「よしよし、寝てくれた! 」……と思って赤ちゃんを布団に降ろすと泣いてしまう、そんな"背中スイッチ"を体験したことがあるパパ・ママは多いだろう。"子育てあるある"の中でも代表格のこの悩みに、対処法はあるのだろうか。助産師や保育士、臨床心理士などの専門職により構成された母子支援チーム「Newborn Family サポート協会」のメンバーに話をうかがった。

"背中スイッチ"でなかなか寝てくれない……そんな時はどうしたらいい?

ズバリ、正解はない!

「この方法ならどの赤ちゃんもぐっすり! 」。そんな夢のような対処法は、明確に定義できるものではないとのこと。インターネット等で「みんな寝る」と豪語している方法を試してみても、結局はいつも通りに布団から赤ちゃんを抱き上げ、背中をポンポンとやりつつ部屋の中を歩き回るという、いわゆる基本形に戻っているのではないだろうか。寝るための対処法について、保育士で一児の母でもある白川さなえさんは、「子供はそれぞれによって全く違い、正解というものはありません」と言う。

そうは言っても、ちまたにはいくつか試せる方法がある。最近では、赤ちゃんがよく眠れるためのグッズも販売されている。しかし、それも効く子と効かない子がいるという。そのうち赤ちゃんがグッズに飽きてきて、効果がなくなることもあるそうだ。

また、「昼間たくさん遊ばせると、夜眠ってくれる」という方法を聞いたことがある人も多いだろう。協会の代表で助産師の城所眞紀子さんによると、「刺激の強い場所、例えば人の多い混雑した場所とか、音の騒がしい場所などに長時間いたりすると、興奮して寝付けなかったり、夜中に起きて泣いたりすることもあります」と言う。赤ちゃんの睡眠は、なかなか一筋縄ではいかない。

方法よりもまずは自分を落ち着けて

しかしふと、赤ちゃんが眠ってくれる瞬間がある。車で散歩に出てみたらあら不思議! 散々ぐずっていたのにストンと寝てしまうこともあるだろう。「その理由のひとつには、お母さん自身の気持ちが落ち着くから赤ちゃんも落ち着く、ということがあります」と城所さんは言う。

赤ちゃんは、パパ・ママの「何で寝てくれないの!? 」というオーラを感じて眠れない場合があるのだそうだ。白川さんは、「どうしたら寝かせられるかよりも、その悩みを共有できる場が大事。パートナーや子育て仲間などと話をして、ご自分のストレスを軽減させてください」と語る。まずは、自分のリラックスが大切だ。

また、子供を寝付かせるために、昼間から部屋をまっ暗にしたり、少しの音も立てないようにしたりと、過剰に気にしてしまう人もいるだろうが、城所さんは「夜であればしっかり寝るための環境を整えてほしいですが、日中はそこまで神経質にならなくても大丈夫ですよ」とアドバイスしているという。

スリング(抱っこひも)やおんぶひもの中で寝かしつけた場合は、布団に赤ちゃんを降ろす時も、それらを外さずにそのまま寝かせてしまう手もある。ただし、装具とともに寝かせる場合は、その状態で寝てしまっても安全かどうか、今一度確認するようにしよう。いずれにしても、悩みをひとりで抱え込んだり、正しい方法にとらわれる必要はないと言えそうだ。

側にいるパパ・ママたちの不安が子供に伝わることも。悩みを溜め込まないことも子供にとって大切なこと

子供の生活リズムを整えることも大事

乳児は頻繁に寝起きするものだが、1~3歳の幼児になると「夜寝ないのは、保育園で昼寝をさせすぎているからでは? 」と思う人もいるかもしれない。しかし通常は、たとえ保育園で1~2時間の昼寝をしたとしても、子供は夜も眠れるとのこと。

それよりも、「寝ないというよりは、子供の生活リズムが親と同じになってしまい、必然的に就寝時間が遅くなっていることも考えられます」と城所さんは言う。保育士であり神奈川県の無認可保育室を運営している藤實智子さんは、「朝起きる時間が遅くなっている子供は、夜寝ない習慣がついています。改善のためには6時なら6時に起きるなど、朝きちんと起きることで生活リズムを整えてみてください」と語る。

人間の体内時計は、1~3歳の頃からできているのだと言う。白川さんは、ご自身の子供の生活リズムを整えるため、幼稚園児になった今も7時半に寝かせて早寝早起きを習慣付けているとのこと。「それでも、やっぱりパパのいる週末など、たまには遅くまで起きていることもあります。でも、『そんな日もあるよね』と思っています」と話す。

子育てには正解がないからこそ神経質になりすぎず、それでもある程度の節度を持って当たるのがいいのかもしれない。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

プロフィール: Newborn Family サポート協会

専門職(助産師・看護師・臨床心理士・栄養士・歯科衛生士・整体師・保育士・ドゥーラ等)により構成された母子支援チーム。「Fami Liko」を通じて、会員制サポートのprimary care部門・有償ボランティア団体を併設したwelfare部門の二本柱で家族の状況に合わせた、より個別的なニーズに応ずる柔軟な体制を基盤にサポートを提供している。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスにつづったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。