新築か中古か……永遠のテーマの一つではないでしょうか。簡単に言えば物件次第、住み手の考え方や状況次第と言ってよいでしょう。では、どんな物件であれば新築の方が、あるいは中古の方がよいのでしょうか。住み手の状況とはどのようなものがあるのでしょうか。

いびつな日本の中古市場

日本の不動産価格は長年新築至上主義で、中古物件は本来その物件が持つ価値よりも極端に価格が低くなってしまいました。高度成長期の作っては壊すフローの時代ではもはやなく、ストックの時代です。良いものを長く使い続けることが求められています。諸外国からも日本の住宅の耐用年数の短さが地球環境保全の観点から問題視されてきた経緯もあります。

アメリカやカナダに住宅市場の視察に行ったことがありますが、日本に木材の輸出をしているカナダの工場では、木材に少しでも節があると嫌う日本の風潮を大いに批判されました。また、アメリカでの建設中の住宅団地では、あまり上等とは言えない材料で、隙間だらけの木材どうしを金具で止めるだけの工事に驚いたものですが、それでもアメリカの木造住宅の耐用年数は日本の3倍もあったのです。日常の維持管理の違いも大いに影響していると思います。日本の職人がヨーロッパで様々なものを修理するテレビ番組で、教室のリフォームを子供たちが手伝っていたのですが、ペンキのローラーの塗り方がじつに手馴れていたので驚きました。子供の時から住まいのメンテナンスを手伝っているのが明らかです。日本では子供どころか、大人も自ら体を動かして住まいのメンテナンスを行うケースは少ないと思います。

長年政府はこの問題に取り組んできて、認定長期優良住宅の制度や物件の性能を向上させるリフォームに対しては様々な優遇措置を講じてきました。以前よりはいくらか改善しているようにも見られますが、まだまだ十分とは言えません。したがって本来の価値よりも価格の低い中古物件にその点に関してはメリットがあります。以前にも「資産としての住まい(2)-資産価値の高い住まいとは?」で紹介したことがありますが、工藤夕貴さんのハリウッドリフォームは日本人や日本の中古住宅市場に欠けているものをよく表しています。

良い物件は価格の低下はない?

日本の中古住宅市場の現状からは中古物件の方にメリットがあるとは言え、問題もないわけではありません。資産価値の高い、市場価値の高い物件は決して目減りせず物価の上昇とともに価格もむしろ高くなるケースもあります。リスクの少ない住まいの入手には資産価値や市場性は極めて重要な要素です。

したがって価格メリットが大きい格安の中古物件は要注意です。その場合は市場性が低く、有利に売ったり貸したりはできないけれど、その物件は自分たちにはメリットがあるという確固たるものがあるかどうかが決め手です。

住み手の考え方や状況とは何?

住み手の年齢でいえば若い20代の夫婦であれば、あまり古い建物は老後に建て替えになる可能性を考えておかなくてはなりません。反対に高齢の夫婦で子供がないケースは、新築を選択する意味はあまりありません。ただし配偶者が死亡し、1人になった場合は売却して高齢者施設に入居する予定で、有利に売却できる新築マンションを選択したいというケースも考えられます。

新築物件と中古物件の諸費用等の違いは?

購入時にかかる諸費用等、新築物件と中古物件とでは大きな違いはありません。金額の大きく違うものや注意が必要なものをいくつか考えてみましょう。

仲介料の有無…中古物件は所有者と直接交渉して購入する場合や売り主が不動産会社で仲介業者を必要としないケースを除いて仲介料が必要です。一般的な仲介料は(6万円+購入価格3%)+消費税で計算できます。かなりの額となるのがわかります。

200万円以下の部分は5%→3%超える部分は4万円
200万円超えて400万円以下の部分4%→3%超える部分は2万円
400万円超える部分3%
※不動産価格は通常400万円を超えますので簡易計算として、(4+2)万円+購入価格×3%+消費税となります。

修繕積立金の額…マンションなどは築10年を過ぎるとそろそろ大規模修繕の時期になります。修繕積立金の一時金があればその扱い(売り主が一括で支払っているので、全額継承したうえでの売値なのか)などのチェックは必須です。購入直後に修繕積立金が不足して各住戸一時金を徴収されないとも限りません。

固定資産税・都市計画税…固定資産税等は築年数や市場価値によって違いますが、3階以上の耐火建築物のマンションは、築5年間は固定資産税が1/2になります。

不動産取得税…下記の計算式の※印の数値は新築の場合は1200万円ですが、中古住宅の場合は築年 数によって異なります。

不動産取得税額=(固定資産税額-※万円)×3%

住宅ローン控除…住宅ローン控除の対象となる建物には築年数等に制限があります。

新築か中古かの第一の選択ポイントは、優良物件であることを除けば、その人の考え方なのです。高価な住まいの購入にあたって、最初に自分の考え方を整理してみましょう。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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