宮本武蔵と佐々木小次郎がなぜ決闘するに至ったかを知らない人でも、「武蔵がわざと決闘に遅れた」という伝説は耳にしたことがあるに違いない。決闘の地とされているのは巌流島。闘いから約400年の時を経た今、この島が浮かぶ山口県下関市では、武蔵を待ちわびる小次郎の気持ちを代弁するかのような和菓子にお目にかかることができる。

「おそいぞ武蔵」(1個税込151円)はぜひ、巌流島の決闘に思いをはせながらいただきたい

「おそいぞ」に込められたふたつの気持ち

その名も「おそいぞ武蔵」(1個税込151円)。砂糖、鶏卵、小麦粉というベーシックな材料に、マーガリン、メープルシロップを配合してソフトに焼き上げた生地に、北海道産の厳選無添加小豆を100%使用して作った黒あんをはさんだどら焼きで、焼印に武蔵考案の「武蔵鍔(むさしつば)」を採用しているのも大きなポイントだ。

製造が開始されたのは、2003年に大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』が放映された前年の2002年のこと。商品名には、ふたつの意味を込めたという。どういう意味かというと、ひとつはずばりストレートに小次郎の気持ち。

そしてもうひとつは、黒あんのどら焼き誕生が遅くなったことに対して「お待たせしました」の意味を込めているのだとか。というのも、商品を販売している巌流本舗では、先々代が開発した「巌流焼」(1個税込162円)が長年人気を博しているのだ。

「はなまるベストおめざ」にも選ばれた「巌流焼」(1個税込162円)

なぜ「巌流焼」は白あんなのか

TBS系列の生活情報番組『はなまるマーケット』で「はなまるベストおめざ」に選ばれたこともあるこの「巌流焼」は、「おそいぞ武蔵」とは異なり、白あんの粒餡で作られているのが大きな特徴。小豆餡を主流とするどら焼きにオリジナリティを加えようと、インゲン豆の白あんで試作したところ、「うん、イケる! 」と商品化が決定したのだという。

「おそいぞ武蔵」と「巌流焼」のセットも人気

さらに、小次郎の内に秘めたやさしさを表現した「花冠(かかん)の小次郎」、壇ノ浦の合戦に現れた義経が8艘の船を飛び越えたという「義経伝説」にちなんで作られた「義経八艘飛」、縁起のいい下関名物にあやかった「招きふく」など、地元と関連付いたネーミングの和菓子をバラエティ豊かにそろえている同店にその理由を尋ねると、「お菓子にはそれぞれの地域の文化という側面もあると思っているんです」と即答。

しっとりと焼かれた上品な生地に粒餡と栗が詰まった「花冠の小次郎」(5個入り税込637円)

優しい口どけのお饅頭「義経八艘飛」(1個税込91円)

そうした想いから、下関にこだわったお菓子作りに専念しているだけでなく、地元小学生の社会見学も積極的に受け入れているのだそう。

工場見学ではお菓子の製造工程を垣間見れる

子どもたちも興味津々

もちろん、工場見学は一般の希望者も随時受け付けているとのことなので、下関を訪れた際には、おいしいお菓子をセットで楽しんでみてはいかが?