“Be a driver.”。これが、マツダの広告メッセージだ。その意味は、運転者であれということだろうか。マツダの解説を読めば、人生を自ら切り拓こうという想い、そして、クルマを自分で運転したいとの願いが込められているようだ。一方で、交通事故の抑制や環境・エネルギー改善の高効率化などの視点から、自動運転技術が注目され、国内でも2020年には高速道路など一部での実用化が目指されている。あと3年で迎えるその日に向けて、マツダはどうクルマを進化させていくのか。電動化戦略を聞いた前回に引き続き、今回も研究開発の取締役で専務執行役員の藤原清志氏に問う。

研究開発を担当する藤原専務は自動運転をどう見ているのか

マツダらしい自動運転とは

「自動運転技術は、やっています」と、藤原氏からは答えが返ってきた。「ただし…」と言葉が続く。

「私は、隣の家まで100メートルくらい離れた田んぼの中の家に住んでいます。そういう田舎で生活し、周りに住んでいる人たちを見ると、果たして本当に自動運転のタクシーで出かけるのだろうか、そこまで彼らは機械を信頼しているのだろうかと思うのです。そして、それはあり得ないだろうと考えます」

「結局は、人に助けを求める気がしてならないのです。そこで、高齢者を含め、人が運転するクルマで、出掛けたい人を助けてあげられないかという考えが導き出されるわけです。では、どうすればいいか」

「たとえば、国でも一部で認めようとする動きがある、地域や地区限定の自家用車のタクシー、いわゆる白タクをやればいいのではないかということです。現状のタクシーのような営業の仕方ではなく、自宅から病院へ行きたいという人が居れば、その区間だけ自家用車を出して連れて行ってあげるといった形態です。人と人とが助け合う、昔ながらのコミュニティ(共同社会)を、どう作っていくかではないかと思っています」

「そのために、高齢の運転者でも安心して任せられるクルマを自動車メーカーとして作り、提供してゆけないだろうか。高齢者が運転しても大丈夫な自動運転にしていく。具体的には、普段はいつも通り運転できるのですから、ハンドルは自分で握ります。ただし、体調が悪くなったとか、心臓発作とか、万一の際には安全にクルマを止める自動運転です。そして二次事故を起こさないようにする。完全自動運転ができるようになれば、そこから病院まで搬送できるような自動運転になればいいでしょうが、まずは安全に止めることをしっかりやる。それを実現するために、自動運転技術は必要です。そういう自動運転社会にしたいのです」

“Be a driver.”のメッセージを展開するマツダらしい自動運転技術の活用と、その運用の案だといえる。