グラビアアイドルとして10年以上活躍し続ける"レジェンド"杉原杏璃(34)。株、競馬、野球など自身の趣味も仕事へとつなげ、厳しい世界を生き抜いてきた。そんな彼女が、自伝的小説を自らの主演で実写化。映画『...and love』(3月18日公開)は、フィクションとノンフィクションが入り混じり、「これって本当なの?」とついつい引き込まれてしまう。

交際相手との濡れ場や同業者からの辛辣な言葉の数々。それらの真偽は観る人のご想像に委ねるとして……。今回の約9000字インタビューは、映画の描写をヒントに、全5回にわたって杉原の過去を掘り下げていく。第1回は小説と映画化の思い。「主演は若い子」を希望しながら、なぜ自ら演じることになったのか? そして、なぜ完全なノンフィクションにしなかったのか。

杉原杏璃 撮影:荒金大介

――小説を書きはじめたのは2014年。『週刊大衆ヴィーナス』(双葉社)でスタートした企画でした。小説を書くことはその年の目標だったみたいですが、前々から考えていたことだったんですか?

いえ、「小説を書きたい」からのスタートではなかったんです。グラビアは写真を撮られることがメインのお仕事。媒体が無くなっていって表紙を飾れる機会も減っていく中で、グラビアを別のフィールドで表現できる方法は何かないかと考えたんです。官能小説は文字でエロスを見せることもできますから、「小説を書いてみたい」とマネージャーさんに伝えました。私とマネージャーさんはA型で、一年間の目標を立てるタイプ(笑)。写真集やDVDを出す時期をいつも話し合って決めているんですが、小説もその1つでした。

男性読者の方が多い雑誌だったので、グラビアアイドルの裏側や恋愛に溺れてしまう姿を私とリンクさせながら読んでいただいた方がリアルに感じていただけるののではないかなと思って、実体験をもとにした物語にしました。イチから考えられるようなプロではないですし、何よりも自分を参考にした方が書きやすかったんです(笑)。

――完全ノンフィクションにするプランはなかったんですか?

男性関係の部分が、私の実生活ではカサついています(笑)。脚色しなければならないところがたくさんあったので、「事実」だけで勝負はできませんでした。

(C)2016「...and LOVE」製作委員会 (C)杉原杏璃/双葉社

――あまり聞いてはいけないことでしたか(笑)。

いえいえ、全然いいです(笑)。

――てっきり、ファンの方々の気持ちを考えて「グレー」にしたのかと。

もちろん、グラビアアイドルのイメージを自分の中で形作っている方もいらっしゃるので、そこを崩したくないという思いもありました。そこに自分のカサついている部分がうまくリンクして、「グレー」な物語になりました(笑)。

――なるほど、よく分かりました(笑)。映像化の計画もマネージャーさんとの話し合いの中で出てきていたんですか?

漠然と「そうなったらいいね~」というくらいで。いろんなところでアピールしていると、いつか協力してくださる方が出てくるんじゃないかなという「あわよくば精神」で言っていたところもありました(笑)。

――イベントで「映画化するなら主演は名のない娘に」とおっしゃっていたのは、そういう狙いもあったんですね。

そうですね。ただ、いま悩んでいる真っ最中の「これからの人」にやってほしいという思いが本当にあって、映画化が決まった後の話し合いでも「若い人に」とお願いはしていました。でも、自分が世に生み出した自伝的な物語だったら、私が主演をやることが一番説得力があって一番納得がいくんじゃないかなと。もちろん不安もあったんですけど、「人に投げちゃいけない」といろいろな方からご意見をいただきました。

――それまで演技の経験もあったわけですが、主演となると出番も多くなります。

ストレスで5キロぐらい痩せちゃいました(笑)。「座長」は周りのことも見ながら引っ張らないといけないと撮影前に言われていて。主役だからといって殻にこもって集中しするだけじゃなくて、いろんな人とのコミュニケーションが大切だと。私にとっては、それがとてもプレッシャーでした。自分のことだけでもできるかどうか分からないのに(笑)。

――覚悟の上で現場に入ると、多少変わる部分もあったんですか。

そうですね。吹っ切れたというか、ダメだった頃の自分を思い出しながら演じていくと、今の状況はむしろありがたいことだと思えるようになって、撮影を重ねるごとに「絶対に乗り越えられる」と。古坂大魔王さんをはじめすごい方々が出てくださって、私の方が引っ張っていただきました。

――自分をモデルにしたキャラクターを自ら演じるというのは不思議な感じですよね。

当時を思い出してやればいいと思っていたので、あまり難しく考えないようにしました。ただ、年をとったせいか涙腺が弱くて弱くて、悔しくて歯がゆい思いをした24~5歳を演じている時もそんなシーンじゃないのにウルッとしちゃって。感情を抑えるのが大変でした。当時は落ち込んでいたのに、今思い返すとそんな自分を思い出して泣けてくる……現実と物語の感情がぐちゃぐちゃになるのは大変でした。


第2回は「グラビアアイドルと年齢」(3月22日掲載)。窮地の中で、なぜブログを更新し続けたのか。

■プロフィール
杉原杏璃(すぎはら・あんり)
1982年6月12日生まれ。広島県出身。身長157センチ。A型。高校生の時に広島でスカウトされ、その後、東京・銀座で複数の事務所が集まるオーディションに参加。スターダストプロモーションなどを経て、現在はフィットワンに所属する。2001年から芸能活動をスタートさせ、2003年にファースト写真集『Vanilla』をリリース。グラビアアイドルとして本格的に活動するのは2006年頃で遅咲きのデビューを飾る一方、2005年頃には株式投資をスタート。現在では多数の連載を抱えるなど、グラビアの枠を超えてマルチに活動している。