかん発作を繰り返す病気がてんかん
てんかんとは、脳のニューロンに突如として発生する激しい電気的な異常興奮によって現れるてんかん発作に伴い、さまざまな症状を呈する臨床疾患群のことを表す。
ニューロンは普段、規則正しいリズムで活動をしているが、このリズムが突如として乱れることによって発作が起きるという仕組みだ。そして、てんかん発作は通常繰り返し起きるため、頻繁に発作が起きて初めててんかんと診断される。
てんかんの特徴の一つに、てんかん発作時の症状が実に多岐にわたるということがあげられる。また、てんかんにはさまざまな分類法がある。以下に発作型分類に基づき代表例をまとめたが、これら以外にも複数のてんかん発作がある。
強直(きょうちょく)発作……突然意識を失い、歯を食いしばって両脚が固まるといった症状を呈し、強直したまま倒れこむケースもある。個人差はあるが、症状は数秒から数十秒ほど続くのが一般的とされている。
間代(かんたい)発作……ひざを折り曲げる格好をとり、手足をガクガクと曲げたり、伸ばしたりするけいれんが起きる。
強直間代(きょうちょくかんたい)発作……強直発作と間代発作が起こるタイプ。意識を失い全身が硬直する強直発作に続き、手足のけいれんが現れる間代発作が起きる。
欠神(けっしん)発作……一定時間にわたり意識が消失するといった症状が出る。個人差があるが、消失時間は数十秒ほどとされている。小児に多い発作とも言われており、頻繁に発作が起こると「集中力に欠ける」などと思われてしまう可能性もある。
複雑部分発作……徐々に意識が減衰していき、周囲の状況がわからなくなるような意識障害がみられる発作。上述の欠神発作やこの複雑部分発作のように意識の減衰および消失を伴うてんかん発作は、交通事故を招きやすい。