西武鉄道の車両4000系をリメークし、昨年4月にデビューした「西武 旅するレストラン 52席の至福」。車内ではおいしいコース料理が食べられることが話題となり、予約客が殺到しているという。このほどプレス向けツアーが企画され、「52席の至福」に乗車することができたのでレポートしたい。

「西武 旅するレストラン 52席の至福」のプレスツアーが実施された

今回のツアーでは、高田馬場駅から「52席の至福」に乗車。早速、車内にてコース料理が登場する。まずは「ヴィテッロ トンナート~深谷牛のローストビーフ ツナソース」。ローストビーフにツナソースをからめ、肉のやわらかさを味わう。

続いて提供されたパンもあたたかく、おいしい。「トリュフの薫りをまとった 玉ねぎのオーブン焼き」も、クリームとトリュフが絶妙にマッチしている。「サツマイモラヴィオリ セージバターソース」は、ラヴィオリの中にりんごとさつまいもが入っており、ソースと絡めるとおいしい。

ようこそ「52席の至福」へ

食事の準備が期待感を高める

食事の準備をするスタッフ

パンもあたたかく、おいしい

メインは「骨付き豚肉のトロトロ煮込み レンズ豆添え」だ。豚肉のやわらかさが印象に残る逸品である。そしてデザート。車内でこうした食事体験をできることが評判のためか、「52席の至福」の人気は高い。

料理がおいしいだけではない。車内設備もくつろげるように工夫されている。建築家の隈研吾氏がデザインした内装は、木をふんだんに使用しており、ゆったりとした印象を与える。車内の雰囲気の良さも、多くの人々から人気を集める理由となっているのだろう。「52席の至福」の名の通り、食事だけでなく素晴らしい空間体験を味わえることが、この列車の特徴といえる。

厨房は大忙し

飯能駅で歓迎する西武鉄道社員

では、この列車のポイントである「美食」を支える厨房はどうなっているのか。

「52席の至福」は4両編成で運行される。利用者が食事する車両は2・4号車の2両。これに対し、厨房はまるまる1両を使用している。オープンキッチンで、ガラス越しに厨房のIHクッキングヒーターが見えるようになっている。ある程度料理を作ってから車内に持ち込み、車内で温めるようにして提供している。

今回のツアーでは、コースの最後に「よこぜのおいしい紅茶」をいただいた。西武秩父線沿線の横瀬で収穫された茶葉を使用した紅茶は、おいしい。

秩父・川越など、沿線観光地の認知度を高めるために

食事をひととおり終えた後で、西武鉄道運輸部の川崎範雄氏が「現在の西武鉄道は定期券利用者の乗客が5割、それ以外が5割で、定期外乗車客を増やしたい」と話した。そしてこの列車の真の目的として、「新しい旅行スタイル」を作ることと、沿線の観光地である「秩父」「川越」の活性化を掲げた。

ツアーで提供されたコース料理

「52席の至福」全体像

「52席の至福」のスタッフの皆さん

「52席の至福」を歓迎する西武秩父駅

新宿線を走行してきた列車は所沢駅で進行方向を変え、さらに飯能駅でも進行方向を変えて西武秩父駅へと進む。途中の芦ヶ久保駅で休憩し、車両全体を見て回る。西武線沿線をイメージした車両デザインが印象的である。

「52席の至福」に使用される車両は、池袋線・西武秩父線などで運行される4000系を改造したものだ。給排水設備などが整っていることや、支線区でも運用しやすい4両編成であることが選ばれた理由だという。1号車は多目的スペースとなっており、この空間はブライダルトレインなどでのイベントスペースに使用するそうだ。

列車は西武秩父駅に到着。駅はリニューアルされ、日帰り温泉「西武秩父駅前温泉 祭の湯」が4月24日にオープンする予定となっている。ツアー参加者はその後、スタッフの見送りを受けて西武秩父駅を離れ、いちご狩りや夕食などを楽しんだ。

西武秩父駅で下車した後、小松沢農園へ移動し、いちご狩りを行った

「西武 旅するレストラン 52席の至福」は西武秩父駅へ向かうブランチコース、西武秩父駅からのディナーコースを運行する。西武鉄道が一押しする観光地、秩父。秩父に力を入れるとともに、そこへ向かう鉄道にも力を入れている。3月25日から土休日に「S-TRAIN」も運行開始予定。西武秩父駅もリニューアル工事が進み、多くの人々を待っている。