間もなく新年度。新しい道へ進む方々は、不安と期待の入り混じる気持ちで過ごしている時期かもしれない。そんな時は、その道の先輩からのアドバイスが役に立つだろう。今回は実績ある二人の先輩をお招きし、ご自身の経験と共に新大学生・新社会人に向けてのメッセージを語ってもらった。

仲山進也さん

一人は社会人の先輩として、楽天株式会社で唯一のフェロー風正社員(兼業フリー・勤怠フリー)、楽天大学の学長であり、ご自身の会社・仲山考材株式会社 代表取締役でもある、仲山進也さん。最近はさらに横浜マリノスのプロ契約(プレーヤーではない)も加わったという、自由な働き方を体現したような方だ。

仁井隆世さん

もう一人は大学生の先輩として、慶應義塾大学 法学部政治学科4年の仁井隆世さん。学生時代はNPO法人AIESEC Japanの副代表を務め、海外でのボランティア活動やインターンを経験。新年度からは大手自動車メーカー勤務という、新入生がぜひ見習いたい学生生活を送った方だ。

お二方ともMacユーザーということで、お仕事や学校の話も聞きつつ、新生活でのデバイスの活用法についても参考になるお話しを聞いていきたい。

最近の大学生がパソコンを使わないって本当ですか?

――本日はお時間をいただきましてありがとうございます。今回は、新年度からの新社会人・新大学生に向けて、先輩というお立場から……

仲山 「それより、さっき(取材開始前)の続きで、今の大学生がどれくらいパソコンを持っているのか聞きたいんですけど」

――え、えっと(予定が……)

仁井 「パソコンを持っている割合でいうと100%に近いかなと思います。というのも、提出する課題やゼミでの発表なども全てパソコンがないとできないというか、持っている前提で課題が出たり、プレゼンテーションを求められたりするので。僕は授業のノートにEvernoteを使っていました。板書も写真を撮っていいので、ここ重要だよと言われたらカシャカシャとあちこちで音がするんです。僕の場合は撮ったらSkitchというアプリで切り抜いて貼り付けて解説をつけたり、そのノートを共有したりしていましたね」

――板書はスマホで写真ですか!(もう面白いのでその話でいいです)

仁井 「はい。もっと先へいくと就職活動の志望理由書や履歴書も、基本パソコン経由で提出するので。パソコンを持っていないことが致命的にもなり得えると思います」
仲山 「スマホからだとエントリーシートも書きにくそうだよね」
仁井「そうですね。それに、添削もパソコン経由でOBの方にお願いするので、パソコンがない大学生活は想像できない状態になっていますね」

――履歴書は手書き必須というのはもう過去の話なんですね。

仁井 「そうです。なので、OB訪問をした時に封筒で送った時代があったと聞いてびっくりしました。履歴書の写真も、撮影しに行ったらCD-ROMでデータをもらうのが大事で、(現像した)写真は使わないという。合否も基本メールで来ますし、本当にパソコンがないと困ります。授業の課題も全部パソコンなので、4年間が全部ここに詰まっている感じですね」

――仲山さんが大学生の時には、パソコンはお使いでしたか?

仲山 「僕は卒論を書くためにワープロを買いました。ただ、高校の時から家にパソコンはありました。ゲーム機として(笑)。麻雀をやりながら、AからNまでのキーの場所を覚えました。だからO以降がちょっとわからないという……」
仁井 「あの、ワープロってなんですか?」
仲山 「ワープロってなんですか?! 衝撃の質問!」

――(時間の重みを感じました……)

Macとの馴れ初めとお付き合いを詳しく

――仲山さんが初めてMacを使ったのはいつでしたか?

仲山 「最初に大手電気機器メーカーに就職したんですけど、コピー機を作っている部署の本部長室に配属になり、そこで経営計画を出す際にいろいろな部署から上がって来たデータを資料にまとめるという作業がありました。フロッピーで届いた文書をプリントアウトして、それを見ながら部署に1台だけあったMacを使って、Drawという今のKeynoteに近いようなソフトでキレイに打ち直すという(笑)。その時に初めて使いました」

――Macはその作業専用に置かれていたんですか?

仲山 「ほぼそうでしたね。先輩方はもっとちゃんと使っていたのかもしれませんけど。その頃のMacさんはけっこうすぐに緊張するタイプで(笑)、cmd+S(保存)を1分置きくらいに押すクセがついていた思い出があります。その印象のおかげで、4~5年前くらいにMacを勧められた時も最初はややためらいがありました」

――ご自分で買って使い始めたのはそれがきっかけで?

仲山 「起業したばかりの先輩のオフィスに遊びに行って、話しているうちにお手伝いをすることになり、ちょくちょく通うようになったんですけど、そこの人が全員Macを使っていたんです。そうしたら『仲山くんもMacにしなよ。Macいいよ~』と楽しそうに言われて。何がいいんですか? と聞いても『いいよねぇ(ニコニコ)』と言うだけで教えてくれないんですけど(笑)、じゃあMacにしてみようかと。分からないことがあればすぐにその人たちに聞けるという入りやすさもあったので」

――勧められた勢いだったんですね。実際にお使いになってみていかがでしたか?

仲山 「すごく使いやすいです。最初はキーが少し違うとか、トラックパッドの使い方で戸惑いましたけど、やっているうちに慣れてきて。周囲にWindowsが多い環境でも、WordやPowerPointを入れておけばそんなに困ることはないですね。このMacBook Air(13インチ)が2台目です。バッテリーがずいぶん長持ちするようになって、すごく助かっています」

――仁井さんはそちらのMacBook Air(11インチ)が最初のパソコンですか?

仁井 「はい、1年生の4月に購入しました。その前は自宅や学校にあった、黒くて分厚いラップトップを使っていたんですけど、大学に入ると先輩がこの形のものを持っていて、それがカッコいいなと思ったのが入り口だったと思います」

――学校ではMacをお使いの方は多かったんですか?

仁井 「多いですね。逆に、普通のパソコンを持っている人の方が少ない印象で、充電器を忘れて困ったことがありませんでした」

――校内ではWi-Fiが使えるんですか?

仁井 「はい、三田キャンパスもSFCも同じネットワークで、毎年パスワードが変わるので新年度にはケータイもパソコンもそこに繋がるように設定します。ただ、どうしても電源の整った教室が少なくて、400人の大教室に6個しかないこともあります。授業が1時間半あるので1つは持っても2つ目はだいぶ厳しくなるので、昼休みを挟む授業ならその前から席を取っておいたりして、工夫しながらやっていましたね」

――iPhoneとの連携を意識してお使いになることはありますか?

仲山 「逆に、連携させようと思わなくても勝手につながってくれるのがすごく便利ですね、パソコンの設定が苦手な人にとっては。特別意識することなく、Macを広げていない時はiPhoneで、という感じです。ただ、iPhoneのカレンダーを見て点がないから空いていると思って予定を入れてしまったら、次の日が出張で前日中に移動しなくてはならなかったということがあったので、スケジュールのやり取りをする際は極力Macで見るようにしています。全体を俯瞰できるのは大事ですね。長い文章を書くときなども、この(Macの)画面だけではちょっと狭いなと思うことがあるので、大きなモニターに繋げています」
仁井 「僕も、家にはもう一つスクリーンがあって、両方行き来できる形で資料作りなどをしています」

――使いこなしていらっしゃいますね

仁井 「そうですね、上手くやっていくためには使いこなさなきゃいけない環境になりつつあるので、みんな頑張って駆使しています。ゼミの打ち合わせで他の人の使い方を見て真似してみたり、前の席の人が使っているツールが便利そうだなと思ったら試してみたり。出られなかった授業のノートをEvernoteで共有することもよくありました」
仲山 「僕は、使いこなしているかと言われたらMacでできることの数%しか使えていないと思うんですけど、最近使い方が固まってきた気がするので、他の人がどうやって使っているのかを知りたいですね」

新生活に役立つ話もお聞きしておきたい

――最後に(強引ですみません)、これから新社会人・新大学生になる方々にアドバイスをいただけますでしょうか。

仲山 「さっき俯瞰するという話をしましたけど、使っているデバイスによって思考が変わる、見え方・考え方の傾向がある気がします。日頃、スマホでLINEなどのメッセンジャーを使っていると『私のこと知っているよね』という前提がありすぎて、メールを出す時に名乗らない、というのも画面の大きさが影響している部分があるのだと思います。長い文章を書く時にも、こことここがつながる、これと入れ替えるといった大きな流れが、画面の狭いデバイスでは見えにくい。作るもののクォリティも変わってくるので、今自分がやりたいこととそのデバイスの相性が合っているのか、考えてみる視点は大事です。自分が慣れているものにこだわって食わず嫌いをする必要はないと思います」

――同じデータにいくつものデバイスがつながる今だからこそ、考えたいポイントですね。

仲山 「それと、モノの選び方もけっこう大事だと思っています。Macを使っているとスティーブ・ジョブズが付いていると思うんです、今の段階では。単なるモノではなく、その思想まで含めた形で選んで使っていることに意味があるというか。人の心を折ってでもクォリティを追求するところに、非常に共感を持てるというのが大きかもしれませんね。仕事の中でも、このクォリティじゃジョブズはOKしないだろうな、もうちょっと頑張ろう! と思えたりします」

――仁井さんはいかがでしょうか?

仁井 「4年間を振り返ってみると、いわゆる充実した学生生活を送っていた人は、常に情報を取りに行っていた人だったように思います。大学に入るにあたって何か目標があると思いますが、例えば海外へ行くなら留学だけじゃなくボランティアやインターンという方法もあって、そういう情報を集めることで納得できる選択ができます。そのために必要なのがパソコンだったと思います。積極的に情報を取りに行った人と、入ってくるものを得るだけの人では、見えている世界が全然違うだろうと思うんです。いろいろな面で情報を得ることがすごく重要になっているので、そういう形で学生生活を送ってほしいと思います」

――文房具としてだけではなく、行動につなげるためのツールでもあるんですね。お二方とも、本日はありがとうございました!