ベトナム航空は3月26日より、羽田=ハノイ線にエアバスA350-900を投入した。同社は2015年にアジア初となるA350 XWBを導入し、現在、6機のA350 XWBを運用。羽田=ハノイ線には、3月に受領したばかりの機材が投入されている。今回、羽田線で導入を開始したベトナム航空A350 XWBの機内サービスを紹介しよう。

A350 XWBの特徴のひとつがその面構え。サングラスをかけているようなデザインはA350 XWBのみとなる

燃費効率25%向上、快適性にも抜かりなし

ベトナム航空がA350 XWBを発注したのは2007年のこと。ベトナム航空はカタール航空に続いてA350XWBの世界で2番目の運航会社であり、アジアの航空会社では初の運航となる。

羽田にA350 XWBが乗り入れるのはシンガポール航空(2016年12月13日より、羽田=シンガポール間)に続いてベトナム航空で2社目となる。また、ベトナム航空が日本路線にA350 XWBを投入するのは、関空=ホーチミン線(2016年10月30日から)に続いて2路線目となる。羽田=ハノイ線に続き、6月には関空=ハノイ線への導入も予定している。

ベトナム航空はアジアの航空会社では初のA350 XWB運航会社

A350 XWBの特長として、軽量で腐食や疲労に強い炭素繊維強化プラスチック複合材(CFRP)が全体の53%を占めており、エンジンにはロールスロイス社製の新型エンジン「トレントXWB」を採用。777に比べて燃費効率が25%向上しており、運航コストを削減できた分、運航会社は機内サービスにコストをかけるなど、サービス向上を図ることができるようになる。

先端が大きくカーブさせることで燃費効率が高まる

また、騒音レベルは787より6dB静かになっており、1,670万種類のライティングができるLEDを使用することで、時差ぼけを和らげる照明を自動で展開可能。そのほか、低めの機内与圧設定や空気清浄フィルター・オゾン除去機能、2~3分ごとに機内の空気を総入れ替えするなどの快適性にもこだわっている。

ベトナム需要に応えて大型化

羽田=ハノイ線には今まで、A321(ビジネスクラス16席、エコノミークラス162席、合計178席)を導入していたが、A350 XWBに切り替えることで座席数が305席(ビジネスクラス29席、エコノミークラス276席)に増加する。なお、7~8月頃にはA350 XWBにプレミアムエコノミーを45席、搭載することを予定している。

6月からは関空=ハノイ線にもA350 XWBが導入される

同路線の大型化は、日本人のベトナム渡航者数が2015年では67万1,379人だったのが、2016年では74万592人と成長率が10.3%増(ベトナム政府発表統計より)になっていることを受けてのこと。現在、ベトナム航空でも自社便で65便/週(2017年3月現在、共同運航便を含めると86便/週)で、羽田・成田・中部・関空・福岡と5つの空港から路線を展開している。

A350 XWBによる羽田=ハノイ線の初便となった3月26日は、搭乗者数は225人(内、ひとりは乳幼児)。初便限定で、特別デザインのトートバッグとベトナム産カカオのみで作られたチョコレート「マルゥ」がプレゼントされた

A350 XWBの導入を始めた羽田=ハノイ線では、VN385(16:35羽田発/20:20ハノイ着)とVN384(08:15ハノイ発/15:05羽田着)を毎日運航。フライト時間は7時間程度で、日本国内には夕方に出発・到着となるため国内線に乗り継ぎやすく、ビジネス利用での利便性も高いと言えるだろう。機内では夕食または軽食が提供される。

いざ、機内の中へ。2015年7月からクルーの制服であるアオザイは、鮮やかなグリーンとイエロー(パーサー着用)に変わった

ワインやパンにもこだわりあり

ベトナム航空のA350-900は、ビジネスクラスとエコノミークラスの2クラス設定。ビジネスクラスは1-2-1配列の29席仕様で、どの席からも直接通路にアクセスできる。4時間以上のフライトでは、リップバームや保湿クリーム、スリッパ、歯ブラシなどが入ったアメニティキットも用意している。

ベトナム航空のA350-900のビジネスクラス

ビジネスクラスにはアメニティーを用意

シートピッチは106.7~111.7cm、シート幅53.3cm。広々とした足元スペースも確保し、ボタンひとつでフルフラットシートになる。角度調整ができる15.4インチのプライベートモニターを備え、いろんなところに収納スペースを確保しているのも特長のひとつ。ビジネス利用者にも便利な、収納できるデスク、USB電源ポート、ハンガーラックなども備えている。

ビジネスクラスのサービス一式

機内食は洋食と和食から選べるようになっており、メインもまた、2種類からチョイスが可能。メニューは2カ月ごとに刷新される。ベトナムの老舗陶磁器メーカー・ミンロン製の食器は、蓮の花をイメージしたデザインでベトナムらしさを演出してくれる。

ビジネスクラスで3~4月に提供されている洋食の前菜

洋食のメインはビーフフィレとココナッツカレーから好きな方を

ビジネスクラスで3~4月に提供されている和食の前菜

和食のメインは鶏の煮込みとヒラメの煮込みから好きな方を

また、機材がA321からA350 XWBに大型化したことで、クルーが機内で機内食の最後の仕上げもできるようになったという。焼きたてのパンにもこだわっているあたり、さすがフランス文化が息づく国・ベトナムのフラッグシップである。

パンは3~4種類。「これください」と言っても、「これもオススメだからどうぞ」と多めにパンをくれることも

料理もさることながら、注目なのはワイン。フランスから直接仕入れた赤・白それぞれ2種類ずつ用意しており、日本で購入できないものも多い。スカイチームのメンバーからも「ベトナム航空のワインはなかなかいいものを出している」と評判だと言う。ベトナムのバーテンダーが特別に用意したシグニチャーカクテルもあるので、どんな味か気になる人はクルーに聞いてみるといいだろう。

なお、自由に食べられるミールとして、ベトナムの人々から愛されているエースコックのインスタントラーメンも用意している。しかし、たくさんの料理でお出迎えをするというベトナム文化にならった機内食は量が多く、「正直、このインスタントラーメンをお求めになるお客さまは多くないかもしれませんね」とベトナム航空のスタッフも言う。

他にも、スイーツからフルーツ、チーズまで、豊富に取りそろえている

ベトナム気分を高めてくれるドリンクも

エコノミークラスは3-3-3配列で、シートピッチは78~81cm、シート幅は41.4cm。通路を挟んで席が一列になるのではなく、左右と中央をずらして配置することで、視覚的なプライベートにも配慮している。

ベトナム航空のA350-900のエコノミークラス

エコノミークラスも洋食・和食の2種類から選ぶ。ビジネスクラス同様、日本のビールのほか、333(バーバーバー)やハリダなどのベトナムのビールも取り添えており、食後にはベトナムコーヒーや蓮からつくるロータスティーを楽しむことも可能だ。

エコノミークラスで3~4月に提供されている洋食

エコノミークラスで3~4月に提供されている和食

日本路線にA350 XWBが乗り入れている航空会社はまだ少ないものの、A350 XWBのデリバリーは続々と行われている。世界のA350 XWB事情を見てみると、2月にルフトハンザ ドイツ航空が導入を開始し、デルタ航空も今秋導入を予定している。3社目となる羽田就航はどの航空会社になるのか、待ち遠しいばかりだ。

手荷物棚には手前にミラーが付いている

ラバトリーに一輪の花

ベトナム航空だからこそできるA350 XWBのサービスがここにある